泣き虫少女とライオコット島

私たちが今いるのは空港。目的は少年サッカーで世界一を目指す試合が行われる島へ向かうため。
乃々美さんがお弁当を持ってきてくれて(その時泣きながら抱き付かれた)そして吹雪さんと緑川さんの代わりに染岡さん(「うおっ!本物じゃねえか!」『よ、よろしくお願いしますぅ…』「思ってたよりうじうじしてるな…、まあよろしくな!」)佐久間さん(「白露、真雪…?」『は、はい…!その、よろしくお願いします』「よ、よろしく!」)が世界へ行く事になった。

さてさて、私のもとには三冊の台本がある。


「それは新しい台本よ。日本を離れていてもしっかり仕事をしてもらうために先に渡しておくわね」

『こ、この撮影は…』

「安心して。世界大会が終わるまで休暇よ。あなたいつも頑張ってるからたまには息抜きしないとね!」

『これ、全部違う役…』

「三本のドラマを任されてるのよ?みんな真雪が日本に戻ってくるまで待っててくれるらしいからしっかり楽しんできなさい」

『あ、ありがとうございます…!』


息抜き、か…。
そういう事なら甘えさせてもらって思いっきり楽しんできましょうか。三冊ありますけど。

マネージャーさんが帰って行くのを見ていると肩を誰かにぽんっと叩かれた。


「真雪ちゃん、ちょっといいかな?」

『吹雪さん?ど、どうしたんですか?』


とりあえずその足じゃ立っていることも辛そうなので近くの椅子に座って吹雪さんの言葉を待つ。
膝に置いてあった私の手の上に吹雪さんは自身のそれを重ねた。


「こんな足で世界にいけないけど、必ず真雪ちゃんのところに戻ってくるから」

『…あ、その、吹雪さんが戻ってくるの、待ってますね』

「真雪ちゃん…」

『イナズマジャパンのみなさんで待ってますから!』

「…うん、真雪ちゃんってこんなだった」

『へ?』


眉を下げて笑っている吹雪さん。でも目は笑っていないので少し怖いです。
手を離されたかと思うと腕を引っ張られて、私は吹雪さんの胸元にもたれかかってしまった。慌てて離れようとしたけど吹雪さんの腕が私の背中に回っていた。


『ふふふ、ふぶ、吹雪さん!?』

「あーもう、ほんとに可愛いよ」

『か、可愛いとか、言わないでください』

「何で?」

『な、なんで、って…』

「あ、照れてる」

『吹雪さんのばかぁ!』


仕返しとばかりに腕で吹雪さんをギューッと抱き締める。これって意外に痛いけど力のない私がやっても意味がないと後から知りました。
クスクス笑っていた吹雪さんが急に笑うのをやめたので疑問を浮かべていると、体を少し離して吹雪さんの綺麗な顔が私の顔に近づいておでこに柔らかい感触がした。


『え、え?ふ、吹雪さん、今…』

「しばらくの間会えなくなるから真雪ちゃん補給」

『…っ』

「(あ、赤くなった)向こうでも気を付けてね」

『き、を付ける?何をですか?』

「秘密。じゃあね、真雪ちゃん。また!」


いつの間にか時間がきていて守くんが私を呼びに来てくれた。
吹雪さんに別れを告げてから飛行機に乗った。
機内でははしゃいでいる人もいれば高いところがだめな人、ライオコット島についてのパンフレットを見てる人もおり人それぞれだった。

そして飛行機はサッカーアイランドであるライオコット島へ到着した。

まず私たちが目にしたのは世界中の旗、それから海外の人たちが着ているユニフォーム。それにはイナズマジャパンのユニフォームもあって嬉しかった。

古株さんが運転するキャラバンに乗ってイナズマジャパン用の宿舎に向かった。島の中心になるセントラルストリート、アメリカエリア、イギリスエリア、そしてイタリアエリア。


「すごいですね!この島」

「ここにいてるだけで世界旅行ができるじゃねえか!」

「あ!古株さん!止めてください!」


キャラバンが止まってみなさんが窓から外を見る。私も見ようとしてみるけどみなさんの頭で見えない。
イタリアチームの誰かの声がするけど、まさか…


「あいつ、フィールドの真ん中にいるのに後ろのディフェンス陣の動きまで見えているのか?」

「まるで、後ろにも目があるみたいだ…」

「世界のトップレベルの中にはいるそうだ、空から見ているかのようにフィールドの全てを見ることができるプレーヤーが」


世界のトップクラス、フィールドの全てを見ることができる。
間違いない、と思います。
ドアのところにいる木暮くんと宇都宮くんと染岡さんに少しよってもらって地面に足をつく。
顔を上げてフィールドを見るとドリブルをしている彼。


『ふぃ、フィーくん…!』


みなさんの視線を感じたけど彼に会えたことがすごく嬉しかった。遠慮がちに出した声だけどフィーくんには聞こえたらしくこっちを見てから数秒後、走ってきた。ので、私も少し近づいた。


「真雪!」

『久しぶりですね、フィーくん』


そのまま抱き締められて両頬から聞こえるリップ音。
海外の挨拶はこれから先も慣れることはないと思う。照れている私とは違ってフィーくんはとってもにこにこしている。


「どうしてこの島に?」

『イナズマジャパンのサポートをさせてもらっているんです』

「イナズマジャパン?」


そう言って私の後ろにいるみなさんをチラッと見てから視線をフィールドに戻した。あ、練習の邪魔をしてしまいましたね。


『フィーくんは練習に戻ってください』

「え、でも真雪…」

『またお会いしましょう?フィーくんが、その、い、嫌じゃなかったら、』

「嫌なわけないよ!真雪、元気そうでよかった!」

『え?』

「なんでもない、じゃあね!」


片手をあげて練習に戻っていったフィーくんをぼーっと見ているといっくんに名前を呼ばれて慌ててキャラバンに戻った。時間をとってしまってみなさん、ごめんなさい。
キャラバンに入ってすぐにいっくんと豪炎寺さんにほっぺたをごしごしされた。


『いいいい、いた、いたい、いたいですぅぅぅ!』

「「……………」」

『ご、ごめんなさい…』


無言とかやめてください。

それからイナズマジャパン専用の宿舎について(春奈ちゃんにフィーくんとの事を聞かれた。もう一人の幼なじみですよ)自分の部屋に入り一息つく。
ベッドに座っているとノックもなしにドアが勝手に開いた。


『ひぃ!』

「真雪行くぞ!」


ま、まあ、ドアなんて勝手に開くわけありませんよね。せめてノックしてくださいよ守くん。用も伝えずに腕を引っ張られて強制連行されました。宿舎の近くの海岸に。


『ま、守くん!急にっ』

「世界大会出場おめでとう、円堂くん」

「夏未!」

『へ?』

「久しぶりね、真雪さん」


なつみ、ナツミ、菜摘、夏美、……夏未さん!?


『え、え、夏未さん、海外に留学中って、その、聞きましたけど…』

「ごめんなさい、その事は嘘なの」

『嘘?』

「あることを調べるために世界中を回っていたの」

「あることって?」


夏未さんに尋ねると真剣な顔をして守くんを見た。


「円堂くん、あなたに伝えておくべきことがあります」

「え、」

「あなたのおじいさんは……、円堂大介さんは生きているの」


それは今の守くんに衝撃を与える言葉でした。