楽しい雪かき

二月頭、真っ白なグラウンドに足を踏み入れる。さっむい、寒すぎる。身震いしてネックウォーマーに顔を埋める。

時刻は午前五時。朝のメニュー放り出してこっちに来た甲斐があった。

「野球がしたいなぁ」

白い息と共に漏れ出た言葉は静かな雪に溶ける。ポケットに突っ込んでいる左手で拳を握りしめた。

さて、とりあえず用具倉庫の雪かきをさせていただきましょうか。


「あんた何時に来てんのよ!」
「眞白やっぱり早いね」

五時半頃、マネージャーが勢揃い。さあ頑張りますか!とスコップを掲げ、三人で雪かきを始めた。

「うわ重っ…明日絶対筋肉痛…」
「が、頑張りましょう!先輩!」
「貴子危ない!」
「きゃあっ!」

貴子に手を伸ばすが、あえなく目の前ですっ転んでしまった。痛そう。

「いたたた…」
「ちょっと貴子?!大丈夫ー?」
「先輩!そこ!」
「って!きゃああっ!!!」

先輩も同じところですっ転んでるし。二人とも怪我をせずに上手く転べたらしい。一応安心。

「大丈夫ですか…?」
「気づいてんならもっと早く言いなさいよ!」
「いやいや言いましたって」
「生意気!」

二人ともスカート捲れてたのは言わない方が良さそうだ。まあコンパン履いてたから見えなかったけど。

「貴子後ろ!」
「へ?」

足元ばかり見ていた貴子の後ろに手を差し込む。今度こそ助けられたと思ったら私まで滑りそうになった。

「あっ…ぶな」

シャベルを突き刺してなんとか耐える。貴子軽いなあ。

「立てる?」
「あっうん!ありがとう眞白」
「王子か!私の時も助けなさいよ!」
「いや今のはほぼマグレですから。無茶言わないでください」
「このこの!」
「ほら雪かきしましょうよ」

先輩の突きを交わし、突き刺したスコップを取り出す。先輩は納得していないようだけど再び雪かきを再開してくれた。

多少会話を交えながら作業し続ける。気がつけば六時手前まで長い針が回っていた。

「うっわ!真っ白!」
「雪合戦やろうぜ!」

部員達が起きて来たせいで一気に騒がしくなる。
その後監督の指示が出され、全員で雪かきを行った。

「丹波君!危ない!」
「あ…ありがとう…」
「立てる?怪我ない?」
「平気…」
「まーた王子してる!」

丹波君と手押し車の間に体を滑り込ませる。何とか彼はぶつからずに済んだ。一安心していたら横から先輩マネさんが食ってかかってきた。

「さっきから何なのよそれ!」
「何がですか」
「無自覚なのが腹立つわ!」
「はあ…」
「まあまあ…」

選手やマネージャーを身を呈して守って何が悪いのだろう。首を傾げるしかない。

「テツ君!足元!」
「む?」
「ほらまた!何でそこで体を張るのよ!」