新メニュー発表当日。練習がいつもより一時間早く切り上げられた。
何事かと部員達がざわつく中、監督から視線を送られる。部長や高島先生も頷いているのが見えた。隣にいる貴子からもガッツポーズでエールを送られ、いざ出陣。そんな気分だ。
「朝の練習メニューについて田之倉から話がある。田之倉頼む」
一気に視線が集まる。少したじろいでしまったのは見逃して欲しい。
一歩前に出て息を吸った。
「春から皆さん全員のデータ取り、私なりにまとめてみました。これを踏まえて個人の苦手な部分を洗い出し、克服できるようなメニューを考えさせていただきました」
バインダーに挟んでいた紙束を取り出す。これはデータとメニューが書かれた二枚セットになっており、それぞれ全員分用意したもの。
「今から名前を呼ばれた人から順に受け取ってください。全員分あるので呼ばれなかった人は教えてください」
先輩から順に渡していく。怖くて一人ひとりの顔が見れない。
全員の手に行き渡った。とりあえず一安心。
ただ皆さんの圧が凄い。やっぱ嫌だよね。いや、分かってた。分かってたけど想像してるより遥かに辛い。
知らず知らずの内に視線が下がる。人生二度目のくせに情けない。
「私が考えただなんて納得いかない方も沢山いらっしゃると思います。ただ私は一つでも多く勝てるために皆さんの事だけを考えて作りました。どうぞよろしくお願いします」
お辞儀をして監督に目配せをする。監督が口を開くと同時に私は一歩下がった。
「不満がある者は以前のメニューを行なっても構わん。本人の意思に任せる。これは田之倉たっての希望だが…お前達はどうする」
監督の声が響き渡り、静かになった。恐る恐る周りを見渡す。すると思っていた反応と違って目を見開いた。
私の予想だと「なんでテメェが」みたいな表情をされ、ヤジが飛び交う。そのぐらいの覚悟はしていた。それなのに。
「やりますよ!」
「やります!」
「マネージャーにここまでされてやらねぇヤツいねぇよ!」
「#name4#!テメェ!ちゃんと寝てんのか?!」
ああもう。何で君たちはそんなに優しいの。
思わず涙が出そうになる。
「全員参加、相違ないな?」
「「はいっ!!!」」
一気に緊張が解けて全身強張っていたのを実感した。
隣に立っていた貴子と目が合い、微笑み合う。
その後、解散となった途端、一年生に囲まれた。何故。伊佐敷君にはメンチ切られるし。
「テメェ…」
「伊佐敷君何かな」
「何かなじゃねぇよ!テメェ一人でカッコつけやがって!」
「いや私の仕事だし…」
「最近企んでると思ったらコレだったんだね、藤原も知ってたなら教えてくれればいいのに」
「ご、ごめんね…」
「そこ!貴子をいじめない!」
「…テツ君は何でそんな不機嫌なの」
「…特製メニューは俺専用だと思っていた」
「………なんかごめん」
そうね、テツ君には中学の頃から同じような事してあげてたもんね。しょげている様だったので頭を撫でて上げた。
「#name4#!最高だよ!お前!」
「いつこんなのやってたんだよ!」
「俺の弱点多くね?!」
色んな声をかけてもらえ、顔がほころぶ。皆、新しいおもちゃを手にした子供みたい。キラキラしていて眩しい。やって良かったと心底思った。