転校生が来た。らしい。
私は剣城くんと同じクラスなのでわからないけど、葵ちゃんのクラスに男の子が転校してきて、なんとサッカー部に入部希望とのことだと。
2限終わりの休憩時間に葵ちゃんが来て私に転校生の情報を伝えるだけ伝えて、教室に帰ってしまった。
嵐のような人だった、と葵ちゃんが出ていった方に向けていた視線をそのまま剣城くんに向けると、なんと向こうもこちらを見ていて、バチッと視線が交わった。
無視はいけない。自然と笑顔になるのを抑えきれず、席を立ち剣城くんの近くに行き、前の人の席に座らせてもらう。
『転校生だって』
「…らしいな」
葵ちゃんがなかなか大きな声で話していたため、さっきの事は剣城くんの耳にも入っていたのだろう。
『わざわざ雷門に入部するってことはサッカー上手なのかな?』
「さあな、まあこの時期ってのも珍しいな」
『ほんとだね〜、どんな人なんだろ』
葵ちゃんからは、DFということしか聞いていないため、容姿や中身は全く情報がない。
まあ円堂さん曰く、サッカーをしている人に悪い人はいないって言うし、心配はいらないか。
もし剣城くんに危害を加えるなら、私が許さないけど。
「…なんか危ないこと考えてないか」
『うえぇ!?何で!?』
「いや、なんか企んでる(悪い)顔してたから」
『えええ!!』
思わず自分の顔をペタペタ触るけど、そんなのでわかるはずもない。
『私トイレ!』
「は?」
いや何言ってるの私。
鏡見て自分の顔を確認したい、と言う意味だったのに。なかなか恥ずかしいことを普通に口に出してしまった。
恥ずかしさから逃れるように、走ってトイレに向かった。
スピードを落とすことなくトイレに着く寸前の曲がり角でトイレから戻って来たであろう(もしくは手洗いか私と同じく鏡チェック)人とぶつかってしまった。
「、〜っ、てぇ」
『うわわ!ものすごくごめんなさい!超ダッシュしてました!』
「は?…、いや、こっちこそ前見てなかったしお互い様だよ」
にこにこにこにこ。
何だろう。すごく違和感がある。凝視してしまうぐらいに。
ぶつかった直後と、今の態度があからさまに違うように感じたのは気のせいではないはず。
「大丈夫?」と手を差し伸べてくれる優しい人なんだろうけど、私には彼の後ろに闇が見える。
お前がぶつかったせいで俺まで巻き込まれて転んだし。
てオーラが見えるんだけど。
「…大丈夫?」
『あ、え、と、ごめんなさいありがと』
伸ばしてくれた手を取ろうと近付けると、バチっと静電気が。
なんてタイミングが悪いことだ。私のせいでまた彼が軽くても痛い目を見せてしまったごめんなさい。
「ごめん、静電気持ってたかも、」
ごめんなさいいい!!
絶対私ですそれ。それから彼の後ろの闇が更に濃くなってるのに、口から出る言葉は優しいから鳥肌が止まらない。
『間違いなく私のせいですごめんなさい』
「そ、そうなの?」
『そうです。それからその態度やめてください寒気がします』
「…え?」
おっと思わず口が滑って本当のことを言ってしまった。
彼も言われると思ってなかったのか、上手く隠せていると思っていたのか、口がぽかんと開いて間抜けな顔になっている。
残念他の人は騙せても昔から人に敏感な私は騙せないよ。人の裏表なんて簡単に見抜けるようになってしまった自分も、少し悲しく感じるけど。
ていうか、この人見たことないけどもしかして、
『君、転校生?』
「う、ん。そうだけど、」
『あ!やっぱり!じゃあサッカー部に入る狩屋マサキくんって君のことね』
「どうして俺の名前、」
『あ、君と同じクラスのサッカー部のマネージャーの子が、転校生がサッカー部に入るって嬉しそうに話しに来たから』
「(ボソッ 勝手に人のこと話すなよ…。もしかして君もサッカー部?」
『んーん、私は帰宅部だよ!』
「それ部活じゃねえ、」
『ん?』
「いや、何もないよ」
にこにこにこにこ。
だから怪しすぎる逆に。それに一瞬見せた悪い顔も言葉も丸聞こえ。
ここまで演技されると暴きたくなるのが私である。
狩屋マサキくんのほっぺたを急に掴みぐにーんと引っ張る。ソコソコの力で。
「っ!いってええ!!」
『あれ、呆気ない』
痛いよ、とか言うのかな、と思ったけどやっぱり痛さには敵わないか。
私の手を乱暴に払い自分のほっぺをそっと抑える。
「お前あり得ねえ!人にぶつかるは静電気持ってるはいきなり暴力振るうは!」
『暴力じゃないよスキンシップだよ』
「どこがだよ!!」
何とこれが本性。
無理やり引きずり出したけど、こっちの方が楽しそう。
「人の態度に寒気がするやの、こんな女初めて見た」
『私もここまで良い人ぶる人初め、て…!』
ズキン
「美羽ちゃんは良い子だね」
「私たちがいるから大丈夫だよ」
「これはいい実験材料になる」
「人の子じゃないなんて、高値で売れるだろう」
「…い、…お、い、おい!」
『!あ、ごめん、』
「なんだよ、調子狂うな」
嫌なことを思い出した。あれはもう大丈夫。過去だ過去、終わったことだ。
『あ、自己紹介してなかった。私は日向美羽、隣のクラスだよ、よろしくね』
「狩屋マサキ、一応よろしく」
『よろしくしてくれるんだ〜』
ニヤニヤ顔で彼の方を見ると顔を真っ赤にしてわたしのほっぺを引っ張った。
『何するの』
「さっきの仕返し」
されっぱなしは性に合わないタイプか。私と同じだわ。
てことで、
「いっ!」
『私をからかうなんて二年早いわ』
「っ〜、あんた電気でも持ってんの」
『静電気集めやすい体質なのかもね』
個人的にこの人、からかいやすいから好きだわ。根っからは悪い人じゃなさそうだし。
て、やばいこんなことしてる暇ない。さっき本鈴なってたから先生来るまでに教室に戻らなきゃ。
『じゃあ私教室戻るね!またねマサキくん!』
「!人で遊ぶなよ、美羽!」
一年生で大切なお友達が増えた気がします。