泣き虫少女と豪炎寺
パーフェクトゾーンプレスの餌食になっても不動さんは誰にもパスをせずにボールを奪われた。けどいっくんがスライディングで外に出した。
またまた不動さんにボールが渡り、五人に囲まれた時初めていっくんにパスをした。
いっくんはそのパスをとることができなかった。普段のいっくんならとれるパスを。
壁山くんも、基山くんも。
「何故とれない、何やってんだバカどもが!」
「今のはとれるわけないっす」
「なんだと」
「イナズマジャパンはお前だけのチームじゃない!」
チーム関係が最悪の中、守くんが何かに気付いた。
「敵の動きも、味方の動きも分かったうえであんなパスを…。でも、みんなが不動を信用しないせいでいつものプレーができないんだ」
少しずつ、久遠監督の言いたい事に気付いてきている守くん。
この調子なら気付くのもそう遠くはない。
飛鷹さん、豪炎寺さん、それにチームの事。
フィールド全体を見渡し自分の頬をパチッと叩いた守くんは、グローブを見て決心したように立ち上がり久遠監督の元まで行った。
「俺は世界と戦うために自分を鍛えることばかり考えていました。そのせいで大事な事を忘れていたんですね。みんなを、チームを見るって事を!」
「わかったのか、円堂。自分のやるべき事が」
「はい!監督!俺、キャプテンなんですね。あいつらの」
「なら行ってこい円堂。あいつらを世界の舞台へ連れて行ってやれ、お前の力でな」
「はい!」
この試合で鬼道さんから預かっていたキャプテンマークを守くんに渡す。
それを腕に付けたのを見てから背中を押した。
『このチームのキャプテンは守くんです。みなさんを一つにできるのも守くんですよ』
「ああ!行ってくる!」
立向居くんと交代でフィールドに入った守くん。
そして、もう一人。
『久遠監督、鬼道さんの足はもう大丈夫です』
「よし、鬼道。お前の答えもプレーで見せてみろ」
「はい!」
これで後は守くんと鬼道さんに任せましょうか。
守くんはみなさんに何かを訴えているけど、きっと不動さんの事で間違いない。
不動さんがいっくんにパスを出すが届かなかったけど、鬼道さんにパスをすると届いた。
それから壁山くん、いっくんもパスに届いて試合の流れがよくなった。
それを阻止するためにチェ・チャンスウさんがマークについた。完璧なディフェンスだけど不動さんも諦めない。
「不動!」
鬼道さんが不動さんの近くに行き、まさかの連携必殺技で華麗にぬいた。
この二人が連携することに秋さんですら驚いていた。
ゴール前まで持ち込んだボールをバックパスでいっくんと壁山くんに渡った。そのボールはゴールに入った。
「名付けて、竜巻落とし!」
「今の、綱海さんが壁山くんと練習してた技じゃ…」
「関係ねえってそんなの!ほんとによく決めてくれたぜ!」
この一点は大きい。
不動さんがチームにとけ込んで最初の一点。
これで問題は飛鷹さんと豪炎寺さん。
アフロディさんの必殺技を守くんが止めたけど、アフロディさんと南雲さんと涼野さんの新必殺技、カオスブレイクで守くんの正義の鉄拳が破られた。
イナズマジャパンからのキックオフでボールは飛鷹さんに渡った。でもそれはとられてしまい南雲さんがシュートを打つが壁山くんが必殺技で止めた。
カオスブレイクを打とうとしたボールを一郎太くんが空中で阻止した。
そのボールを飛鷹さんにパスをしたけどミスをしてしまい、相手のコーナーキックになってしまった。
「何を怖がっているんだ飛鷹」
「え…、そんな事は、」
「いいか飛鷹、失敗したってかっこわるくなんかない。もっとかっこわるいのは失敗を恐れて全力のプレーをしていない今のお前だ!」
「キャプテン…」
「思いっきりプレーしてみろ。失敗したっていいじゃないか」
「失敗したっていい…」
「ああ!今のお前を全部プレーにぶつけてみろよ!」
「…わかったよキャプテン。やってやる!」
守くんの言葉が飛鷹さんを変えた。
飛鷹さんがボールをカットして基山さんのパワーアップした流星ブレードV2が炸裂し三対三になった。
残り時間も少ないけどこの調子ならいける。
ホイッスルが鳴ってすぐにカオスブレイクの三人組がゴール前まできてカオスブレイクを打った。
正義の鉄拳じゃ止めることはできないけどそれを進化させて拳を地面に叩き付けるような必殺技。
「怒りの鉄槌!」
形勢逆転。
豪炎寺さんと宇都宮くんが切り込んで、タイガーストームを打つけど惜しくも失敗に終わった。
その後も失敗…
「豪炎寺!お前それでもエースストライカーか!どんな時だって俺たちは悔いのないサッカーをしてきた、この試合だってそうだ!!」
「そうですよ!こんなの俺の憧れの豪炎寺さんじゃないです!」
「お前の親父さんにも見せてやろうぜ!サッカーの素晴らしさをさ!」
「円堂、虎丸……。わかったよ円堂!」
豪炎寺さんの表情が変わった。
この試合、イナズマジャパンが勝つ。
不動さんがボールを豪炎寺さんに渡してその後ろに宇都宮くんが続く。
完成したタイガーストームでゴールネットを揺らした。
このまま逃げ切れば逆転優勝。
時間もわずかのところでチェ・チャンスウさんがあがっていきアフロディさんにボールが渡った。
カオスブレイク…
「「「キャプテン!」」」
「円堂!」
「「キャプテン!」」
『っ守くん!』
「この一点…、絶対守ってみせる!」
__ボールは半分地面に埋まっていた。
これはシュートを止めたと言うことを意味する。
みなさんがそれぞれ喜びをみせていた。
久遠さんも口角を小さく上げていた。
「みんなの全力で勝ったぞ!行くぞ、世界に!!」
「「「おお!!」」」
勝ったのは本当に嬉しかった。
そして私が一番気になったのは豪炎寺さん。
「お兄ちゃーん!」
観客席から豪炎寺さんの事をお兄ちゃんと呼ぶ女の子の声が聞こえた。豪炎寺さんがそちらへ行ったので私もそっと後ろからついて行く。
「これで世界大会にいけるんだね!」
わあ…!すっごく可愛い!少し釣り目なところは豪炎寺さんにそっくりですね。
「あ!お父さん!来てくれたんだね!」
豪炎寺さんの元に来たのはスーツを着た男の人、この人が豪炎寺さんのお父さん。
二人の間に沈黙が流れる。
それを破ったのは豪炎寺さんだった。
「父さん、ありがとう」
「…これで彼らを世界に送り出すことができたな」
そう言った豪炎寺さんのお父さん。豪炎寺さんは悲しそうな顔をしていたので、いてもたってもいられなくなった。
『ご、豪炎寺さんはイナズマジャパンに必要です!エースストライカーのユニフォームを着るのも豪炎寺さんだけです!ど、ドイツになんて行かせませんんんん!』
豪炎寺さんを渡すまいと腕をギュウっと絡ませた。
その発言か行動、はたまた両方に驚いたのか豪炎寺さんの目はぱっちり開かれていた。
「修也、彼女は…」
「あ、白露真雪です。イナズマジャパンのサポーターをしてくれてます」
「そうか。…修也の事、頼む」
『「え、」』
「修也、歩いていくがいい。お前は、お前自身の道をな」
それは豪炎寺さんがサッカーを続けてもいいという事で…。
頭を下げた豪炎寺さんの横でぽけっとしていた私は正気に戻り、笑顔で豪炎寺さんに抱き付いた。
『よかったです!本当に、よかったですよぉ!』
「ああ、真雪もありがとう」
「お兄ちゃん!」
えっと、豪炎寺さんの妹さんの方へ顔を向けるとほっぺたをぷくーっと膨らませていた。
か、可愛い…。
「夕香?どうしたんだ?」
「真雪ちゃん!私もぎゅってしたい!」
『わ、私?』
言われて気付いた。私も豪炎寺さんも抱き合ったまんまだった。お互いにバッと離れて距離をとった。
『えっと、夕香ちゃん?お兄ちゃんじゃなくて私でいいんですか?』
「うん!真雪ちゃんがいい!」
あ、今の言葉はきっと豪炎寺さんが傷つきますよ。
『んっと、また今度でもいいですか?』
「じゃあ今度家に来てね!約束だよ!」
『はい。約束です』
夕香ちゃん癒される…。
夕香ちゃんと約束してみなさんのところに戻ると、春奈ちゃんがニヤニヤしながら横に来た。な、何ですか…?
「真雪せんぱーい、豪炎寺さんと抱き合ってましたねぇ」
『あ、あれは、嬉しくてっ』
「真雪先輩、真っ赤ですよ?」
『も、春奈ちゃんのバカぁ!』
泣きながら春奈ちゃんから離れて、いっくんの背中に飛びついた。それを易々と受け止めてくれるあたり私の事よくわかってくれてます。
さて、いよいよ世界ですね___