なんとか明日までの課題を終わらせることができた。パワポって難しいなあ、機械音痴じゃなかったら授業中に終わらせることができたのに、と内心で愚痴りながら情報処理室を出てローファーに履き替え校舎を出る。
まだこの時間なら練習も始めたばかりだろうし、練習を見ながら帰れる、とゆっくりした足取りで正門に向かう途中、いつもはぶつからない、いくつもの視線と合う。
一年ズと玲央くん、それに私が最近サッカーを教えていた輝くん。
輝くんがいることに思わず驚いて足を止めてしまった。その本人は私を見つけると嬉しそうにこっちに走ってきた。
『え…?輝くん、どうして、ここに』
「美羽ちゃんのおかげで入部できたよ!さっきシュートも決めれたし、本当にありがとう!」
『う、うん、え?あれ?』
輝くんがここにいて、いつも感じないみんなの視線、そして玲央くんがいることで違和感を感じる。
なぜこんなに見られているのか、視線の正体は悟ることはすぐにできた。
「美羽!!」
『な!?』
一人で納得していると玲央くんに呼ばれ同時に、彼が蹴り飛んできたサッカーボール。体は覚えていたのか、反射的に輝くんの前に出て、威力のあるボールをダイレクトに蹴り返してしまった。
「お前やっぱり、まだサッカーしてたんだな!」
『〜!ばかばかばか!!』
「ははは、照れんなって。関わらないとか言って体は正直だなあ」
『うるさいシスコン!』
思わず蹴り返してしまってから、玲央くんに揶揄われるが、キッと睨みをきかせながら暴言ばかりを吐いてしまう。
それから、私の元に近付き頭を撫でようとした瞬間、玲央くんの後ろについてくるように歩く一年生ズが見えたため、玲央くんをスルーして剣城くんの元へ一直線に向かう。
私の頭を撫でようとした玲央くんの手は行き場を失ったかのように浮いたままだったそうだ。
『剣城くん!お疲れさま!』
「あ、ああ。それよりお前「美羽!俺たちとサッカーしよう!!」…」
剣城くんの言葉を遮るように、松風くんが声を被せてきた。
サッカーが大好きな松風くんなら言うと思っていた。真っ直ぐな瞳に揺らぐが、それよりも大事な約束を思い出し、首を左右に振った。
『ごめんね、私サッカーできないの』
「できないって、どうして、」
『……そうだ』
パッと頭に浮かんだことを胸に、松風くんに向き直る。
『私とサッカー、本気でしたいの?』
「もちろん!俺だけじゃない、ここにいるみんながしたいと思ってるさ!」
周りをちらりと見渡すと、あの狩屋でさえ真剣な表情で見ている。輝くんはブンブン上下に顔を動かしている。
それに少しだけ嬉しく感じ自然と笑顔になり、真っ直ぐな瞳で私を見る松風くんに告げた。
『それなら、ホーリーロードを勝ち抜いて』
「え?」
『私はこのホーリーロードで雷門が優勝したら、みんなとサッカーするよ』
「ほんとに!?」
『うん、約束』
ふわりと微笑み小指を松風くんの目の前に突き出す。松風くんは嬉しそうに笑い、それに応えるように自分も小指を絡めた。
松風くんの背中を押すことで、修也くんのやりたいことを助けになるかもしれない。
さて、放心状態の玲央くんが元に戻る前に帰るとしようかな。
あ、その前に
『みんなにあげる』
常に持ち歩いてる物を鞄から取り出して一つずつ配る。
「チョコ?」
『うん、すきなんだ〜』
マサキくんは甘いものが大好きらしく、あげたらも一個!と言われたので特別追加であげた。
そして剣城くんにはいつもお世話になっているので先ほど買ったスポーツドリンクも渡した。
「おい、美羽」
『何ですか玲央くん』
「何で剣城に買って俺にはねえんだよ」
『うーん、愛情の差?』
「は?おまえ、まさか」
やばいやばい、本気で答えてしまった。
剣城くんは理解できてないのか首を傾げながら成り行きを見守っている。か、かっこいい。
そんな私に気付いた玲央くんは雷が落ちたかのように明らか誰が見てもわかるぐらいショックを受けていた。
「剣城てめ〜!」
『ちょ、剣城くんに何かしたら許さないからね!じゃあまたねみんな!練習がんばって!』
捨て台詞を残して私も一つチョコを口の中に入れ、自慢の足でダッシュして家に帰った。