エドラスの魔法

「ウゲロ、ウゲロ」
「とらぁ!」
「ウゲロ」
「待てー!」
「何やってんのよアンタ…」
『遊びたい年頃なの、きっと』


珍しい見たことのないカエルを追いかけては逃げられを繰り返しているナツが可愛い。

こっちの妖精の尻尾ではこれ以上お世話になるわけにはいかないのであれから出てきたのはいいけど王都までは五日は歩くと言われた。


『あ!翼で飛んでけばいいんじゃないの?』
「それが調子が悪いの…」
「歩いていくしかないわね」
「オイラたち魔法使えなくなっちゃったの?」
「わからない…、先が思いやられるわ」


変装しているシャルルがため息をついた。
ちなみに今更かと思うけどナツもウェンディもティアもハッピーもみんな変装している。あたしは着物だからまあいいや。


「ハッピー手伝ってくれ!見たことねえカエルだぞ!!これルーシィへのおみやげにしようぜ!」
「オイラ喜ばないと思うよ」
『あたしはすぐに捨てられると思う』


あたしたちの意見も聞かず跳んだカエルに続きナツも飛び跳ねたが、ボヨンとした何かにぶつかった。
顔を上げるとカエルで、きっとナツが追いかけていたカエルの親だろう、すっごく大きい。


「ナツ!襲いかかってくるよ!!」
「よーし!火竜の…」


………あれ?様子がおかしい。火竜の鉄拳をしようと拳に力を溜めるナツだけど得意の炎が出てこない。


「魔法が使えねーっ!!」
『はい!?』
「ええーっ!!」
「うわー」
「どうなってんだ!?」
『こっちが聞きたい!』
「わ、私も!!」
『ウェンディも!?』
「これがエドラスの影響なの!?」


めっちゃ厄介じゃん!
追いかけてくる親カエルから走って逃げるあたしたち。
え、でもあたしは確かエドラスに来てすぐに天空魔法使えたぞ。
試しに手に力をいれると魔力が溜まっている気がする。よし、ここはあたしがバシッと倒しますか。


「ど、りゃあ!!」
「ウゲロー!」
『え?』


止まって戦闘態勢をとった瞬間さっきまで一緒だったエドラスのルーシィが鞭で倒した。

…あたしの役目!


「怖いルーシィ!」
「怖いルーシィさん!」
「いちいち怖いとかつけんなっ!」


ツッコミ方がまんまルーシィだわ。
なんて思っているとシャルルがルーシィになぜここにいるのか問いかけた。
頬を少しだけ染めて気まずそうに視線をそらし答えた。


「まあ、その、この辺りは危険だしな。なんつーか、その…」
『る、ルーシィ…』
「し、心配してる訳じゃねーからなっ!」


ルーシィが思っていた以上にお人好しだったから感動してたのにまさかのツンデレ発言。あたしはちゃんと聞きましたよ。


「なんだかんだ言ってもやっぱりルーシィだな、おまえ」
「どんなまとめ方だよ!」
「『そーゆーツッコミとか』」
「かぶるな!」


やっぱりナツも思ってたんだね。気が合うわ、ほんと。

武器も持たずに旅をするのは自殺行為だとの事で、ルーシィおすすめのルーエンの街にある武器屋に連れて行ってもらった。その途中でこの国での魔法のことをルーシィに教えてもらった。

そして武器屋につき、ナツは炎の魔法道具を、ウェンディは風の魔法道具を買ってもらいあたしは遠慮しといた。だって魔法使えるし。

そして今は一休みがてらアースランドのルーシィのことをエドラスのルーシィに教えていた。

いろいろ教えると爆笑してるルーシィがおもしろくてあたしも爆笑。


「さっき買ったコレ、どうやって使うんですか?」
「バカ!人前で魔法を見せるな!今現在、魔法は世界中で禁止されてるって言っただろ?」
「ごめんなさい」
「でも、元々魔法は生活の一部だったんでしょ?」
「そうだよ、王国の奴等あたしたちから文化を一つ奪ったんだ。自分たちだけで独占する為に」
「じゃあ王国の奴等やっつければまた世界に魔法が戻ってくるかもな」
『たしかに』


何気なく言った言葉だけどそれには一理ある。とられたら取り返せばいい。


「な、何バカな事言ってんだよ!王国軍と戦える訳ねーだろ」
『じゃあ何でついてきたの?』
「王都までの道を教えてやろーと…、た、戦うつもりなんかなかったんだ!」
「そっか。ありがとな」
「…!」
『あ、ルーシィ照れたー』
「照れてない!その顔やめろ!」


照れているルーシィをニヤニヤしながら見ていたら頭を叩かれた。いてて。


「いたぞ!」
「街の出入り口を封鎖しろ!」
「王国軍!?」
「えー!?」
「妖精の尻尾の魔導士だな!?そこを動くな!」
『動くなって言われて動かねえやつがどこにいるんだよ、バーカ!』
「よーし!さっそくさっき手に入れた“魔法”で…」


だんだんと近付いてくる王国軍の兵士たちから逃げようとしたのにナツが突っかかっていった。


「いくぞー!ファイヤー!!」
『おお!なかなかの威力!』
「はっはーっ!…あ?」


燃えた先の煙から見えたのは無傷の兵士たち。しかも盾をしたいた。
もう一度試そうと魔法道具を使うナツ、だけど魔力は有限、全部の魔法に使用回数が決まっていたのに出力を考えずに使ったので一回で終わってしまった。
捕らえようとこっちにくる兵士たちに慌てていたらウェンディが持っている魔法道具が始動し、竜巻が起こりみんなして飛ばされた。

結果オーライ、か?
とか思っていたけど飛ばされた先は小さな小屋。それに外は兵士が見回りをしていて出るに出られない状態になってしまった。


「何とかまけたけどこのままじゃ街を出れないよ」
「不便だなァこっちの魔法」
「ですね」

『どうしよっか』
「別の入り口ない?」
「難しいな」


ずっとここにいるわけにはいかないしだからといってへたに出て行ったらみんな捕まってしまうし、向こうの魔法がどんな感じなのかわからない限りこっちからの攻撃は避けた方がいい。


「いたぞ!妖精の尻尾だ!!」


ギクッ

怯えながら扉を見ていたのに一向に開く気配はない。


「あれ?」
『ち、ちょっと覗いてみる』


そっと見ると腕を掴まれていて怒っているルーシィ。ちなみにアースランドのね。


「ルーシィ!?」
「あたし!?」
「何でルーシィがここに…」
「ど、どういう事!?」
『とりあえず助けないと!』
「おう!」
「オイ!」


ナツと小屋から出てルーシィを助けるために駆け出した。のに!


「開け、天蠍宮の扉…」
「ルーシィさん!こっちの世界じゃ魔法は使えないんです!」

「スコーピオン!!」
「ウィーアー」


魔法使えてるし!スコーピオン出てきたし!兵隊やっつけてるし!どういう事よ!あたしも使えるんだけど。


『ルーシィ!』
「!みんな!会いたかった〜っ!」
「何がどうなってるんだ…」


両手をあげながら体全部で喜びを表しているルーシィだけどナツたちはルーシィが魔法が使えたことに驚いていた。


「あたしーっ!?」
「ま、まさかこいつがアースランドの」

「逃がすなー!」
「捕まえろー!」
「話は後回しみたいだね」


もう一人の自分を見てルーシィは開いた口が塞がらない状態になっていたが駆けつけた兵隊がきてそれどころじゃなくなった。


「ナツ!早くやっつけて!」
「オレたち魔法が使えねーんだ」
「えーっ!?」
「おまえ!何で使えるんだよ!」
「知らないわよ!」
『はいはーいストップストップ』


言い合いになりそうな二人を止めるとハッピーやシャルル、ウェンディがルーシィに頼るようお願いをした。


「もしかして今のあたしって最強?」
『自分に酔うな!』
「いいから早くやれ!」


ルーシィが白羊宮の扉、アリエスを呼び出すとエドラスのルーシィや兵隊たちはこんな魔法を見たことがないらしく驚いていた。
アリエスのおかげでなんとか兵隊の気を引きみんなで逃げた。

走って逃げた先は森の中。
逃げ切れたところでなぜルーシィが一人でこっちの世界にいたのか聞くと、アニマが街をのみ込む瞬間にホロロギウムって星霊に助けられたとのこと。


「それで何もない広野に一人とり残された訳だけどそこにミストガンがやってきた」
「ミストガン!?」
『え、ルーシィもミストガンに会ったの?』
「ルーシィもってことはアリスも!?」
『うん。事情聞かされてこっちの世界にきたの』
「あたしは一方的に飛ばされたけどね」
「あいつは何者なんだ」
「何も言ってなかったわ」


まあ、みんなミストガンのこと疑問に思うよね。あたしだってそうだし。エドラスのことだって何か知ってそうな感じだったし。


「どうしてルーシィだけこっちの世界で魔法が使えるの?」
「うーん…。もしかしてあたし伝説の勇者的な」
「ないな」
「いじけるわよ」
『ぷぷ』


やっぱりルーシィおもしろいわ。ナツの即否定も最高だったけど。


「正直わかんないわよ。ナツが魔法使えないんじゃ不利な戦いになるわね」
『え、ちょ、あたし』
「てめーら本気で王国軍とやり合うつもりなのか?」
「とーぜん」
「仲間の為だからね」
「本当にコレあたし?」


…っいじけるわよ!
せっかくあたしが言おうとしたのに。エドラスのルーシィのばかばか!


「魔法もまともに使えねーのに、王国軍と…」
「ちょっと!あたしは使えるっての!!」
『ねえー』
「ここは妖精の尻尾(現)最強魔導士のあたしに任せなさい!燃えてきたわよ!!」
「情けねえが…」
「頼るしかないわね」
「がんばれルーシィさん!」
『あたしも使えるんだけど』


聞こえてる?聞こえてるから驚いた顔でこっち見てくれてるんだよね?

静寂な空気を壊したのはナツだった。


「何だとォ!?本当か!?」
『嘘ついてどうすんのよ』
「何でだ!?」
『ルーシィ同様わかりませーん』


両肩に手をおいたナツはそのままあたしを前後に揺さぶった。く、首が…
視界の端ではルーシィが落ち込みながら地面に両手両膝をついていた。


『る、ルーシィ?』
「何やってんだ?」
「だって、せっかく(現)最強魔導士になれたのに…」
『いやいや、ルーシィはあたしが戦ってるとこちゃんと見たことないっしょ?』
「そーいやオレもないな」
「…たしかに!それにウェンディと同じ魔法ならサポートが得意なはず!」
『う、うん?(え、いや、サポートより戦闘が得意なんだけど)』

「え、アリスさんは戦闘の方が、」
『しー。面白そうだしいいでしょ!』
「面白そうってアリスさん…」


ルーシィが自分の世界に入ってしまったのでもういいや。それにルーシィの噂は聞いたけどとても強いらしいし。あ、そういやあたし六魔との闘いで初っ端だけ戦闘見せたけど、あの時はみんなボロボロだったしちゃんと見てないか。
ピンチになるまでここは任せよっか。ウェンディに呆れた顔されたけど。
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