妖精の尻尾最強魔導士

あたしたちが新しいギルド、妖精の尻尾に来てから数日後…


「どお?もうギルドには慣れた?」
『ルーシィよりはギルド慣れしてるよ』
「あたしが聞いてるのは妖精の尻尾のことよ!」
『ん〜、すっごい楽しい!』
「(笑顔かわいっ!…そうよね、この子顔はいいんだから)はぁ」
『なにその目』
「なんでもないわ、ウェンディはどお?」


今日のウェンディはおさげ。やっぱり可愛いわね。ルーシィの質問にも普通に「はい」て答えてるし。シャルルは相変わらずのツンだね。


「そういえばルーシィさんは何で寮じゃないんですか?」
「女子寮の存在最近知ったのよ。てか寮の家賃て十万Jよね。もし入ってたら払えてなかったわ今頃…」
『あたしは家と寮だよー』
「は!?家賃何万Jよ!」
『女子寮二つで20万J、家が10万Jだから合わせて30万Jかな』
「さ、30万J!?」


驚いて腰を抜かしたルーシィを見てティアは爆笑している。30万Jだけどあたし基本は10万J単位の依頼しか受けないからね。

あたしもティアと一緒に笑っていたら急に聞こえてきた鐘の音。あたしもウェンディもルーシィも驚いていたけど、ナツとかは嬉しそうな顔に変わった。


「ギルダーツが帰ってきたァ!」
「あいさー!」

「ギルダーツ?」
「あたしも会った事ないんだけど、妖精の尻尾最強の魔導士なんだって…」
「うわぁ」
『どんな人だろ』


ギルダーツって人が帰ってきたのが嬉しいのかお祭り騒ぎなギルド内。何でこんなに騒いでるの?


「みんなが騒ぐのも無理ないわ」
『ミラ!』
「三年ぶりだもん…。帰ってくるの」
「三年も!?何してたんですか!?」
「もちろん仕事よ。S級クエストの上にSS級クエストってのがあるんだけど、そのさらに上に十年クエストって言われる仕事があるの」
『十年間誰も達成した者はいない、だから十年クエスト』
「ギルダーツはそのさらに上、100年クエストに行ってたのよ」


ミラが話している間にだんだんとルーシィの顔に冷や汗が流れていっていた。


「100年クエスト…。100年間、誰も達成できなかった仕事って事ですか…!?」
『そうだよ?ちなみにあたしは十年クエストならやったことあるよ』
「ええええ!!?」
『あれは辛かったのに100年とはギルダーツって人すごいなあ』


放送で聞こえてきたのはマグノリアを"ギルダーツシフト"へ変えるとのこと。ミラに聞いてみると外に出ればわかると言われたので、ルーシィと外に出てマグノリアを見ると、街が割れた。
いや冗談じゃなくて、言葉の通り街が割れた。


「街が…、割れたーっ!」
「ギルダーツは触れたのもを粉々にする魔法を使うんだけど、ボーッとしてると民家もつきやぶって歩いてきちゃうの」
「どんだけバカなの!?」
『その為に街を改造したってこと?』
「すごいねシャルル!」
「ええ、すごいバカ…」


粉々にする魔法って事はブレイクとか?クラッシュかな?あの魔法すごいってか怖いし実際に使う人に会った事はないからちょっと楽しみ。


「来たーっ!」


そして入ってきたのは…


「ふぅ」


、、、このおじさんがギルダーツ?


「ギルダーツ!オレと勝負しろォォォー!!」
「いきなりそれかよ」

「おかえりなさい」
「む。お嬢さん、確かこの辺りに妖精の尻尾ってギルドがあったハズなんだが…」
「ここよ。それに私ミラジェーン」
「ミラ?ずいぶん変わったなァオマエ!つーかギルド新しくなったのかよーっ!!」
「外観じゃ気づかないんだ…」


ただのおじさんのように見えるけど魔力の量はすごい感じる。のに、すっごいバカみたい。ギルドに気づかないしミラにも気づかない、のは仕方ないか。昔と変わったし。

ギルダーツに勝負を売りにいったナツだけど片手で投げられて天井とこんにちはしていた。でも悔しそうじゃなくて嬉しそうに笑っていた。


「いやぁ、見ねえ顔もあるし…、ホントに変わったなァ」
「ギルダーツ」
「おおっ!マスター!久しぶりーっ!」
「仕事の方は?」


仕事について聞かれたギルダーツは声に出して笑った。そんなギルダーツを見てマスターはわかっているかのように、ため息を吐いた。


「ダメだ。オレじゃ無理だわ」


妖精の尻尾最強の魔導士でも達成できない100年クエストって…。あたしやらなくて良かった。
でもマスターが言うには、このクエストから帰ってきたのはギルダーツが初めてらしい。
ナツにお土産があると言い残して壁を壊して帰って行った。ナツもギルダーツに続いたので(壁を壊すところまで同じだ)あたしは家に帰ることにした。

家に帰る前にお買い物しとかなきゃ、と街の中を歩いていたら、ギルダーツの家に向かったはずのナツとハッピーにばったり遭遇した。


「よォ!アリスも一緒にギルダーツんとこ行こうぜ!」
「あい!さっきはちゃんと話せてなかったしね」
『んんん、いいのかな。ナツにお土産渡すのに、あたしもいて』


あ、お前の分ないんだ、、みたいな空気にならないか心配。そんなあたしに対して、ナツは気にすんなよーて感じでみんなでギルダーツの家へ。

街から少し離れたところにあるギルダーツの家。ほんとに寝泊まりだけするような大きさの小さな家だけど、どこか趣がある。


「よお!」
「おじゃまします!」
『おじゃましまーす』
「おう、きたか。、、アンタは…?」


やっぱり!ナツとハッピーだけだと思ってた顔だよこれ。
居た堪れない空気の中、自己紹介を軽くする。


『はじめまして?て、さっきギルドであったけど』
「わりぃな、嬢ちゃんの顔見てなかったわ」
『でしょうね。あたしアリス!ナツと同じ滅竜魔導士!』
「おお!滅竜魔導士かあ、それに、、」


なんだなんだ…
ジトーっとあたしの体を頭のてっぺんから足先まで何往復か見る。


「妖精の尻尾の女性陣はみんな良い女だが、これあ数年後が楽しみだなあ」
『なるほど妖精の尻尾の男だ』


マカオとかワカバとかその他おじさんたちと同じ匂いがする。でもまあ、魔力量とか強さは桁違いなのが伝わってくる。


「アリスは今でも良い女だぞ?」
『やだナツ大好き』
「そんなことより!土産ってなんだ?」


期待した眼差しでギルダーツを見るナツ。
そんなことってなんじゃい。


「お前リサーナがいながら他の女口説くようになったのか?やるじゃねえか」
「あ?」
『っ、』


そっか、ギルダーツは三年ぶりに帰ってきた、ということは二年前に亡くなったリサーナのことを知らないんだ。
あたしとリサーナの関係も知らないから、ふと出てきた単語に心臓がドクリと高鳴った。


「リサーナは死んだよ、二年前に」
「なっ、まじかよ、、そうか、それでミラのやつ、、すまねえ、ナツ」
「そんな話なら帰んぞ」


茶化されたと思ったナツは、ギルダーツに背を向けて帰ろうとする。


「ナツ、仕事先で…、ドラゴンに会った」
「っ!」
『えっ』
「お前の探している赤いヤツじゃねえとは思うがな、黒いドラゴンだ」
「ど、どこで!?」
「霊峰ゾニア、おかげで仕事は失敗しちまったよ、、ちくしょう」


黒いドラゴン、ガジルのドラゴンかと考えたが、メタリカーナは黒よりは銀に近い色らしいし、あたしとウェンディが探しているドラゴンも、黒ではない。

ギルダーツから場所を聞き出すと、ナツは再び足を進めようとしたが、止められる。


「行ってどうする」
「決まってんだろ、イグニールの居場所を聞くんだ」
「もういねえよ、あの黒竜は大陸、あるいは世界中を飛び回っている」
「それでもなんか!手がかりがあるかもしれねえ!!」
『ナツ、』
「ナツ、これを見ろ」


体を隠していたマントを脱ぐと、そこには左側が義足と義腕の体が。思わず目を見開き、ぶるりと身震いする。そして包帯を巻いているが内臓も。
ギルダーツが言うには、その黒竜にほとんど一瞬でやられたらしい。
あたしたちの親であるドラゴンはそんな人を傷つけるなんて、酷いことをするドラゴンじゃない。人間を嫌うドラゴンが存在する?
そういえば、昔、黒竜のことを、どこかで…


「イグニールってやつはどうだか知らねえが、あの黒いのは間違いなく人類の敵だ。そして、人間には勝てない」
「っそ、それを倒すのが滅竜魔導士だろ!!オレの魔法があれば黒いドラゴンだって…!」
「本気でそう思ってるなら止めやしねえよ」
「くっ、う、、くそー!!」
『ナツ!!』


走り出したナツをハッピーが追いかけようとするが、ギルダーツが声をかけとめる。


「お前がナツを支えてやれ。あれは人間じゃ勝てねえが、竜なら勝てるかもしれねえ」

ナツなら、いつかきっと…


ギルダーツの言葉を聞きナツを追いかけたハッピー。残ったあたしはギルダーツと向き合う。


「お前も、ドラゴンが居なくなったのか?」
『え?う、うん』
「そうか、ナツにとってお前も大事な存在なんだろな」
『うん?』
「いんや、ナツのこと、頼んだぞ」


ナツにとってあたしが大事だとしたら、あたしにとってもこのギルドのメンバーは大事な存在だ。
あたしの居場所をくれた、この場所は。

あたしもナツを追いかけようかと思ったが、痛々しいギルダーツの傷を見て、ある可能性を考える。
そして、帰ろうとした足をギルダーツの目の前まで進め、手をかざす。


『ふぬぬぬ…』
「おま、何を…」


魔力を回復して傷を治すのがあたしの魔法。
なら、破損した内臓も、元に戻せるのではないか。こんなすでに臓器が無くなった、大怪我の人治したことないけど、やってみなくちゃ。半端な気持ちじゃダメだ。人の体を治す治癒は簡単な気持ちで出来るものじゃない。失敗したら相手の命にも関わってくる。

お願いセレスティーネ、力を貸して。


「お、おおお、?」
『ーっ、ぅ、』


内臓なので、目視できないけど、あたしの中の魔力がどっと減った。貧血のような症状で視界がふらっとして、後ろに倒れそうになったのを、ギルダーツが支えてくれる。


『なお、た?』
「ったく、近頃のガキは無茶しやがって」


呆れたように、ため息をつかれた。
次は左腕と足を治そうとしたけど、ギルダーツに止められる。


『何で、』
「将来有望な女に倒れられちゃあ困るからなァ」
『こんなの、寝たら治る』
「それにな、」


この傷は、100年クエストに行って、ドラゴンと戦って生きて帰った、誇れるものだ


「だから、無理すんな」
『、ごめ』
「それから、サンキュー」


さっきの言葉はきっと、あたしに無理をさせないための偽りだろう。いや、半分は本気かもしれない。ここで闘って生き延びた証。忘れないために消したくないもの、その気持ちもあるんだろうね、

頭をポンポンされて、記憶にない父親のような暖かさを感じた。
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