ファンタジア2

妖精の尻尾のみんながどんな目的で戦闘してるかなんて、あたしには分からないけど、妖精さんと離れてしばらくしてから、次は空に雷の球みたいなのが数個現れた。



「あれは何なの?」
『んっと…、魔力が詰まってる。何に使うかわからないけど…』
「あ、当たったりしないの!?」
『当たりそうだったらあたしが守ってあげる』



ティアは結構恐がりなところがあるからあたしが守らないと。



「おー?あんたも魔道士だなぁ?」



いや、なんでこんなに今日は面倒ごとに巻き込まれるの。
目の前には舌をベロッと出したまま浮いている男の人。その周りには小さな人形が数体浮いている。
いやいや、マッドサイエンス的な雰囲気がさらし出てる、危険そう。



『何か用』
「ひゃー!つれないねえ?あんただろ?妖精の尻尾に新しく入ったコスプレ大好き魔道士ってのは」
『…え?いや、ちが(確かに今はロリータ系の格好だけど)』
「いくぜベイビー!」

『ちょ!人の話をっ!』



あたし何もしてないのに!
ベイビーと呼ばれている人形からビームが放たれる。それを避けながらどうやって逃げようか考えていると、足元にある術式に気がつく。



『は?何これ』
「この中で最後の1人になるまで戦闘しなければならない、フリードの魔法だなぁ!これで逃げる事はできないぜえ?」
『めんどくせー!!』



術式を解いて逃げたろかゴラァ。
でも解くにはこいつに待っててもらう必要があるけど、見境なく攻撃してくるし、あー!!もう!!!
ごめんだけど一瞬で終わりにする!



『ごめん!!天竜の雷霆!!!』
「んな!!?雷!?」



術式の中全部に放ち、避ける間も無く、確実に一発で仕留めさせてもらった。ごめんよ人形遣いの人。



「この俺が、一撃、でっ、くっ、!」
『ごめんなさい。てか先に勘違いしたあんたが悪いんだけど』
「、勘違い、だと?」
『あたし、妖精の尻尾の魔道士じゃないから』

「はあああ!!?」



傷が痛むのか、寝そべったまま驚きの声をあげた。いや、いきなり攻撃されたあたしの方が叫びたかったし。



「んだよ〜、俺ぁ、どことも知らねえ魔道士に、しかも女にやられたのかよ」
『女を舐めるなよ?』
「うちの魔道士にもおっかねー女いるから」
『てかあんたら何かしてるんでしょ?あたしは関わるつもりないから、そっとしといて』
「んなこと言っても、俺はもう戦えねーから終わりだ」



…もう、何かの罪悪感。さっきの妖精さんといい。
今日は絶対厄日だ。



『あー!もう!あたしのことは無かったことにしてね!』
「んぁ?」



妖精さんにした時と同じように、全部元どおりに戻す。
その様子を口をぽかんと開けて見ている人形遣い。ギルドに1人ぐらいいないかな?て思ったけど、そりゃ珍しいか、治癒の魔法なんて古代魔法なんだから。それにあたしは治癒するだけじゃない、元に戻すことまで出来る。



「おまえ、なんだ、」
『お強い魔道士アリスちゃんです』
「はっはっはっ!おもしれーなお前!!」
『もしまた見かけてもそっとしといてよね!』
「おーおー!こんなにしてもらっちゃあ、何も言えねーよ」



頭を掻きながら、ひゃっひゃっと笑った。ちょっと不気味だけどいい人そうだ。
人形遣いさんとさよならしてから、今回は大人しく建物の影に隠れていたティアに声をかけてご飯処を探す。



⚪︎



またまたギルド内では、エルザにより、石化が解けた女性側。
これで人質がいなくなり、バトルオブフェアリーテイルも終わりを迎えるかと思ったが、新しく雷殿を起動させたのだ。ラクサスとの通信が切れた直後、マスターが持病で倒れ、ミラが看病に。

そんな中、ギルドの入り口に再び術式が…


「わ!なにこれ!?」
「フリードの術式ね、でもこれって…」


−−− ビッグスロー vs ???


「な、なに!はてなって誰なのよー!」
「まさか、、またさっきのヤツか!?」


ナツとガジルはこれを目にするのは二度目なので、???に対しては突っ込まないが、まさかまた出てくるとは思わなかったのか、そっちに驚いている。
ルーシィ達女性陣は、???が誰なのか、顔を見合わさるが誰もわからず。
そして、エバーグリーンの時よりもはやく、その結果が浮かび上がった。


−−− 勝者 ???


「えええ!!?倒しちゃったよ!?」
「早くない!?」
「グアー!!だから誰なんだよ!!」
「まて、さっきと同じなら、、」


−−− ビッグスロー 復活


「もお!なに!?何が起こってるのー!」
「だろうと思ったぜ」


ガジルの予想通り、エバーグリーンの時と同じように、復活したビッグスロー。
パニックになるギルド内。そんなことも気にせずに当の本人、アリスは上機嫌で次の予定を考えていた。



⚪︎



うわ、また術式じゃん。
なんか空気薄くなってきてるし何。でもあたしは風を操れるわけで、空気を作れる。

この中にいる者は酸素を奪われる…?

いや、殺しにきてるじゃん。
引っ掛かったのあたしで良かったな、みんな。



「貴様か、先程から術式を解除している魔道士は」



…絶対厄日、誰が何と言おうとも厄日。
何でこうも絡まれるかなあ。



『そうですけどあたしは妖精の尻尾の魔道士ではありませんので、そっとしといて下さい』
「ほう?俺の術式を壊して、そっとしろ、と」



あ、これ怒ってるやつ。
なんて思った瞬間、術式で攻撃される。なんか文字が飛んできて、あたしに刻もうとするけどこれは避けたらいい。



『何なのー!』
「ラクサスの邪魔をする奴は誰であろうと許さない」
『邪魔なんてしないからほっといてよー!ティア!』
「はいなの!」



ティアに抱えられて飛んで逃げようとしたけど、いつの間にか術式に閉じ込められていたデジャブ。



「逃げることは許さん」
『しかもまた最後の1人になるまで!?』


て、ことは、、ティアも含まれてる?
仕方ない、さっきと同じで一瞬で、



「天竜の咆哮!」
「!?滅竜魔道士だと!?闇の文字、拒絶!!」
『ふあああ!?』



危ない危ない。
まさかカウンターされるなんて。返ってきた自分の魔法を同じ咆哮で相殺する。



「やはり、滅竜魔道士か」
『あれ?知ってるんだ』
「うちにもいるからな」



滅竜魔道士、妖精の尻尾の。
もしかして、ナツって人かな。会ってみたいな。



「闇の文字、」
『ちょ!待ってって!』



魔法を使って攻撃してこようとするので、慌てて止める。しかし、聞く耳持たずなのか、口を動かそうとしたので思わず時を止める。



『て、時間停止!』



もう、どうして本当に、わかってくれないのよ。
この人カウンターしてくるし、こうなったらカウンター出来ないぐらいの威力でぶつけてやる。トラウマになっても仕方ないよね、うん。

時間を止めている間に滅竜魔法で攻撃が当たる寸前にし、その瞬間、時を進める。



『氷雨!!』
「な!?」



これは、魔法を知っていない人からしたら本当に怖いと思う。
急に目の前に魔法が迫ってるんだから。攻撃してから時を動かすことも出来たけど、ちょっとトラウマ気味にさせてもらった。



「がっ!」
『ふー、スッキリ』



本日3人目。ボロボロになって横たわる人を見るのは。あたしが加害者だけど。



「くそっ、俺はまだ、やれるっ!」
『いや無理すんなよ。モロに当たって、それで動いたら一生動けないよ』
「っ、」



何で今日は妖精の尻尾の魔道士はみんな戦闘モードなのよ。

さて、この人が動かないうちに術式解いちゃおっか。ティアと闘うなんて嫌だもん。

組み込まれている術式に魔力を込める、複雑な形式だけど、こんなの、魔力次第だ。
少しして、上書きからの破壊完了。



『ふう、いこっか』
「アリスちゃん、あの人は治してあげないの、?」
『…はあ、もー!』



確かに理不尽に攻撃されたけど、この人だけ無視するわけにはいかないよね。
何度目かわからないため息をつき術式遣いも元に戻す。流石に3回目なので魔力がどっと減って少し疲れた。



「貴様、どうして」
『今日で3人目だよ、わけわかんない状況で妖精の尻尾の人に攻撃されて、それから戻したの』
「戻す?」
『あー、魔力とか傷とか服とか』
「珍しい魔法を使うんだな」
『そうかなあ』



さすがに治療してもらった相手には攻撃的ではないのか、さっきのイライラした態度とはちがう。
全部元に戻ると、術式遣いは立ち上がりお礼を言った。なんか、さっきの2人とは違って一般的なマナーはありそうだ。



『もう術式にはかからないようにするからさ、ほっといてくれないかな』
「…わかった、俺もここまでしてくれた相手に手は出さん」
『出さんじゃなくて出せないんでしょ?』
「…うるさい」



図星なのか、少しムッとした顔でそっぽを向いた。なんだ、可愛いとこもあるじゃん。



『じゃああたしは行くけど、あんま街の人巻き込まないようにしなよ』
「…わかっている」
「アリスちゃん!いこ!お腹すいたの!」
『はーい、じゃねー!』


「アリス、か」



アリスがさった後、ぽつりと彼女の名前を呟いた男の顔は優しげだった。



⚪︎



ビッグスロー復活を目にしたギルドに残っていたみんなは、バルコニーに出て外に浮かび上がった雷のラクリマ、雷殿を確認する。

そして、またまた、目の前に、


−−− フリード vs ???


「また!?ていうか、闘いになるの早くない!?」


ほんの数分前に、ビッグスローとの戦闘を終えたアリスが、次はフリードと戦闘を交えることになっていた。


「でも、さっきみたいにビッグスローをすぐ倒せたなら、フリードだって…!」
「たしかに!頼むよ、はてなってヤツ〜!」
「でもフリードは、雷神衆の中で一番強いって噂だよ…!」


レビィとカナが顔を合わせて期待をするが、ハッピーの言葉で、不安な雰囲気が漂う。
が、そんな雰囲気も、


−−− 勝者 ???


「だから早えんだよ!!!」
「な、何者なの、この人…!」
「でもこれで、術式が解除されるんじゃないでしょうか?」


そんなジュビアの淡い期待も、またまた…


−−− フリード 復活


「やっぱりかア!!」
「この人何がしたいのー!?」
「オレこいつと闘いてえ!!」
「まずはここから出ないといけないね」


案の定、復活をしたフリード。そんなわけで、術式は解けるはずもなく、振り出しに戻るのだ。
この後、レビィ以外のみんなが街に駆け出し、ルーシィがビッグスローを倒す。
そして残ったレビィが術式を解き、ナツとガジルも本格的に参戦することになる。



⚪︎



さすがに戦闘続きでお腹が空きすぎたから、近くのカフェの中に入ると、店員さんに声をかけられて椅子に座って注文した。



『ほんとにホットミルク好きだよねー』
「アリスちゃんだって紅茶好きなのー」
『あ?紅茶バカにすんなよ!』
「バカにしてないのー」



なんてご飯を食べ終え歩きながら、ほのぼのした会話をしている間に感じた。懐かしい、あたしの大好きな人の魔力がぐんぐん上がって、爆発した。



『…ミラ?』
「アリスちゃん?」
『ティア!いこ!!』



昔聞いた、ミラの大切な妹、リサーナのこと。あの悲劇があってからミラは戦うことを好まなくなった。リサーナを護れなかった自分を悔やんで、封じ込めた自分の魔力。そして、すれ違ったあたしたち…。

それが今、なんで、ミラの魔力が、、

妖精の尻尾には関わらない、でも一人の友人として、ミラのことが気になってしまう。
もしかしたらミラは、リサーナを救えなかったあたしに会いたくないかもしれないけど、、
ティアに抱えてもらいあたしが指し示す方へ飛んでもらう。マグノリア内でも少し街中から離れた橋がかかっているところ。

超スピードで飛んでもらったけど、着いた時にはミラは先程私が闘った術式遣いと戦闘を始めていた。
ティアにおろしてもらうと近くにいた3人の魔道士のうち、1人は見覚えがある。



『…エルフマン!ミラのあの姿、』
「…その声はアリスか!?いつもの漢姿じゃないだと!?」



あ、そっか、服も髪も違うんだった。てかいつも漢っぽくないし着物だし。
あたふたしているエルフマンにとりあえず理由を聞くと、術式遣いがミラの大切な弟のエルフマンに死滅を使おうとして、死という単語に反応し、ミラはあの日封じたサタンソウルが覚醒したそうだ。
本当に、家族思いのいい子だよ。
あのミラなら、術式遣い相手だと余裕で勝てるでしょ。



『それより、あんたらその怪我どうしたの』
「まあ、色々あってな」
『大丈夫?』
「漢だ!こんぐらい!〜っ!!」
『はーい無理しなーい』



片手で気絶したままの青髪の女の子を抱えたまま、逆の手で元気なことを表そうとしたのだが、本気で痛いのか声が出てなかった。
エルフマンから始まり、茶髪の雰囲気お姉さん、腕に抱かれている青髪の女の子の治癒も済ませる。
本当に今日は治癒と戻してばっかり、魔力の消耗が半端ない。



「おぉ!!さすがアリス!漢だ!!」
「どーみても女だろ!!えっと、ありがとう」
『どーいたしまして!』



ふふっと笑った瞬間、ミラの魔法が爆発した。あれは痛い、痛いってもんじゃないかも。
魔力が強すぎるのか、一瞬その場だけでなくマグノリア全体に強風が吹き荒れた。

落ちた術式遣いとそれを追うミラ。
その場に向かうあたしたちが目にしたのはサタンソウルを解き、術式遣いに優しく言葉をかけているミラ。
そんなミラの言葉が響いたのか、こんなことしたくなかったと泣きながら訴える術式遣いに笑って許すミラは本当に天使にしか見えない。

さて、



『ミーラっ!』
「……え、アリス?」
『お疲れ様!』



みんなと違い、ぎゅっとハグしながら治癒をしていく。あたしも癒されるし、ミラの傷も治るし最高じゃんこれ。



「アリス?どうしてここに!それに、その格好って」
『お祭りに来ちゃった!格好にはふれないで!痛いとこない?』
「ええ、ありがとう」



にこっと笑ったミラにこっちも自然と笑顔になる。
と、傍に居た術式遣いはさっき会ったあたしとの再会に目が点になっている。



「お前、さっきの」
『また怪我してるし〜、ほい』
「あらアリス、フリードと知り合いなの?」
『んー、まあね!』



傷の治療完了。2回目だし魔力と服はもういいでしょ、自業自得だ。



『パレード楽しみにしてるんだから、早くこの騒ぎ終わらせてよね!』
「ふふっ、もう直ぐ終わるわ、きっと」
『ミラが言うならきっとだね!それからね、』
「なあに?」

『誰かのために戦うミラ、すっごくかっこよかったよ』

「あ、アリス…、ありがとう」



泣きながら微笑むミラは太陽の光に涙が反射して、すごく輝いて見えた。
もしかしたら、あたしに会いたくなかったかも、顔も見たくなかったかもしれないとか思ったけど、こうやってミラの笑顔を見れた、それであたしは満足だ。
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