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適当な理由を蘭たちに伝え、僕は舞台を観ることなくエレベーターに乗り込んだ。
せっかく無料で観れるというのにもったいない。けどそれよりもこの暗号を無視すれば、あの気障な怪盗に解けなかったのだと認識される方が辛抱ならない。
「何階かな?」
「…展望テラスまでお願いします」
親切な声をかけてくれたのは先にエレベーターに乗っていた青年だった。
張り詰めた空気を感じ、少し沈黙する。
口火を切ったのは僕だった。
「あんたの所為でせっかくの舞台観られないんだけど」
「…さすが天音嬢、もうお気づきですか」
そう言って振り返った青年、もといキッドは口角を上げた。
エレベーターは2人きりの空間のまま登り続ける。
「今回の見破ったポイントを教えていただけませんかね、天音嬢」
「正直、今回は偶然」
たまたまバ怪盗に変装しやすそうな背格好の人がいるなーと、目をつけていた。その人はさっき突然仕事が入ったらしく慌てて会場から去ったのをまたも偶然目にしたため、このエレベーターに乗っていた彼が偽物だと気づけただけだ。
その旨を説明すると「勘良過ぎだろ…」とバ怪盗はぼやいた。
心中で同意を示しとく。何故か怪盗キッドが絡むといつも以上に勘が冴えわたるのだから不思議だ。
チンという音と共に開いた扉を連れ立って降りる。
キッドが屋上に向かう扉をピッキングしている間、暇を持て余していると、「一応聞くけどよ、アレ、完璧に解けたのか?」と持ちかけられた。
「愚問だね、解けてなかったらここにいないって」
「…今回のは簡単過ぎたか」
「そうだね、あんたにしては捻りがなかった」
《P1》はペントハウスの意味。その上に線があるからペントハウスの上、つまり屋上。
そして表紙のナポレオンの家紋からフランス革命直後にフランスで導入された十進化時間を《8:33:33》に当てはめ、現在の時刻に置き換えると午後8時。
「つまり8時にビルの屋上って意味でしょ」
「お見事」
そう言ったと同時にガチャリと音がして扉が開いた。
屋上は意外と夜風が強く、顔に被さってくる髪を抑えなくてはならない程。
「ところで、コナンがあんたを見張ってたはずなんだけど?」
「そりゃ仲間と入れ替わったに決まってんだろ」
…それじゃあ新一は今偽物に必死に張り付いてるってわけか。
キッドの手際の良さもあるだろうけど、それに気づけない彼は高校生探偵失格な気がする。
「で?呼び出した用件は?」
「もちろん天音嬢と邪魔されずゆっくりお話を…」
「御託は良いから」
一蹴すると不満そうな顔をしたが、直ぐに真剣な表情に切り替わる。
そのままつらつらと彼の紡ぐ言葉に僕は耳を傾けた。