mind game
小さくなった体のせいで地に足が付かなくなったのを悲観しながら、両足を揺らしてみた。早く元に戻りたいものだ。
座った椅子の隣にある扉の向こうでは何やら楽し気な話し声が聞こえてくる。
劇場に着いた僕らはコナン達と合流し迷探偵の依頼者である女優の牧さんのマネージャーに連れられ楽屋に来た。特に興味がない僕は牧さんの楽屋前の椅子で待っていることにしたのが数分前。
なにやらこの楽屋が並ぶ廊下も騒がしくなってきたので顔を上げると、この場にそぐわぬ人たちがこちらに向かって来ていた。その後方には見慣れた頭も見える。
なーるほど、今度はそう来たか。無意識に口角が上がる。
先頭を闊歩していた中森警部は僕を一瞥したものの、気に留めることなく部下を引き連れ、楽屋に入って行った。そのまま彼も中に入るのかと思いきや僕の隣に腰を下ろした。
本当にそっくりで思わず見入ってしまう。多少メイクはしているだろうけど、よく似ている。もしコナンが僕の近くにいなかったら変装を見破れる自信はない。
「よお、ルオン、元気してたか?」
「新一は二人きりの時、絶対僕の事ルオンって呼ばないよ、バ怪盗」
にやりと笑って見上げると、変装を見破られるのは承知の上だったらしく余裕の表情だった。この変装は僕、哀、博士にとってコナンが近くにいる場合見破るのはたやすい。実際、本物は小さくなっているのだから。
「それは失敬失敬。天音嬢、今日はお手柔らかに頼むぜ」
「何言ってんの?盗む気ないくせに」
今度は意外そうに「へえ」と声を漏らしていた。バ怪盗は立ち上がり僕の前に跪く。嫌な予感がしたため咄嗟に両手を後ろに隠す。
「解読して頂いたお礼に今度お食事でもいかがですか?」
伸ばされた手は僕の髪に向かっており、しまったと思った時にはもう遅かった。
熱くなった頬を誤魔化すために急いで手を振り払う。こんな事で赤くなってしまう自分に嫌気がさす。いい加減慣れろアホ。
「このロリコン!断る!」
「ロリコンたぁひでーな」
「事実でしょーが」
「天音嬢限定だっての」
今度は手にキスをしようと手を伸ばしてきたので椅子から降りて身構える。二度同じ過ちを犯すほど馬鹿ではない。
すると「入りたまえ」と楽屋から中森警部の声が聞こえた。「ナイスタイミング!」と心の中で中森警部に賞賛を送る。バ怪盗はこちらに向けていた足を止め、「また後でな」と言葉を残し中に入って行った。
まるで嵐のようだと思う。一息ついた僕は椅子に座り直してからも、もう一度溜息を吐いた。…あいつのせいで一気に疲れた。