3月頭、帰りのホームルームで担任から不審者に注意するよう呼びかけがあった。春になると虫と共に不審者が湧きやすいのは本当だったらしい。
「#name4#って不審者とかに狙われそうだよね」
「そうか?コイツなら返り討ちにしそうだろ」
「あぁ、バレンタインの時のあれか」
部活に向かうため、クラスの野球部の面々と並んで歩く。
ウチのクラスは一番野球部が多い。小湊君、増子君、坂井君、門田君、斎藤君、そして私。
来年も野球部が多いクラスに当たれば良いな。
「返り討ちにはしないよ。露出狂は無視、痴漢は写メ撮って警察に駆け込むのが最善策」
「露出狂…」
「痴漢…」
「本当にいるんだなそういう輩」
「#name4#無駄に詳しいね」
「そりゃあ小さい頃からよくあるし、慣れてますから」
スタスタ歩いているといつの間にか皆んなを置いて行ってしまっていた。なに道端で男同士顔見合わせてんだか。
「何してんの。早く行こうよ」
「おう…」
「何で私の周りを囲むの」
「いや、別に…」
「君たち背が高くて周りが良く見えないんだけど」
「………」
何故そんなにギクシャクしてるんだ。聞いても「何でもない」とシラを切られてしまいどうしようもない。
同級生がそういう被害に遭っていると知ったら少し気まずくなってしまうものなのだろうか。男子高校生はよくわからん。
彼らは練習中も私への対応がおかしくて先輩に不審がられていた。私も結局原因が分からず仕舞いでモヤモヤ。
「#name4#」
皆んなの自主練が終わったため、それの片付けをしていると呼び止められた。振り返ると同じクラスの面々が並んでいる。やっぱりこうして見ると小湊君は小さくて可愛い。本人に言ったらまた頬を捻られるだろうから言わないけど。
「どうしたの、皆んな怖い顔して」
「#name4#って朝何時に来てんだ」
「いつも俺らが起きて来るより先に来てるよな」
「人通り少ない時間帯なんじゃない?」
小湊君が珍しく真顔で面食らう。増子君もお腹鳴らしてないし。どうしたのだろう。
「……もしかしてホームルームのヤツで心配してくれてるの?」
図星らしく全員照れ臭そうに押し黙った。あはは、可愛いなあ。帰りはテツ君がいるから心配ないけど朝を心配してくれるとは本当に心優しい子達だ。
「だいじょーぶだいじょーぶ!」
「大丈夫なわけあるかよ」
「慣れてるって言ったじゃない」
「それが逆に心配なんだよね」
「ふふ、ありがとね」
可愛いさを目の当たりにして顔が綻ぶ。こんな厳つい(小湊君を除いて)男子高校生がそんな心配をしてくれるなんてマネージャー冥利に尽きるというもの。
「朝、当番制にして迎えに行くぞ…?」
「そんな心配しなくてだいじょーぶ!ほら見て!防犯ブザーも防犯スプレーも持ち歩いてるから!」
「……ちょっとそれは持ちすぎじゃないかな」