今だけは昔のままで

「伸一郎、しばらく見ない間に背伸びたね!えらい!よく食べて寝た証拠!」
「おい!俺はもう小学生じゃねーぞ!頭撫でんな!」

公園のグラウンドでリトル時代の後輩、伸一郎と会う約束を取り付けた。久しぶりの伸一郎を堪能しようと思ったのに反抗期なのかかなり抵抗される。力も強くなったみたいだ。全く敵いそうにない。
大きくなって…感動…ただチワワっぽい所は変わってない。

「チョコいる?」
「いらねぇよ!」
「じゃあ飴?」
「いらねぇっつの!」
「あ、もしかして甘いの苦手?」
「そーいう問題じゃねえ!!」
「梅のお菓子いる?」
「いらねぇ!しつけーぞ!」

この噛み付いてくる感じも変わらず。威勢が良くて負けん気が強いのは彼の長所だ。
お菓子をバックに入れて代わりにミットとボールを取り出す。

「じゃあキャッチボールしよっか」

すると伸一郎もキャッチャーミットを取り出した。ニヤリと笑う彼に頼もしさを感じる。

「キャッチボールだけでいいんスか?!アンタ投げたいんだろ!」
「バレた?」
「眞白さんオーラだだ漏れなんだよ!」
「なに?オーラって」
「無自覚かよ!!」

そんなに投げたそうにしてただろうか。そりゃあ昔の後輩がどれだけ成長したか見てみたかったのは嘘じゃない。

「じゃあ投げよっかなー、伸一郎きっと溢しまくると思うけど?」
「出た…二重人格…」
「だって私の変化球受けた事ないでしょ?」
「気合いで止めるっつーの!」
「へえ!やれるもんならやってみな!」
「見下ろしてねぇで投げろよ!」

持ち球全部、伸一郎に投げ込んだ。キャッチングはリトルの頃とは比べものにならない程上手くなっていた。構えも様になってる。毎回のコースは雅功の様には行かないけれどそれなりの位置に構えてくれていた。

これならレスラー並に体格が良い選手ばかりのあの成孔学園でもやっていけるだろう。
きっと入学したらなんて事なく私の球を全部完璧にキャッチングして見せるに違いない。それまでは。

「溢しまくってんじゃん!」
「眞白さんのカーブ、変なとこ落ちるんスもん!もう一球!」
「あれー?スクリューも溢してたよね?まともに取れたのストレートだけってどうなの?成孔行くんでしょ?心配だなあ!」
「うるせぇ!とっとと投げやがれ!」
「球を追うからダメなの!分かる?動かすな!私コントロール良いんだから!」
「そんなん知ってるっつーの!当たり前な事言うんじゃねぇ!」
「はい!ミット流れてるよー!」
「分かってる!」

その後、伸一郎に粘られ日が暮れるまでキャッチボールに付き合わされた。正直ちょっと疲れた。