最後の気持ち

卒団試合、四回裏。ようやく白組も打者2巡目。
向こうもようやくバットを合わせに来たため、見逃しや空振りが少なくなった。けれどまだまだ。少年たち、情けないぞ。

「完璧すぎて自分が怖い!」
「まだ言うかテメェ」
「完璧だけどな!腹立つんだよ!」
「一球くらいこっちに寄越せ!」
「絶対ヤダ!」
「ったく!この調子で頼むぞ!」

今度は外野陣が物凄い勢いで駆け付けてど突いていった。体力が有り余っているらしい。少しは打たせた方が良さそうだ。

その後、順調に抑える事が出来たため、6対0で紅組が勝利を収めた。

「眞白ー!テメェ!ノーヒットノーランかよ!」
「卒団試合に本気出してんじゃねぇよ!」
「まあまあ、次も頑張ろ?」
「もうスイッチ切れてんのかよ!」
「急に切るんじゃねぇ!」

皆んなに揉まれながらも顔が緩む。色んなプレーが見る事が出来、成長が感じられた良い試合だった。今私は腑抜けた笑顔を浮かべているだろう。

その時、隣に立っていた雅功と目が合った。うわ、また言われる。そう思ったのに何も言われなかった。

「雅功どうしたの」
「……何でもねぇよ」
「何でもないって顔してないけど」
「うるせぇ、こっち見んな」

察した私はそっぽ向く雅功の反対側に回り込む。顔を覗き込むと彼はギョッとした表情になった。

「ははーん…寂しいんでしょ?」
「はぁ?!んなんじゃねぇよ」
「じゃあ私と目を合わせて見なさい!ほら!」
「うっせ、近寄んな」
「照れてるの?可愛いなぁもう!」
「照れてねぇよ!」
「顔赤いよ?」
「赤くねぇ!」

頭を撫でようとしたら思いっきりど突かれる。ちぇ、結局彼の頭は一度も撫でさせて貰えなかった。

二戦目の紅白戦が始まり、今度は応援に徹する。一戦目の反省を踏まえてか皆んな中々に打てていた。
こうやって間近に応援することも、野次を飛ばせるのも、最後になるのかと思うと感慨深い。こうして私がやれる事は減っていくのだろう。

打席に入る雅功の後ろ姿が霞んで見えた。キラキラ輝いてる。その背中はこれからどれだけ大きくなるのだろう。

「雅功ー!大きいの頼むよー!打てなきゃ四番じゃないぞー!」
「おい眞白!雅功は敵チームだろうが!」
「何応援してんだ!」

ベンチの中で叩かれた。君たち少し手加減してれないかな、忘れられてるんだろうけど一応女子だからね?

その時、芯が通った音がグラウンドに響いた。雅功が右手を掲げ、ベースを回っている。ホームラン。

何だかんだ勝負強いんだよなあ。リードが慎重過ぎる時もあるけど。

ふと目が合うとドヤ顔された。あー頭撫でたい!