ファンタジア

「え!?それほんと!?」
『まじー』
「詳しく話して!」
『うーん、仕方ないなあ』









_____



マグノリアで開催されるという収穫祭にあたしはティアをつれて遊びに来ていた。
町のみんなは楽しみにしているようだった、妖精の尻尾のパレードを。



『すごー!』
「みてみて!こんなチラシ配ってたの!」
『ん?なになにー。ミスフェアリーテイルコンテスト…。何これ』
「美人を決めるコンテストなの。ちなみに魔導士なら誰でも参加可能らしいの!」
『こんなのでたらあたし一位とっちゃうー!』



やめてよ。冗談だからそんな目で見ないで。

ティアと一緒に妖精の尻尾に入ってエントリーをした。

あ、衣装とか決めてないや。しょうがないから服とウィッグを召喚しとこ。もしも雑誌とかに載ったら後々めんどうだしね。
淡い水色のウィッグをかぶって服装はロリータっぽくしといた。
よし、これならあたしだってわかる人はいない!



『かんぺーきっ!』
「ティアもしたいのー」
『はい、帽子とサングラスと服』
『やったの!』



ごめんね。すっごく似合ってる。
どこのチンピラって感じ。ロリータと不良ってなに。

町の中を歩いて食べてを繰り返していたら、ミスフェアリーテイルコンテストの開催時間が近づいてきたので妖精の尻尾に向かうことにした。

受付は完了したから裏で始まるのを待っていると観客席がガヤガヤし出していた。
これって優勝したら何かあるのかな?



『ティアはいい子にしててね!』
「はいなの!応援してるの!」



ピューンと観客席の方に飛んでいった。
何人か魔導士がいるけどみんな緊張してるみたいで足が震えていたりカチコチになってる人などいた。あたしは別に緊張しない。

少ししてから始まった、エントリーナンバー1から順番に。あたしはエントリーナンバー5なのでそれまでどうやってアピールするか考えておこっかな。

エントリーナンバー4の緋色の髪の人は喚装でゴスロリの格好をした。
…なんかあたしと似てるな。

あたしの番になって舞台の上に行く。高いヒールを履いてコツコツ音を鳴らしながら。



「エントリーナンバー5!妖精のように現れたロリータ!その美しさはどこからきているのか…。名前は、秘密(シークレット)!そこもたまらない!!!それではアピールターイム!」
『(とりあえず笑顔笑顔)召喚!』



召喚魔法で色とりどりの花を出す。それから天空魔法で風をおこして花吹雪をおこした。そしてあたしの周りを風で見えなくして違うロリータの服に着替えた。ちょっと露出があるメイドっぽいやつ。



『あたしをメイドとして雇ってほしぃなぁ』
「「「雇う!!!」」」



よし!すっごい頑張った。
退場するときも笑顔と投げキッスを忘れずに。別に面白そうだから参加しただけで、結果はどうでもいいからティアを呼んで、最初のロリータの服に着替えて退散することにした。


その後に事件はおこった。
あたしとティアはギルドのお土産にといろんな店をまわりながら、観光を楽しんでいただけなのに。

何が起こったか知らないけど、妖精の尻尾の男魔導士たちが町中で戦闘を繰り広げている。周りの迷惑考えたらどうなよ。

ところどころにある魔導士に効果がある術式を上手く避けながら、安全な場所がないか探してみた。
まあ、なかったけど。
たまに引っかかっちゃう術式は課題をクリアするか壊すかで抜け出した。



『んー。どうしよっか?』
「お腹すいたの!カフェに行きたいの!」
『そういやお腹すいた!じゃあウォーキングがてら店を探そっか』
「アリスちゃんの鼻を使えばどこの店が美味しいかわかるの」
『……さ、いこっか』



密かに鼻を使いながら店を探した、ティアに指摘されたからじゃないんだから。
その途中で、何回魔導士同士の戦いに巻き込まれそうになったことか。



「ちょっと〜、なあにあなた」
『…?あたし?』



なんか、羽がついてる妖精のコスプレをして眼鏡をかけたおそらく妖精の尻尾の魔道士の人に声をかけられ足を止める。



「そうよ!あなた、何か気に入らないわ」
『ええぇ、理不尽すぎない?』
「今この街は妖精の尻尾以外の魔道士がくるべきじゃないの」
『そんなこと言っても、お祭りだから来ただけだし』
「悪い事は言わないわ、巻き込まれる前にお帰りなさい、お嬢ちゃん」
『ピキッ、お嬢ちゃん…?』



あたし、そんなにガキに見える…?この人とそんなに歳変わらない気がするんだけど。
ウェンディみたいに見られてるって事?



「あわわ、落ち着くの」
『ご忠告どうもありがとうおばさん』
「お!おばっ!?」
「ひいぃ、アリスちゃんも挑発しないの!」
「小娘!!許さないわあ!!!」



あたしが先に喧嘩ぶっかけたわけじゃないんだからね!!
妖精さんの体が光った瞬間、無数の針があたし目掛けて飛んできた。なんの魔法を使うかわからない以上、下手に攻撃しに行ったら危険だし、眼鏡をかけているのも少し気になる。
てか、あたしはそもそも危害を加えるつもりはない。
しかしお嬢ちゃん&小娘は許せないのも事実。



「ちょこまかと…!避けてばかりじゃ何も変わらないわよ!!」
『うーん、それもそうだ。…んじゃ、っと!』
「!!きゃあ!!!」



とりあえず、見知らぬ人に本気で殴ったり蹴ったりは出来ないから、軽く風で吹き飛ばすと近くの建物に思いっきり激突した。



『あ、ごめん』
「…っ、謝るとか、舐めてるのかしら?」
『いや、そんなつもりはないけど』
「もういいわ、あたしの体に傷をつけたお返しは、きっちりしなくちゃねえ?」


壁にめり込んでいた状態から抜け出し、あたしとの距離を縮めると、かけていた眼鏡を取った。
ビームか?ビームでも出るのか?



「アリスちゃん!!」



あたしの頭に乗りっぱなしだったティアが、あたしと妖精さんの間に入った。
その瞬間、



『…ティア?』
「なにこの猫。ハッピーの仲間かしら?邪魔しないで欲しいわ」



動かなくなったティア。
迂闊だった、まさか目に石化の魔法があったなんて。



「まあいいわ、あなたの大事なお仲間?元に戻して欲しいなら、おばさんと言ったことを撤回して、地面に這いつくばって土下座しなさい!!!」
『ティア…、ごめんね』
「ふっ、はやくしなさい!」
『それから、ありがとう』
「はあ?」



あたしが石化されてたら元に戻るまで時間がかかったはず。けど、ティアが庇ってくれたから、あたしなら戻せる。
でも自分の魔法を易々と教えるつもりはないから小さく呟く。



『時間停止(テンプス・フィーニス)』



それから、ティアに手をかざし浮かび出る紫の魔法陣。



『時間操作…、過去(プラエテリトゥム)』
「……!アリスちゃん?」
『ほい、おかえり、ティア』
「やっぱアリスちゃんはすごいの!」
『ありがと、もうヘマしないから。まってて』


時間始動(テンプス・イニティウム)



「あっはっはっ!…え?」
『あたし、大切な子に手を出されて黙ってるほど優しくないんだよね』


向こうからしたら、一瞬でティアが石化から解放されてあたしが目の前にいる。



「な!何をしたの!」
『あたしの魔法〜。とりあえず、長期はかわいそうだから少し痛くなるだけだから、召喚!』
「え、え、ちょっ、まっ」
『ばーん!』



物理よりはマシだろうと魔法銃を数本取り出して、妖精さん目掛けて発砲。滅竜魔法でもよかったけど、街中だと目立っちゃうかもだし。

砂埃が消えると、そこには傷だらけになって目を回した妖精さんが倒れていた。



『あちゃ〜』
「こ、の、私が、こんな小娘にっ、」
『ごめんごめん、てか小娘ちゃうし!』



悔しそうに顔を歪める妖精さんにちょっと悪いことしたかな?と思ったけど、先に手を出したのは向こうだし。



「ほんと!最悪よ!!どうして妖精の尻尾の魔道士でもない人に負けなくちゃいけないのよ!!」
『えええ!!逆ギレ!?』
「体ボロボロだし!これじゃあ、ラクサスになんて言われるかっ、」
『妖精さん…』



町中の術式や戦闘は何か事情があるのだろう。
泣きそうな顔をして、鼻をすする音が聞こえて少し胸が痛んだ。部外者が関わらない方が良かったかな、



「何よ、あんたもはやくどっかに行けばいいでしょ!」
『いや、うーん、仕方ないなあ』



はあ、とため息を深くつく。
あたしが悪いわけではないと思うけど、泣きそうな顔されたらちょっとね。



「敗者の顔でも拝んで、気分がいいのかしら!?」
『ちがうって〜、動かないで』



倒れている妖精さんに近付き、治癒の魔法で魔力を、時の魔法で傷を回復する。ついでにボロボロになった服も直す。
また攻撃されると思った妖精さんは一瞬身構えたけど、自分に使われている魔法が悪いものでないのを感じてくれたのか大人しく目を瞑っている。



『はい、おわり』
「あなた、いったい…」
『あたし妖精の尻尾と関係ないし、何かほっとけないって言うか』
「…お人好しね」
『でもお嬢ちゃんとか小娘とか馬鹿にしたのは許してないんだから!』
「…ごめんなさい」
『あれ、意外に素直』
「ば!馬鹿にしてるわね!?」
『ちがうちがう!』



バッと起き上がった妖精さんが顔を赤くしてキー!と怒ってくる。それに両手で否定して立ち上がり、駆け出した。



「ちょっと!あなた、どこに行くの!?」
『観光に来たの!まだ足りないから!』
「この街は術式だらけよ!」
『何回かかかってるけど大丈夫!心配してくれてありがと!』
「し、心配なんてしてないわよ!…!あなた、名前は!」

『…アリス!よかったら覚えてね!』



走りながら後ろを向き、笑顔で告げる。この一瞬だけ会った人なんてすぐに忘れてしまうかもだけど、覚えてくれてたらいいな。



⚪︎



一方アリスがエバーグリーンと戦闘開始する頃、妖精の尻尾のギルド内では…


「残り二人だけじゃと…!?」
「何でお前まで出れねえんだよ!マネすんじゃねー!!」
「知るか!」


術式のせいでギルド内から出れない、マスター、ナツ、ガジル。
闘いたいのに闘えないナツはむしゃくしゃしてガジルに軽く八つ当たりをする。

残り二人、そこで気付いたマスター。


「こいつらだけじゃと!?」
「オイラは頭数に入ってなかったのか〜!」

「戦える魔導士はもういない、、ここまでか、」


絶望的な状況で、パッと浮かび上がった術式の文字。


−−− エバーグリーン vs ???


「な、なんじゃ?」
「あ?誰だこいつ?」
「残り人数は増えてねえな、」
「何が起こってるかオイラわかんないよ〜!」


突如浮かび上がった???にここにいる誰もが頭を悩ませる。
そんな中、物の数分で、、、


−−− 勝者 ??? 


「んな!?」
「なんだー!?こいつエバを倒しやがったぞ!?」
「てことは、みんな元に…!」


期待をして石化しているみんなの方を振り返る。
が、解ける気配はなく、むしろ、、、


−−− エバーグリーン 復活


「なんじゃい!!訳がわからんぞー!」
「あー!くそー!!俺も混ざりてえのに!!」
「復活ってアリなのかよ!」


本当に何が起こっているか誰もがわからないまま、アリスがエバーグリーンとの闘いを終えて、治療をしてあげたことで、エバーグリーンは復活となった。むしろ妖精の尻尾の一員ではないため、無効試合みたいなモノだった。

そしてこの後、義眼により石化が解けたエルザがエバーグリーンに勝利を収める。
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