泣き虫少女の紹介
サポートしてもらいたいと頼まれて次の日、みなさんより早く起きてご飯を食べてからまた自分の部屋に戻った。昨日渡された台本に目を通して話の内容を把握する。全て読み終えたところで集合時間になっていたので慌てて部屋を飛び出した。
走って宿舎を出ると既にみなさんグラウンドにいて、見たところ冬花さんの紹介が終わったところみたい。どうして久遠さんは私を呼びに来てくれなかったのかな。あ、お仕事優先って言ったからかな?
それにしてもなんだか険悪な雰囲気…
「試合に出たければ死ぬ気でレギュラーの座を勝ち取ってみろ。以上だ」
今この空気の中入って行くなんて私にはできません。だからあとでもう一度顔を出そうと思います。
とか思っていたのに、
『ほぅわ!』
芝生の上で滑って転けた。シンとしていた空気の中私の声は響き渡ったと思う。
「…何をしている」
溜め息をついた久遠さんに言われたけど、恥ずかしくて答えれなかった。でもずっとこの体勢でいるのはもっと恥ずかしい。
「真雪!?」
『え?…ま、守くん!』
顔だけ上にあげてこっちに走ってきた私の幼なじみの一人、円堂守くんが驚いた顔をしていた。
「どうしてここにいるんだ!?」
『う、えっと、呼ばれたんです』
走ってきたくれたのはいいけど、助けようとかしてくれないのですね。なんて思っていたらもう一人の幼なじみが同じように走ってきて、手を引っ張って立たせてくれた。
「大丈夫か?」
『あ、ありがとう。いっくん』
立たせてくれたのは嬉しいけどやっぱり恥ずかしい。久遠さんにこっちへ来いと言われ、しぶしぶ歩いて行った。守くんといっくんのユニフォームの裾を掴みながら。
久遠さんの横に行くと目で言われた、自己紹介しろって。
『えっと、その、白露真雪です。久遠さんに言われてサポートすることになりました。よろしくお願いします』
下を向きながら言ったらみなさん口々に何か言っていた。あれかな、何でここにいるんだ、とかみなさんの知ってる白露真雪じゃない、と思ってるのでしょうね。
「サポートって監督…」
「響さんと私で決めたことだ、お前たちを強くしてもらう」
『で、でも、私、そんなことできるか…!ごめんなさいぃぃ!』
そんなことできるかわからない、と言おうとしたけど黙ってろと睨まれた。
「よくわからないけど、よろしくな!真雪!」
守くんに手を握られたので軽く握り返して笑っておいた。
それから久遠さんの呼びかけで練習が始まった。世界へむけての練習一日目。
久遠さんはみなさんを厳しくチェックしている。その横で私はグラウンド全体を見ている。
私が気になったのは飛鷹さん、それに宇都宮くん。まずどうみても飛鷹さんは言うと悪いけど、初心者で宇都宮くんはシュートチャンスがあっても自分でゴールを決めようとしない。
それから夕方まで厳しい練習を終えてみなさんが宿舎に戻り、私はマネージャー組と話と言う自己紹介をしていた。冬花さんは久遠さんと先に戻った。
「わ、私!ファンなんです!こんなに近くで会えるなんて感激です!!」
「実は私も…」
「僕もです!三次元で唯一ファンになったんですよ!」
『あ、りがとうございます?…でも、私雷門中ですよ?』
「「「え!?」」」
あ、みなさんの声が重なった。
「でも私会った事ありませんよ!?」
『あ、名前変えて変装してましたので…』
「そうなんですか!?もっと早く気付いていれば…!」
「ふふ、よろしくね、真雪ちゃん」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!!」
どうやら目金さんは私と同じで敬語が癖のようです。片付けが終わりのびをしてからそれぞれ部屋に戻った。
部屋に戻る前に水をもらおうと食堂に行ってドアを開けた。
『……………』
「「「……………」」」
開けたドアを再び閉めた。
ドアの向こうからおいおいおいって聞こえた気がした。
むりむりむりむり。何でみなさん(一部いない)食堂にいるんですか。部屋にいるんじゃないのですか。
ドアに背中を預けて頭を抱えてしゃがんでいるとドアが開いた。もちろん背中に体重をかけていた私は後ろに倒れるわけで。
『っ!いったぁ』
「うわ!すまん真雪!」
ぶつけた頭に手を当てた状態で目を開けると守くんがあたふたしていた。いっくんが駆け寄ってくれて立たせてくれた。あれ、デジャヴ。
「ケガしてないか!?」
『へ、平気です。守くんも気にしないでください』
「そうか!」
「少しは気にしろ」
パシッと頭を軽く叩くいっくんは完全に保護者みたい。そんな二人のやりとりを見ながら微笑しているとみなさんの視線に気がついた。
『………サヨナラ』
「おう!…て、待てよ!」
珍しく守くんにツッコミをされた。
いっくんの後ろに隠れて少し顔を出して守くんに話しかけた。
『な、なんですか?』
「せっかくだしみんなに挨拶しとけって!」
『………さっきしました、よ』
「もっと詳しく!」
『…白露真雪、二年生です。失礼、します』
「こらこら」
今度はいっくんに腕を掴まれた。いっくんの背後には逃がさねえよって感じのオーラが見える。やだやだ怖い。
『わ、私がみなさんのこと知りたい、ですよ』
そう言えばみなさん納得したようで話しかけてくれた。ちなみに私はいっくんに連れられ食堂の椅子に座っている。
名前を教えてもらったけど、私は一応みなさんの名前は知っている。口には出さないけど。
「あ、あの!俺大ファンなんです!!握手してもらえますか!?」
『あ、うん。ありがとう、ございます』
差し出された手を握ると、目をキラキラさせて上下ににブンブン振る彼は立向居くん。
他のみなさんも立向居くん同様に握手を求められたのでそれに応えた。
「円堂と風丸とはどんな関係なんだ?」
『幼なじみ、です』
その一言でみなさんが仲が良い理由がわかったみたい。そろそろ戻ってもいいのかな、台本の練習しとかないと今回の役は面白いからはやくしたい。
『戻ってもいいですか?』
「あ!忙しかったよな?」
『だ、大丈夫ですよ。みなさん明日もよろしくお願いします』
それだけ言って頭を下げるとみなさん笑顔で返してくれた。みなさん優しいです。
驚いたことは鬼道さんと音無さんが兄妹って事にびっくりしました。