身内の恥ずかしさ

秋大が近づいてくるにつれ、夏大前のように沢山の差し入れが野球部に届けられた。それを運ぶため、マネージャー全員で大きなダンボールを抱えて学校から食堂まで何度も往復する。
送って頂けるのは嬉しいけれど、この重労働を考えると素直に喜べない。二年の先輩マネさんが腰痛めてしまったし。

ただ夏大前に比べると量も少なく、気温も低い。幾分かマシだ。

学校から再びダンボールを抱えようとした時、先輩マネさん二人が歓声を上げた。

「わあ!今年も来てる!」
「本当だ!良かったですね先輩!」

喜ぶ二人の前には大きなダンボールが一つ置いてあった。何だか見たことある模様のダンボールに思わず固まる。あれ、これって。

「何が来てたんですか?」
「毎年この時期に田之倉選手から差し入れが来るのよ!」

そうだった、これお父さんに言われて青道高校に私が発送したやつだ。思い出した瞬間、表情を変えなかった私を褒めて欲しい。内心は羞恥で転げ回ってるけど。

「田之倉選手ってプロ野球の?!」
「そう!彼は青道高校野球部のOBだからね!」
「へえ!知らなかったです…眞白知ってた?」
「私も知らなかったです」

へらっと笑って新たにダンボールを抱えた。
いや、知ってますとも。お父さんに差し入れ何が良いか聞かれましたとも。…あれ、私その時なんて答えたっけ。キャッチボールしながら言われたもんだからよく覚えていない。

「私のお母さんが田之倉選手の大ファンで!私も野球選手だと一番好きなのよ!」
「分かります!カッコいいですよね!」
「強気な感じも良い!」
「それなのにコントロール抜群なんだもん!そこ決めるか!ってなる!」

ダンボールを運びながらも田之倉選手談議は続いた。私は相槌を打ちながらなんとか耐える。これなんて拷問?

「今年は何でしょうねえ」
「去年は何だったんですか?」
「去年は大量の果物ゼリー!毎年甘い物を送ってくれるのよ」

うん、確かそうだった。去年は聞かれた時、サッパリした物が食べたくて適当に答えたら本当に送っててビックリしたのを覚えてる。

「何だかんだ皆んな甘い物好きですもんね」
「そうそう、あっという間よ、なくなんの」
「先輩は去年、部員の手に渡る前に自分の分確保してましたよね」
「それは言わなくて良いの!」

すみません、と心の中で謝った。なんだか申し訳なく感じてしまう。
あの人、家では寝っ転がってソーダバー食べてるような人ですよ。

「中身、これだけ開けてみません?!」
「いいねえ!開けちゃえ!」

先輩がガムテープにハサミを入れた瞬間、思い出した。あの時食べたかったのは確か。

「すご…大量の水羊羹!」
「これ何個あるのかしら…」

来年からは安易に答えるのはやめようと心に誓った。