泣き虫少女とパーティー

「真雪?」

『え、あ、ごめんなさい、』


昔、ていっても数年前のことを思い出していたら、フィーくんの声で現実に戻された。

一哉くんとは、数回だけあった仲だけど、信頼のある友達だと思う。


「それにしても、どうしてドレスなんて着てるんだ?」

『……あ、忘れてました!守くん!』


うっかりして、本来の目的を忘れるところでした。

ドレス姿の私を見て思い出したのか、ハッとした表情になった。


「パーティによばれてたんだ!」

「パーティ?」

『はい、それで私は守くんをよびにきたんです、』


納得という顔をしたフィーくんは、私を凝視していたので、何だろと思い首をかしげると、笑顔で言った。


「似合ってるよ、とても綺麗だ」

『へ、あ、えっと、あうあうあう』

「わお!顔が真っ赤だよ!!cuteだね!」


フィーくん、更にディランさんの言葉でもっともっと顔が熱くなるのを感じた。
おそらく真っ赤になってるであろう私の顔を隠すために、両手で顔を隠しておく。


『あの、あ、ありがとう、ございます』

「「「…(かわいい)」」」

「はっ、行くぞ真雪!じゃあまたな!楽しかったぜ、」

『え、あ、それじゃあみなさん、失礼します』


ポカーンとしてるみなさんに頭を下げてから、守くんに手を引かれながらダッシュでパーティ会場に向かう。

完全に遅刻…、せっかく招待してくださったのに。

それに、私はただでさえ体力がないので、守くんと走るのは限界がある。

目的地までまだまだなのに、すでに息が切れてしまった。

急に止まった私に気付いた守くんに言う。


『はっ、は、あの、守くん、』

「どうした?大丈夫か?」

『は、い。先に、行って、ください、』

「え?」

『私は、選手ではないので、もし参加できなくても、大丈夫です、けど、守くんはキャプテンですし、招待を、無駄に、できません、』


話すのもしんどいなか、何とか伝えることができて笑顔で言えば、守くんは顔を伏せた。


『守、くん?』

「真雪もイナズマジャパンの仲間だろ?」

『え、』

「参加できなくてもとか言うなよ、な?」


すこし寂しそうに微笑んだ守くんに涙が出てきそうになる。
そんな私の頭を髪型が崩れないように優しく撫でてくれて、私の涙腺は崩壊した。


『う、え、うう、守、くんんん』

「はは、ほら、泣くなよ」

『ふぇ、うう、』


涙を拭くために目を擦っていると、守くんがぎゅっと抱きしめてくれた。
昔から変わらない、暖かさ。


「せっかくのパーティなんだ。目が腫れたらもったいないだろ?」

『守くん、でも私、もう走れないです、』


守くんがどんなに励ましてくれても、私の体力では、本当に間に合わない。
これはどうしようもないこと。


「うーん。じゃあのれよ!」

『の、る?』


乗るとはどこに、て思っていたら、守くんが私に背中を向けてしゃがんでくれた。

おんぶ?

あ、でも、私のドレスじゃおんぶしたら下着が見えるか見えないかのギリギリになっちゃう。

守くんは振り返り、私が迷っていることに気付くと、ニカッと笑って近付いてきた。

そしてそのまま、


『ひ、え、きゃあ!』

「よし!いくぞ!!しっかりつかまっとけよ!」


私の背中と膝裏に手を回し、抱き上げてくれた。いわゆるお姫様抱っこなわけで。

これならおんぶの方がいいです!
守くんのことを考えると、おんぶの方が走りやすいはずなのに、

それでも、笑顔で楽しそうに走る守くんを見てたら、何も言えなくて私も嬉しくて、守くんの首に落ちないように腕を回し、しっかり抱きついた。



パーティ会場である、イギリスエリアに着いたのはもう日が暮れた時だった。

でも、間に合ってよかった。


「すいません!遅れました!」


急な訪問者に周りの視線は私たちに突き刺さるわけで。


『ひっ!』


素っ頓狂な声が出てしまった。いつものことですけど。

守くんにおろしてもらい、お礼を言う。
ここまで走って息切れをしていないなんて、さすがです。

周りからの視線は収まるかと思ったけど、ますます増えている気がする。

え、やだ、こわい。

守くんの後ろに隠れて少しでも視線を減らそうとするけど、やっぱり怖い。


「真雪ちゃん、守くん」

「ん?」

『冬花さん?』

「紹介します、こちら、ナイツオブクイーンのキャプテンで、フォワードのエドガー・バルチナスさん」


冬花さんと、一緒に私たちのところに来たのは、いっくんと少し似た髪型をしている、イギリス代表のキャプテン。

せっかくキャプテンの人が挨拶してくれているのに、人の後ろに隠れるというのは礼儀がなっていないので、前に出て挨拶をする。

大丈夫、私はパーティに招待された、ドレスを着た女の子。
この場面での挨拶は慣れている。


「エドガーです。よろしく」

『お初お目にかかります。イナズマジャパンのサポートをさせていただいてます、白露真雪と申します。ご招待いただいたのに、遅くなり申し訳ございませんでした』

「っ!(どうしたというのだ!私は!いつもみたいに、女性を褒める言葉を!言葉を…)」


動作も完璧にできた。
礼儀正しい、この場に合う雰囲気を持つ女の子。


「真雪ちゃん?」


…はっ
だめだ、知らない間に役になりきってしまった。


「…何もなくてよかったです(言葉が、出ない…)」

『ご心配おかけしました。それでは私は失礼いたします』

「え、ええ、楽しんでいってください」


緊張で固まっていた筋肉をゆるめ、一息ついて飲み物を取りに行こうとしたら、誰かに腕を掴まれた。

エドガーさんとは違う、青髪の幼馴染。


『いっくんんん!』

「うわ!どうした?」

『何にもない、です』


いっくんの顔を見たら安心感から抱きついてしまった。
そんな私に困りながらも優しくしてくれる幼馴染。私の周りはいい人たちばかりで、とても幸せです。