泣き虫少女と韓国組

『えっと、あ、の…』


切実に助けてやりたい。
そう思ったのは俺以外にもいるはずだ。現に飛び出して行きそうな人が数名いる。


「実際に見たら目が潰れてしまいそうだよ」

「お前に会いたかったんだぜ?」

「私の天使だ」


韓国ェ…。

三人に囲まれている真雪は今にも泣き出しそうだけど、その表情を見てもっと迫っていくこいつら。


「ああ、本当に可愛いよ、女神だ」

「俺今すっげぇ幸せだ」

「これは連絡先だ。いつでもしてくればいい」


口説くな。

何でこんな事になったんだ…。



___時間は数分前に遡る

ギリギリ時間に間に合った俺たちは円陣を組んで気合いを入れていた。その時真雪は控え室に忘れてきた帽子を取りに行っていた。
そして韓国のユニフォームを着たのは、俺たちがかつて仲間で戦った相手のアフロディに、バーンこと南雲、ガゼルこと涼野がそこにはいた。

軽い挨拶をして自分たちのベンチに戻ろうとした時帽子を被った真雪が走ってきた。そんなにフラフラで走ったら転ける…、た。
みんなの視線が転けた真雪に向いたので駆け寄ろうとする前に三人が動いていた。
こいつら抜け目ない。


「大丈夫かい?」

『っふぇ、だ、だいじょーぶでしゅ…』


あ、噛んだ。
真っ赤になっていく真雪をそろそろ返してもらおうかと思い、進もうとしたところで止まった。


「白露真雪…」

『?はい…?』


涼野が真雪のフルネームを言うと帽子と伊達メガネをとった。

おい何するんだ。


『あっ…』

「君に会えるなんて光栄だな」


涼野を押しのけて真雪の手を取りそこにキスしたアフロディ。真雪は頭から湯気が出るんじゃないかってぐらいに赤く…、ん?キス…!?
ここでイナズマジャパンの数人が動いたけど音無と木野に止められた。


「何で止めるんだ」

「面白そうじゃない!」

「だが真雪が…」

「お兄ちゃんも黙って見てて!」


鬼道までもが止められて俺たちは動けない状態。


そして冒頭に戻る。

そうだ、円堂だ。こういう時にお得意の鈍感で真雪を連れてきてもらおう。


「えん、ど…」


監督と話し終えた円堂はあまりの衝撃に固まっていた。何の話をしたんだ…。目が点になっているし話しかけても返事なんてくるわけがない。
スタメンが発表されるまでまだ時間はある=真雪の身が危険。


「…………」

「風丸先輩?顔怖いですよ」


そうしたのは音無たちだろう。


「アフロディ、涼野、南雲。戻りますよ」


よし。チェ・チャンスウよくやった。
お前は最高だよ。


「もうそんな時間かい?」

「仕方ねえな」

「後少しで…」


後少しで何なんだ。
チェ・チャンスウに感謝しながら去って行く三人を睨みつけた。

ホッと息を吐いている真雪のとこに行くと帽子を被りなおしていた。


『あ、いっくん』

「真雪、何もされてないか?」

『はい、大丈夫ですよ?みなさん最初は怖かったけど話してみるとすごく優しい人たちでした』


あいつらは羊の皮を被った狼だからな、なんて言えないのでよかったな、と言うと嬉しそうに微笑んだ。
涼野の気持ちがわかる。天使だ。



守くんがベンチからのスタートとなってキャプテンマークは鬼道さんがつけている。

ベンチに座っている守くんは久遠監督に言われた事を必死に考えている。


「キャプテン失格…」

『守くん…(早く気付いてください)』


五分五分の試合だったけど吹雪さんの活躍によって守りが強くなって、そして土方さんとの連携によって一点を取った。先制点はイナズマジャパン。
でも相手は悔やむどころか笑っていた。

チェ・チャンスウさんのボールを吹雪さんが奪う。そしてそのボールを綱海さんに渡った時にそれは起こった。
二人の選手が綱海さんを、三人の選手が吹雪さんを包囲して動けない状況を作った。タックルをしてみるが堅くて突破できそうにない。

そして二人がとった手段は同じ所目掛けてボールを奪う。
でも、それは相手の思うつぼとなり二人は激突した。


『二人とも足が悪化するかもしれません。今すぐ交代を』


これが、韓国の必殺タクティクス、パーフェクトゾーンプレス。

二人をベンチに連れてきてアイシングをする。


「二人とも、大丈夫か?」

「なぁに、どおって事ねえよ」

「迷惑かけてごめん」


監督が交代すると言うと二人は反論した。


「僕たちまだやれます!っ、」

『ダメですよ!足を壊したらサッカーできなくなりますよ!』

「俺はできる!」

『確かに吹雪さんよりは症状が軽いです。けど、このまま続けてしまうと筋肉が炎症を起こしてしますよ。現に足に力が入らないんじゃないですか?』

「綱海、真雪の言うことは聞いとくべきだぜ!」


守くんが一押ししてくれたおかげでしぶしぶ納得してくれた。
吹雪さんに医務室で休むように言ってみるけど首を左右に振ってフィールドをジッと見つめ「最後までこの試合見届けたいんだ」と言った。

選手交代してからもパーフェクトゾーンプレスが繰り出されて思うように動けない。けど、この必殺タクティクスには大きな欠点がある。それが久遠さんがみなさんにやらせた泥のフィールドでの特訓。
鬼道さんがその事に気付いてみなさんに告げた。

鬼道さんと宇都宮くんが包囲されて練習の成果が出た。
空中でパスを繋いでいく、目金さんがつけた名前、ルートオブスカイでボールは相手ゴールの前まで。
基山さんがシュートを打つけど惜しくも止められてしまった。

一進一退の攻防で宇都宮くんにボールが渡り豪炎寺さんとの連携シュートを打ったけど、ゴールから大きくそれた。

一瞬、豪炎寺さんの蹴る力が弱くなった。
それはみなさんには分からないけど私にはハッキリ分かった。

前半終了直前、アフロディさんの新必殺技で点を許してしまった。
逆転されて前半が終了した。


「緑川、鬼道、お前たちはさがれ」

「そんな!」

「緑川、ムリをしすぎたようだな。足にきてるぞ、自分が一番わかっているはずだ」

「…はい」


あんなに練習を頑張っていた緑川さんだけど、それが足にきてしまった。でも前半すごく頑張っていたと思う。


「鬼道、お前はその膝だ。土方とぶつかった時痛めただろう」

「気付いてましたか…」

「下手に庇うように動いては悪化させるだけだ」

「わかりました」

「不動、お前が出ろ」


久遠監督が言った事はみなさんが呆気にとられた。不動さん自身も。


「待ってください、不動はまだチームにとけ込んでいません!世界進出のかかったこの大事な試合で何故不動を、」

「敵は不動を知らない。不動はジョーカーだ」

「そうか。今まで試合に出ていない不動はきっと韓国にはデータがない」

「上手くいけば流れをこっちに戻せるかもしれない」

「いい事言うねえ、キャプテン」


守くんの肩に手をおして鬼道さんを嘲笑うかのようにしてからフィールドに入った。


「強い者は弱い者を食らって生きる。それが自然界の掟だ」


な、なんかカッコイイです…!

あ、今はそれどころじゃない。
これで十人メンバーが決まり、あと一人はなし。守くんがまだ気付いていないから。


後半が開始された。

のは、いいんだけど…


「何でヒロトにまわさなかった?何故パスしない!」

「うるせえなぁ。どうしようと俺の勝手だ」

「何だと!」


チームの状態は最悪の出だしと言ったところ。
不動さんは一人で突っ走っていた。味方にぶつけるようなパスを出しながら。


「どうしてあいつは…」

「強い思いを持った者は強くなる。例えそれが正しき方向でなかろうとな」

「響監督…」

「鬼道、おまえは俺に聞いた。何故不動をスカウトしたのか」

「はい」

「あいつが異常なまでに力を得ようとするには理由がある」


それから聞かされたのは不動さんの過去。
お父さんが上司の失敗を背負わされて会社を辞めさされて、借金取りに追われる毎日でお母さんが言った事を不動さんは歪んだ形で受け入れた。結果、力が全てとなった。
影山さんに取り入ろうとした不動さんは失敗に終わったけど、響さんは不動さんのサッカープレイヤーとしての才能を感じた。
だから日本代表に選んだ。


「…ありがとうございます。少しアイツが分かってきました。ですが、それとこれとは別です。あんなプレーをする不動を受け入れることはできません」

「もちろんそれはお前たち次第だ」


こうして話している間にも不動さんは一人でプレーをしている。
このままじゃ、


「このままでは日本は間違いなく負ける。どうする、円堂」

「……っ、わかりません。俺にはこの試合をどう戦ったらいいのか」

『試合を見ていても答えは出ませんよ。チームを見ないと』

「チーム?」


少しヒントを与えすぎたかな?
時間は迫ってきていますよ、守くん。