卒団試合、一回裏。白組の攻撃が始まった。
打者それぞれの弱点を頭に並べ立てる。直接弱点を伝えるのは簡単にできるが、そうするより体で分からせた方が早い。
「おい、なんか悪い顔してるぞ」
「そりゃあね!さっき見せたノートちゃんと覚えた?」
「おかげで頭パンク寸前だ」
眉をひそめて見せた雅功だが、きっと覚えてくれたのだろう。さすが正捕手。
「誰にも打たれないからバックの皆んな寝てて良いよー!」
「馬鹿言ってんじゃねぇ」
後ろから思いっきりど突かれた。
打者の苦手な配球をとことん投げ込む。
一番は見逃し三振、二番はサードゴロ、三番は空振り三振。三者凡退。今日もよく球が走ってる。
君たち全然苦手克服できてないじゃない。今一度、再確認しときなさい。
「眞白ー!今日絶好調じゃねぇか!」
「私はいつでも絶好調ですけど?」
「くそ!その通りだけど!」
「ドヤ顔腹立つんだよ!」
ベンチに戻る際、内野陣にど突かれた。皆んな私の事ど突きすぎじゃない?最後の試合だから開放的になっているのだろうか。
二回表。二打席目。
「あれ?」
センターのグラブ捌きを見るためにセンター前に落とすつもりだった。しかしセンターに上手くキャッチされ、スリーアウト。
「眞白ー!あれ?じゃねーだろ!」
「何やってんだー!」
仲間の野次が心に刺さる。申し訳ありません。センターの子、あんなに走るの速かったっけ。
「首傾げてんじゃねぇよ、切り替えろ」
「…ごめん」
「さっさとスイッチ入れろ…やり辛ぇ」
皆んな成長しているんだなあとしみじみ感じてしまう。雅功の言う通り、切り替えなくては。
マウンドの土を均して顔を上げる。強気に弱点をとことん突いてやろう。キャッチャーミット目がけて振りかぶった。
「完璧過ぎて自分が怖い!」
「自分で言うな」
ベンチに戻りながらまた雅功にど突かれる。
その回も次の回も三者凡退で打ち取れた。ただ私が個々の苦手なコースに投げている事が分かったのか、狙って振ってくる。少しは成長してる証拠かな。
四回表。三打席目。
今度はどこに打とうか。グラウンドを見渡す。うーん、やっぱり。
「バッター合ってねーぞ!」
「ボール見えてるー!」
両サイドのベンチから声援に熱が帯びて来た。何球もファールを出し続ける。ヒットにできる球もワザとファールに、ボール球も構わず振った。マウンドのエース様は肩で息し始めたのが見える。こらこら、気持ち切らさないの。
13球目。絶好球が来たので思いっきり叩いた。心地よい音がした瞬間、白球が右中間へ飛んで行く。
「先頭打者出たー!」
「さすが眞白!ナイバッチ!」
「ナイス腹黒ー!」
だからなんなの、ナイス腹黒って。地味に語呂がいい。
エース様が二塁にいる私を思いっきり睨んで来た。ははは、さすがに虐めてたのバレたか。ごめんね。スタミナない君が悪いんだけどね。
ペロリと舌を見せると牽制球が飛んで来た。ほらほら、バッター集中。