卒団試合開始

シニアの卒団試合。毎年、一二年生は応援に徹し、三年のみで紅白戦が行われる。

「紅組は…一番ピッチャー、田之倉眞白」
「はい!」

うわ、呼ばれた。しかも先頭打者。
監督は思っていた以上に私を評価してくれていたらしい。順々に紅組のメンバーが発表される。

「四番キャッチャー、原田雅功」
「はい!」

嬉しくて思わず雅功を見る。私の視線に気がついたのか彼はこちらを見下ろしてきた。怖いよ、顔。「ニヤついてんじゃねえ」そう言う事ですね。

三年全員の名前が呼ばれ、チーム分け発表が終わった。じゃんけんで決めた結果、先攻は紅組。

白組のピッチャーは我がチームのエース様。バッターボックスへ入る前にマウンドを見る。エース様の調子は良さそうだ。雰囲気も出て来たし高校が楽しみな選手の一人。

「打ってけよー!眞白ー!」
「いつもみたいの頼むぞー!」

味方ベンチからの声援。久しぶりの感覚に顔が緩む。雅功、そんな睨まないでよ。

「お願いします」

一礼してバッターボックスに入った。
手の内を知っている者同士の戦い。球をまじまじと見る必要ない。守備位置を確認する。

初球セーフティ。エース様が目を見開いた。こらこら慌てないで処理しなさいよ。

「セーフティ成功!」
「いいぞー!ナイス腹黒!」
「さすがイヤらしさナンバーワン!」

いや、待て、なんだその野次。確かに四球待ちしたりバントしたりするけど。

今度はリードを大きく取ってピッチャーの牽制球を見る。うん、成長したねえ。しみじみしているとまた牽制球が飛んで来た。ちょっとランナー意識しすぎ。

ただエース様の弱点は一人アウトを取るとランナーを忘れちゃう所。二番打者が打ち取られてしまった後の三番打者。
初球でバッテリーの様子を確認し、二球目で走った。ばっちり盗塁成功。
エース様もそうだけど、キャッチャー君もネクスト気にしすぎ。このキャッチャー君は二番手捕手として私ともよくキャッチボールをしてくれた。良い子なんだけど雅功に対抗意識を持ちすぎな所がある。それはまだ克服されていないみたいだ。

またリードを大きく取るとエース様と目が合った。そんな睨まないの、牽制しますって言ってるようなものじゃない。

厳しく攻めきれず三番がヒットを放った。続いて四番、雅功がバッターボックスに入る。バッテリーのスイッチが入った。

「雅功ー!打てよー!」
「おいしいとこ持ってけー!」

味方ベンチの応援がよく聞こえる。一二年生の声援も大きくなった。

皆が固唾を飲んで見守る中、雅功がなんと差し込まれた。ただ力で持って行ってくれたお陰で飛距離は十分。タッチアップで走り出し、初回初得点を獲得。

「ナイス犠牲フライ」
「うるせぇ」