『ありがとうございます!』
「病院でよかったのか?」
『うん、話をしないといけない人がいるの』
「そうか。行ってこい」
もう一度お礼を言って車が見えなくなるまで手を振り続けた。
きっと剣城くんのことだから、優一さんに会いに来てると思う。それに、私自身も2人に話したいこともあるから。
それにしても、優一さんの手術費のことか…。
少し、相談してみようかな。
日が沈み始めているけど、面会時間はまだ大丈夫。
それに私の場合、特別に院長先生の許可をもらえば入ることができるし。
病院に入り、何回か通った優一さんの病室を目指す。
剣城くん、いるかな…
「美羽!」
『!!?』
自分を呼ぶ声と、背中にくる衝撃のせいで驚きから前に倒れそうになったけど、突進して来た人のおかげで倒れずにはすんだ。
いや、元凶は君なんだけどね。
『久しぶりだね、太陽くん』
「久しぶり!最近会えなくて寂しかったよ」
オレンジ色の髪の毛につり目の、私の大切な人。
雨宮太陽くん
後ろから抱きつかれたまま話していると、くるっと向きを変えられた。
相変わらず綺麗な顔立ちしてるよね〜
「もう夕方だよ?」
『面会時間ぎりぎりになっちゃったかなあ』
「何か用事があるのかい?」
『うん、お見舞いかな?』
そう言うと、太陽くんはほっぺたをぷくーと膨らませて明らか不機嫌な顔をした。
わかりやすくて可愛いなあ
「お見舞いって僕には会いに来てくれないのに」
『太陽くんには日を改めて行こうかなて思ってたんだよ〜。同じ学校の血縁者の人が入院してるんだよ、仲良くなったからね』
「ふーん」
不機嫌な顔してるけど可愛い。
くそう、顔立ちが良いってせこいなあ、
太陽くんの両頬をぐにっと摘んでひっぱってやると目を丸くした。
『太陽くん、ありがとう』
「え?」
『どんな時でもずっと味方でいてくれてすごく感謝してるよ』
「美羽…」
『だーかーらー!いつまでもそんな顔しないで!私は太陽くんの暖かい笑顔が大好きなんだから!』
「僕も美羽が好きだよ」
太陽くんは、そのまま私の額に唇をくっつけて幸せそうな笑顔でまたねと行って病室に戻って行った。
え、今、ちゅうされた?
『ぎゃあああ!!!』
大声で叫んだら近くにいた看護師さんに怒られちゃった。
太陽くんのせいなのに。
大声出したのは私だけど。
おっといけない、このままだと本当に面会時間過ぎちゃうから早くしないと。
早歩きで優一さんの病室前まで行くと、中から剣城くんと優一さんの話し声が聞こえてきた。
よかった、仲直りできたんだ。
今日は邪魔にならないように帰ろう。
「美羽ちゃん、入ってこないの?」
『ふぉお!!ゆ、優一さんいつから気付いて、』
「髪の毛見えてたよ」
心臓がばくばく音を立てている。
まさかバレているなんて思わなかったから。
優一さんの許可も貰ったので、少し開いていた扉を開けて中に入った。
『えっと、こんばんは?』
「こんばんは」
ああ、よかった。
剣城くんと揉めていた時の怖い優一さんはいない。いつも通りの笑顔が素敵なセクシーなお兄様です。
「ほら、京介、ちゃんと伝えないと」
『剣城くん?』
何を誰に伝えることがあるのかな?
剣城くんの方を見ると下に向けていた視線がこっちに移った。
ああ、私、伝えることがあったんだ。
『剣城くん、お疲れ様。今まで大変だったね』
「っ!…ああ。俺も、その…、ありがとう」
『へ、』
「お前のおかげで試合に間に合った。兄さんとも向き合うことができた」
『え!いや、私はただ、自分がそうしたかったからで、感謝されることなんて…!』
両手で全否定をする。
私は自分がしたいことをしただけだ。剣城くんに感謝の言葉をもらうつもりなんてないのに、
手をぶんぶん振っていたら、剣城くんに掴まれた。
「ありがとう。やっと俺と兄さんのサッカーができた」
『あ…、___っ!剣城くん大好き!!』
「!?」
「あ、京介ずるいなあ」
身体中の血液が熱くなるのを感じた瞬間に、私の体は剣城くんに飛びついていた。
驚いていたけど、振り払おうとしなくて、されるがままになっている剣城くんに甘えることにしよう。
こんなこと、普段はできないんだから。
…あれ、私、剣城くんに、好きだって、
や っ て し ま っ た !
顔が真っ赤になるのを感じていると、優一さんと目が合い、彼は私にウインクをした。なんて器用に。ウインクもできるなんてポイントアップですね、じゃなくて。
ああ、私の人生終わった。
『ごめんなさあああい!!!』
「は、おい!!………!」
優一さんにも話があったけど、剣城くんから超スピードで距離を取りそのまま全力疾走で来た道を帰った。
最後に剣城くんが何か言っていたが、何と言ったかはわからなかった。