only to you


舞台翌日、宝石を守った礼として函館にある牧さんの別荘に迷探偵が招待された。まあ、守るも何もはなっから怪盗キッドは盗む気がなかったんだからそんなもの必要ないと思ったけど。

空港に着くや否や「丁度知り合いが空港にいるから会ってから合流する」と蘭たちに伝えその場を離れる。横目で電光掲示板を確認すると僕らがのる便はスカイジャパン航空の865便、つまり奇数便。という事はこの飛行機の中でキッドは宝石を盗むつもりだろう。

それは一先ず置いておこうと首を振って思考を遮る。今集中すべき事はそれじゃない。

空港の駐車場をインラインスケートで滑走して目的地に向かう。もちろん監視カメラをできる限り避ける。
昨日のカードで指定された場所には黒いボックス型の車が止まっていた。インラインスケートを脇に抱えノックするとスライド式のドアが開いた。

「お待ちしておりました、天音嬢」

中で待ち構えていたのは普段着を着たバ怪盗だった。おそらくこの顔は素顔なのだろう。やっぱり何度見ても新一に似ている。

軽く舌打ちをしてみせてから中に入った。車内には僕とバ怪盗のみ。予想だと手下が同乗してると思ったけどそんな簡単に手下の顔はバラしたくないらしい。

車のドアが閉まった瞬間、突然腕を引かれ肩を座席に押し付けられた。バ怪盗の顔が目の前まで迫っていて何がどうなったのか目を丸くする。脳内で分析した結果、今僕は怪盗キッドに密室空間で押し倒されているらしい。

「なに?」
「警戒心なさすぎじゃありませんか、天音嬢。これじゃあ悪い狼に食べられてしまっても文句言えませんよ?」

スッと首筋を撫でられ、背筋がざわつく。

「天下の怪盗キッドさんがまさかロリコンとはね、マスコミに売ってやろーっと」

左手を伸ばしスマホで素早くシャッターを切った。

げっと顔をしかめたバ怪盗の隙をついて彼の下から逃げ出す事に成功。
スマホの画像を確認すると我ながらよく撮れてる。

「意地きたねーぞ…」
「何とでも言えば?ロリコン怪盗さん」
「ロリコンじゃねーよ!天音嬢限定なんだって」
「その言い訳は聞きあきたからそろそろ別の用意してくれない?」
「だーかーらー!」

一通りやり取りをした後、頃合いを見計らって本題に入る。

「僕も少し調べたんだけど、酒井なつきはハリウッド女優のエージェントから声がかかってたみたいだけど牧さんが裏から手を回したことで白紙になったらしい。エージェント側は本人は何が何でも行きたいと意志を示していたのに突然行きたくないと言われて困惑したってさ」

キャメルに協力してもらって集めた情報を晒すと案の定、バ怪盗は出所を聞いてきたけどそこは言う訳にいかず濁した。