確かに私は距離を埋めたいとは言ったよ。
言ったけどさ別に試合を見に行きたいなんて、一言も言ってないからね。いや、剣城くんに会えるなら光栄だけど。
葵ちゃんのせいだ。私がぼっちで誰もいないところを歩いてるのは。
遠回しに言ったけど、簡単に言えば、
『迷った』
迷うなんてありえない。それに人がいないって事は、もうすぐ試合が始まるだろうし…。
葵ちゃんには悪いけど来た道を帰って、試合観戦は諦めようかな。
はぁ、とため息をついて角を曲がったところで、同じように曲がってきた人とぶつかった。
『ごめんなさい!大丈夫です…、か、…って、剣城くんんん!?』
「あ?誰だ」
『お、同じクラスの日向美羽、デス』
どどど、どうしよう!!
こんな運命的な出会いをするなんて、漫画でしかないと思ってた。
私が名乗っても興味なさそうに「ふーん」とだけ言って、おそらくスタジアムに行こうとした。
『待って!』
「何だよ」
『あの、観客席までの道を教えて、くれないかなー、なんて』
「…迷ったのか」
『うっ、違うの!いや違わないけど、違うの!』
「どっちなんだ」
『広いのがいけないと思います』
は、恥ずかしい。
こんなところで迷うなんて…、でも剣城くんと話すことができたから、結果オーライってことかな。
「そこ真っ直ぐ行って右に曲がればわかるはずだ」
『!あ、ありがとう!』
いつもは無関心で無口で、みんなに恐れられている剣城くんだからすごく優しくて、新鮮な感じがした。もちろんどんな剣城くんも素敵だけど。
剣城くんに教えてもらった通りに進むと、人がたくさんいて、そこから観客席までの道は簡単にわかった。
そして試合中私は相変わらず、ベンチにいる剣城くんばかり見てました。
だから結果は試合終了の時にわかったし、誰が活躍したとか全然わからなかった。
それから家に帰ってすぐに玲央くんに、今日の試合はどうだったか聞かれた。
『え、ごめん見てない』
「は?来てたじゃねえか」
『行ったのは行ったけど見てなかった』
「どういう事だよ…。せっかく変わったってのに」
『何が?』
「…おまえが、絶望したって言ったサッカーだよ」
へえ、そうなんだ。
あのサッカーが変わったんだ。それはなによりです。今の私はサッカーより剣城くんですから。
明日は葵ちゃんに今日の運命的な出来事を教えよう。