「#name4#、ペン持ってない?」
「持ってます、どうぞ」
「ありがと!うっかり忘れちゃって…じゃあ行ってくるね!」
カバンの中からペンを取り出し、先輩マネさんに手渡す。今日、記録員なんだからしっかりして下さいと注意したくなった。言わないけど。
その時、カバンの中で携帯が光っているのが見えた。着信27件…って何事。
スタンド着いたらお手洗い行くついでに確認してみよう。そう思い携帯をポケットに滑り込ませた。
試合前、高島先生に許可を取って席を離れる。化粧室前の壁に寄りかかって携帯を開いた。
着信履歴にズラッと並ぶのはなんと鳴。着信履歴を遡っていたらまた電話が鳴り始めた。慌てて通話ボタンを押すと第一声がうるさ過ぎて耳から携帯を遠ざける。
「やっと出た!!!眞白!一体どーゆーこと?!?!」
「うるさ…どうしたの鳴」
「はぁあっ?!?!騙しといてうるさいって何?!眞白の嘘つき!」
どういうわけかかなりヒートアップしている様子。電話の向こうから鳴以外の声も複数聞こえる。
「ちょっと落ち着いて」
「落ち着けるわけないじゃん!あー!騙された!眞白がそーゆー奴だとは思ってなかったよ!」
「はい?」
「青道には行かないんじゃなかったの?!?!一也から聞いたよ?!」
いや、行かないなんて一言も言ってないんですが…どうやら彼は今まで私が稲実にいるもんだと思っていたらしい。どこでそういう勘違いが生まれたのか、過去を遡ってみると心当たりが出てきた。
「あれはそういう意味じゃなくて」
「じゃーどういう意味?!言い訳なんて聞きたくないね!眞白のバーカ!貧乳!」
ピシリと固まる。この子にデリカシーというものをちゃんと教育しとくべきだった。私は別に良いけど他の女の子に言ってたら申し訳なさすぎる。はあ、とため息を吐いた。
「あのねえ」
「もうこれ以上眞白と話したところで時間の無駄だね!もう知らない!あったま来た!ぜっこーだよ!ぜっこー!眞白なんか大っ嫌い!!!」
ツーツーと通話が終了した音が鼓膜を揺さぶる。
大っ嫌い、か。可愛がってる従兄弟に言われるとかなりダメージが大きい。携帯を閉じて一人項垂れた。
「……眞白、何かあった?」
「ん?」
試合始まる直前、メガホンを手に貴子が覗き込んできた。キョトンとする顔が可愛くて頭をかき回す。
「別にー、貴子が可愛いなぁってしみじみしてた所」
「ちょっとやめてよー」
それ以降、鳴からの連絡が途絶えたため毎日のように鳴っていた携帯がピタリと止んだ。
良い機会だからあえて気にしない方向で行く。彼もそろそろ高校生になるのだから親離れすべきだ。少し寂しいのは仕方ない。