今日は登校拒否を決めていたのに、玲央くんに無理やり連れてこられた。
まあ、剣城くんはいつも教室にいなかったから、その分気は楽かな。
葵ちゃんに休むと連絡をしていたので、一人重い足取りで学校へ行く。
こんな時って学校に着くの早く感じるんだよね、
ガヤガヤ話し声が聞こえる自分の教室に着き、扉を開ける。
近くの席の人に挨拶をして、自分の席に向かおうと目線を移動させると、バチりと目があった。
え、剣城くん教室にいる?
え、なんで、?
ただここで無視をするのは礼儀が悪いので、
『お、おはよう』
「…よう」
気まずい。
なんで最近剣城くんと気まずくなることが多いの、
私のせいか。
頭を軽く下げて席の横を通り、自分の席に座る。
座った瞬間女子達が集まってきた。
なにごと!?
「美羽ちゃん知り合いだったの!?」
「どうして剣城京介くんが教室に!?」
「挨拶してるし二人どういう関係!?」
「剣城くんって意外に優しいの!?」
「試合見たけどかっこよかったよね!!」
す、すごい迫力。
全部聞き取れた私はもっとすごい。
ああ、いろんな人に剣城くんのかっこいいところしられちゃったなあ。
彼女でもないのにヤキモチ妬いてる私って…
曖昧な告白だってしちゃったし。
だめだめじゃん。
みんなにはサッカーで知り合った、特にこれといった関係ではないと伝えて何とか引いてもらった。
帝国との試合を見た女の子達は剣城くんの魅力に気付いて、数人は惚れただろう。
嬉しいような、そうじゃないような、
憂鬱だ。
昼休憩、葵ちゃんには一応休憩時間に学校に来た、と連絡したけど、来てくれるかな?
いつもは私の教室で食べてるわけだから、入れ違いにならないように待ってみよう。
「剣城ー!」
「一緒に食べよう!」
松風くんと西園くんはいつみても元気だなあ。
どうやら剣城くんへのお昼のお誘いらしい。
ああ、羨ましいなあ。
「美羽!大丈夫なの!?」
『へ?』
「学校休むつもりだったんでしょ!?」
『あー、大丈夫だよ〜』
松風くん達と一緒に葵ちゃんは来たっぽい。
後ろから二人を押しのけて、私の席に来てくれた。
休むて言ったから、体調不良と勘違いさせたみたい。
大丈夫と言っても、信じていないのかチラチラ顔色を伺ってくれる葵ちゃんは可愛い。
葵ちゃんの声が聞こえていたのか、みんな来てくれた。
松風くんと西園くん、それと少し後ろに剣城くんも。
「美羽大丈夫!?」
「学校来て平気なの?」
『へいきへいき〜、五月病的な?』
「まだ五月じゃないけどね」
えへへ〜と笑っていたら剣城くんが目の前に来た。
いや、びっくり。ほんと。その美顔が目の前に来て、私の心臓は破裂寸前。
「無理するなよ」
『剣城くん…(きゅん)』
「(うわぁ、またハート飛んでる)」
「(え、美羽ってもしかして…)」
「(わかりやすいね!)」
三人が何かぼそぼそ話しているのが気になるけど、剣城くんの優しさが私のハートを射抜いてもはや痛い。
三人以外の他の女子達の視線もちくちくして痛いけど、一番痛いのは心臓だ。
破裂しないかな、
「はい、ご飯食べよう!時間なくなっちゃうからね!」
「うわ!ほんとだ!早く食べよう!」
葵ちゃんは定位置である前の人の席の椅子を借りる。
松風くん達は屋上でも行くのかなあ?て思っていたのに、みんな近くの椅子を持って来てご飯を取り出す。
『え、みんなここで食べるの?』
「え、ダメかな?」
『いや!全然!むしろカモーン!』
「何言ってるのよ、」
剣城くんとお昼食べれる!
食事の作法に気をつけて食べないと、緊張しちゃうなあ。
私は手作り弁当。
中学生で自分で作ってるのってすごいと思う。自画自賛しちゃうわ。
葵ちゃん、松風くん、西園くんはお母さんに作ってもらったお弁当。
「あれ、剣城お昼は?」
「あ?あるぞ?」
そう言って袋の中から取り出したのは誰もが目にした事があるコンビニ弁当。
『え!?コンビニ弁当!?』
「毎日これなの!?」
「あ、ああ…」
「体に悪いよ!」
「ちゃんとお弁当作ってもらいなよ!」
す、すごい。
みんなにお昼を批判されている剣城くんってなんだか可愛いかも。
ぐいぐい迫られて目を見開いてる剣城くんも可愛い。
「でもサッカーやってるんだし、ちゃんと栄養取らないと。はいサービスにポテトあげる」
「俺もお肉!」
「僕はトマト!」
『じゃあ私も卵焼きあげるね』
剣城くんのコンビニ弁当に色とりどりの私たちのおかずが飾られる。
まだご飯食べる前でよかった。私のお箸と間接キッスとかさせられないわ、
わずか数秒の出来事に目を丸くしてた剣城くんは、黙って食べだした。
私たちも続いてご飯にする。
「大勢で食べると美味しいねー!」
「ほんとほんと!」
「いつも私と美羽は教室で食べてるから明日からみんなで食べる?」
「いいの!?」
『うん、いいよ〜』
キラキラした目で見つめられて笑顔で頷く。
ほんと、子犬みたいで可愛い。
その時、剣城くんが私の卵焼きを食べたところを葵ちゃんはバッチリ見ていた。
「美味しい?」
「うまいな」
「それ美羽の手作りなんだよ?」
「あいつの?」
あれ、なんか名前呼ばれた?
松風くんと話しに夢中になっていたので気付かなかったけど、名前には反応するのが人間で。
「剣城が美羽の卵焼き美味しいって!毎日お弁当作ってほしいみたいよ!」
『え?』
「は?」
私の卵焼きが美味しい?
それは素直に嬉しい事だけど、その後に葵ちゃんが言った事が頭に響いている。
お弁当?私の?
「いや、俺はそこまで、」
『いいの?』
「ん?」
『私、剣城くんにお弁当作っていいの!?作る!作る!作りたい!!』
「は、おい、俺はべつに、」
「いいじゃん剣城!美羽の料理は本当に美味しいからコンビニ弁当より栄養も取れるし!」
「それはあいつに悪いだろ」
「断る方が悪いと思うわよ」
葵にそう言われ、美羽に視線を移した剣城は溜め息をついた。
確かに、普段の美羽とは考えられないくらい目が輝いていて、周りに花が咲いている。
これを断れば一瞬にしてどん底に叩き落とされた気分になるのは、誰が見ても分かる事だった。
「ね?」
「…ああ」
先ほどより深い溜め息をついて、呆れたように微笑んでいた剣城に美羽は気付かなかった。