悪癖だらけ

年明け、練習が再開された。鈍っているのかと思いきや皆キビキビ動いている。どうせオフの間も自主練は欠かしてなかったんだろう。野球バカばっかでどうしようもない。それが愛おしくて仕方ないけど。

貴子と先輩マネさんと一緒に昼食を食べる。至福の時。三年生の先輩マネさんも誘いたかったがさすがに受験前であるため遠慮した。

「先輩は休みの間、何してました?」
「109の福袋並んだよ〜もう人混み大変!」
「あれ並んだんですか?!ニュースになってましたよね?!」
「そうそう!貴子は何してたの?」
「私は両親の実家にそれぞれ帰省してました」
「お年玉沢山もらえた?」
「あは…多少は」
「羨まし〜〜!どうせ親戚の家でもテレビ見てたんでしょ!」
「お正月特番多くて選ぶのに苦労しましたよ!」

「だよねー!」と先輩が同意を示すとそのままテレビの話で盛り上がり始めてしまった。私はテレビをつけてなかったので全く付いていけない。
コンビニで買ったサラダを頬張る。

「そういや#name4#は?何してたの?あんたが一番謎なんだけど」
「へ?」

突然先輩が私に標的を変えた。貴子もつり目を瞬かせこちらを見る。二人してそんな顔しないでほしい。

「確かに…眞白って野球以外に興味ないしオフの時何してるのか想像できない…」
「テレビも見ないって言ってたし…逆に正月する事なくない?」

咀嚼したサラダを飲み込む。
年末は雅功と、年明けは伸一郎と。それに加えてテツ君やマサ君のスイングを見たり年末年始は野球しかしてない。

「えー?ずっと寝てましたよ」
「ずっと?!どんだけ寝んのよ!」

こうやって意味もなく嘘をつくのは悪い癖だ。


「ねえ」

五時間目が終わった後、小湊君が振り返った。この子突然振り返るから心臓に悪い。それに爆弾をブッ込んでくるため油断できない。

「この手、どうしたの?」

グイッと右手首を捕まえられた。少し強い力で逃げ出せそうにない。

彼が言う“この手”というのはバットの振り過ぎで豆が潰れた両手の事だろう。オーバーワークだとお父さんに止められたのが記憶に新しい。

「選手よりバット振るとか、生意気」

笑顔が怖いです、小湊君。いつもながら本当に目敏い。嘘をつくことも言い訳すらもさせて貰えない雰囲気に愛想笑いを浮かべた。

「いや、同じように豆潰してる小湊君に言われたくないんだけど」
「…まあ…そりゃあ」
「久しぶりに弟君に会って触発された?」
「……弟君じゃなくて春市ね」
「いたいいたい、初耳なんだけど」

そろそろほっぺた伸び切ると思う。