泣き虫少女のデジャヴ

みなさんが練習している間、私と秋さんは監督に呼ばれた。


「招待状?監督、どうするんですか?」

「招待は受ける。相手を知るにはいい機会だからな」

『わかりました。みなさんに伝えますね』


イギリス代表のナイツオブクイーンからの招待状を持って秋さんとグラウンドに行って、みなさんに集まるように声をかけた。


「「「親善パーティ?」」」

「ナイツオブクイーンからの招待よ。試合の前に親睦を深めたいから今日の六時、ロンドンパレスに正装してきてほしいって」

「せいそう?」

「こんなネクタイした黒い服の事ですよ」



立向居くんが正装の意味が分からないという綱海さんに説明すると、想像した綱海さんは嫌そうに顔を歪めた。

まあ、パーティだから仕方ないですよね。


『そ、そういうわけですから、時間までに準備しといてください、ね』


パーティだから美味しいものいっぱいでるかな、とか考えていた。

練習が終わってからドレスはどうしようと思っていると、にっこにこの笑顔をした春奈ちゃんがすでに用意していた。


「真雪先輩はこれを着てくださいね!」

『これ、ですか?』

「絶対に似合いますから!」


一部始終笑顔で見ていた冬花さんも秋さんも頷いてくれたから、ちょっとは自信がついた。


ですけど…


『何で、私だけ前が短いんですか…?』

「真雪ちゃん足細くて長いから見せないと損じゃない?」

「触りたくなってきますね!」

「お触り禁止よ、音無さん」


確かこういう前が短くて後ろが長いドレスってフィッシュテールと言うんでしたっけ?
ヒールの高いパンプスを履いて髪の毛は冬花さんが巻いてくれた。


「いい感じ!」

『あの、ありがとうございます』

「後で一緒に写真撮りましょうね!」


誘ってくれた春奈ちゃんに何度も頷いた。

準備ができたので、みなさんが待っているところへ行くために、階段を降りた秋さんたち。

私はネックレスが上手く付けられないため苦戦中。

よし、付いた。

鏡をみて変なとこがないか確認してから、みなさんを待たせているので走って部屋を出て、階段を急いで降りたら踏み外してしまった。


『きゃあっ…!』


あれ、そういや前にも階段から落ちたことがあった気がする。

確か、あの時は……


「おまえ、ほんとに落ちんの好きだなぁ?」

『ふ、不動さん…』


まさか彼が助けてくれるなんて、思ってもいなかったから驚いて言葉も出てこない。
口をパクパクしていたら不動さんは口角を上げた。


「助けてもらったら何て言うんだっけな?」

『へ?あ、う、あああ、ありがとうございますぅ!』


私ったら、お礼も言わないで恥ずかしい。
私がお礼を言うと降ろしてくれたので、今度は頭を下げて謝罪した。


『ご、ごめんなさい』

「もう落ちんなよ、真雪チャン?」


頭を撫でられて反射的にビクッとなったけど、不動さんの表情が優しくて目を疑った。


『気をつけます…』


何だか直視できなくて顔を伏せた。


「見ました木野先輩!不動先輩が真雪先輩をお姫様抱で助けて、あーんど!頭ぽんぽんですよ!?なんて羨ましいことを…!それに不動先輩の言葉からして前にも助けられたことがあるんでしょうかね!それにしても次落ちそうになった時は私が支えてみせますよ!それに!真雪先輩の顔が乙女になっています!私にもあの顔を見せてほしいですからね!!」

「うん。落ち着こうか音無さん」


暴走していた春奈ちゃんを秋さんと冬花さんがなだめていたのに、私は気付かなかった。


周りを見渡していた秋さんはふと気がつく。


「あれ?円堂くんは?」

「そういえば、いないね」

「…もしかして」


私にも秋さんの考えがわかる。
パーティよりも頭の中はサッカー一色の守くんのことだから、また自主練習でもしてるんだと思う。

秋さんに自分が見てくることを伝え、すぐ前にある練習場を見るとそこにはやっぱり守くんがいた。(あ、フィーくん+αもいる)

みんなで楽しそうにサッカーボールを蹴っていたので、出るに出れない状況になってしまった。
ど、どうしましょう…!
て、そんな悩んでる時間はないのでとりあえず階段を降りて同じ練習場に立つと、たまたまこっちを見たフィーくんと視線があった。それは、もう、バッチリ。


ボールを蹴っていたフィーくんは簡単にボールを奪われてしまったけど、全然動かない。みなさんも不思議に思ったのか、プレーを止めてフィーくんに声をかけている。
それでも動かないフィーくんに、ちょっとだけ微笑むと一瞬でこっちに来た、一瞬で。

えええええ!?


『え、え、え!?』

「真雪!何その格好!なんでそんな格好してるんだ!」

『ひぅ、ごめんなさいいいい』

「あ!いや、怒ってるんじゃなくて…!」


怒ってるんじゃなくて何なのかな、て思っていたらアイガードをつけた人もこっちに来て、私の手を取るとぶんぶん上下に振った。


『ひぇ、あの…』

「マーク!本物の白露真雪だよ!」

「ディラン落ち着け」


マーク、ディランと呼ばれた人は確かアメリカ代表だったと選手ノートに書いていた気がする。
アメリカ、か。

でも、そんな事より…


『私のこと知ってるんですか!?』


突然顔を近付けた私に少し驚きながら答えてくれた。


「もちろんさ!それにカズヤがよく話してくれたよ!ね、マーク!」

「ああ。君の事を話す時のカズヤはどこか得意げだな」


それはそうだと思う。

だってあの人は、私が女優になる"きっかけ"だったんだから。