部員にチョコを配る頃には私の噂は知れ渡っていた。口々に皆んなが褒めてくれる。
「あの啖呵は凄かった」
「まあ清々したけど」
「カッコよかったぞ」
ポンポンと肩を叩かれた。恥ずかし過ぎる。
ただあの一件の直後、女の子たちから援護射撃を貰い、私の周りに集っていた彼らはスゴスゴと自分の席に戻ってくれた。そして見事女の子たちと仲良くなれたのだ。これはこれで美味しい展開。嫌われていなかったのが分かって本当に良かった。
「#name4#お前、チョコをねだる輩に啖呵切って胸倉掴んだって本当か?」
「元ヤンって噂も聞いたぞ」
…二年や三年の先輩まで行くと噂に尾ひれがついてよく分からない事になっている。チョコを渡すついでに一人一人誤解を解いた。野球部に誤解がなければそれでいい。まあ彼らに言っておけば直ぐ学校全体に広がるだろうけど。
そんな彼らはチョコを渡すだけだというのに異様な盛り上がりを見せてくれた。これだけ喜んでくれると作りがいがある。二年の先輩方は去年が辛かった反動からか感動して涙を堪える先輩もいた。
監督や部長、高島先生にもあげると大変喜ばれた。少し緊張したけどあげて良かったと貴子と二人で喜んだ。
そして問題の白石先輩の一件は無事渡せたらしい。それにしてもいつの間に渡したのか。他の先輩達は何も言っていないみたいだしこっそり渡せたようで良かった良かった。バレたら何かとうるさい野球部だし。
「そうだ、小湊君はちょっと来て」
騒がしかった食堂が一気に静かになる。いや何故。
食堂の端に寄って来てもらうものの、皆んなの視線は集めたまま。
「何ですか皆さん。ちゃんと私と貴子が作ったヤツ、味わってますか?」
「味わってるぞ!」
「美味しいぞ!」
「じゃなくて!その紙袋!」
伊佐敷君が指さしたのは私が持っている紙袋。全員が静かに固唾を飲んでいる。私が小湊君へ特別に用意したものだと思われているのだろうか。てか貴子もそんな顔しないでよ。
「これは私のクラスの女の子から小湊君に渡してほしいと言われたモノだよ」
そう言うと途端に食堂内がどよめいた。それを横目に小湊君に小ぶりの紙袋を渡す。「ありがとう」と笑顔で受け取ってくれるこういう所がモテるんだろう。
貴子を近くに呼んで目配せをする。
「渡すチョコは以上です!」
「明日からも練習頑張ってくださいね!」
「「おおおお!!」」
ノリの良い部員達で良かった。思った以上に鼓舞されてくれたみたいで上出来。やっぱり美人に鼓舞されると違うよね。
貴子と再び目を合わせて笑い合う。間近で見るとなお美人。