泣き虫少女と不動

みなさんに挨拶してから二日後、それまで仕事場にくるように言われたので、終わってから車に乗って帰っていると、音無さんと目金さんが歩いていたので止めてもらい、変装してから二人の後を追いかけた。

入って行った建物は中学サッカー協会。入り口から見てるとばれないように侵入していた。さすがにこれは止めないとダメかな。
入ったと同時に二人は受付のお姉さんに見つかった。


『音無さんに目金さん、勝手に入るのは、その、よくないですし帰りませんか?』

「真雪先輩!?」

「そ、そうですね」


あきらめて帰ろうとしたらお姉さんに止められた。


「あなたたち雷門中?それにあなた白露真雪ちゃんね!」

『ぇ…、は、い』

「ちょっと今後の試合に向けて色々資料を調べたくてですね…」

「いいわよ」


ほんとは入ってはいけないけど特別に入れてもらえた。サインを要求されたのですれば喜んでもらえたのでこっちまで嬉しくなった。


入ってから後悔。
久遠さんの事を調べにきた二人は情報を集めていた。呪われた監督とかなんとか。私は他の国の選手について調べることにした。
だいたいの情報を手に入れた二人は、すぐにみなさんに伝えるために走って行ってしまった。私もできる限りのスピードで走った。

でも運動音痴な私には追いつく事なんてできなかった。太陽が沈む様子をぼーっと見ていた。
て、そんな事してる時間はない。でも走るのは体力的に厳しいので歩いて宿舎に入った。
昨日と同じできっとみなさんは食堂にいると思うので、今回は自分の部屋に戻るために階段を上る私は学習したと思う。


『わっ!』


でもこういう事は学習しないのが私で、あと一歩のところで階段を踏み外してしまった。走ったせいで足に力が入らなかった。この高さなら本気でやばいけど助けてくれる人なんていないので。


落ちた。

怪我は仕事に関係するのであれほどマネージャーに注意されてたのに、怒られるどころじゃすまなさそう。


落ちたのに感じたのはすごく軽い痛み。
それに背後と私のお腹には人の感触。


『な、え、』

「っいってぇ。急に落ちてくるんじゃねえよ」


私のお腹に回されてるのは背後の人、不動さんの腕。理解した私はすぐにどいて座った状態で何度も謝った。なんて言われるのか、怖い。


『ごめんなさい!本当にごめんなさいぃぃぃ、…ふぇ、』

「んなに謝られたら逆に怒れねえっつーの。つか泣くな俺が泣かしたみてえになるじゃねえかよ」

『ごめんなさい!あ、の…、大丈夫ですか?』


大丈夫かと聞いても返事がない、それに自分の部屋に戻ろうとする不動さんを引き止める。


『えっと、肩を痛めてると思います、そのままだと腫れてきて腕や手の筋肉にも影響してくると思います。だから、その、冷やしてから湿布を貼らないと、ダメかと…』


言ってからハッとなった。つい癖でいつも守くんたちにしていたように言ってしまった。こいつ生意気とか思われてそう。


『あ、ごめ、なさ』

「何でわかった」

『え?』

「肩、なんでわかったんだ」


どうやら不動さんは肩が痛いと表情には出さなかったのに何故わかったのか、というのが気になったらしい。久遠さんに呼ばれたのはこの目の事なので隠すつもりはない。


『わ、たし、目で見える?感じる?んです』

「何が」

『体の中、と言えばいいでしょうか?えっと、筋肉とか血液の流れそういったものがわかるんです』


ありえない、とでも言いたそうな顔で見られた。
気味悪いと思われても大丈夫。そういうのにはなれて生きてきた。
不動さんの様子をうかがうと、何も言わずに階段を上った。


「何してんだよ」

『へ?』

「肩」


手当してくれんじゃねえの?

その一言で私はすごく嬉しくなった。イナズマジャパンのメンバーには悪いイメージがあるみたいだけど、そんな風には見えない。

自分の部屋からテーピングするための用意を持って、不動さんの部屋に入った。


『お、おじゃまします…』

「手当したらすぐもどれよ」

『あ、はい』


座る不動さんの横に座って肩を出してもらう。上半身裸はさすがに緊張してむりなので、タンクトップ状態の不動さん。軽く腫れてるところを手当していく。


『え、と。これで大丈夫です』

「用がすんだらもどれ」

『はい。あ、あと、助けてくれてありがとうございました』


上手く笑うことができただろうか。
そんな私を不動さんは凝視していた。


『な、なんですか…?』

「テレビとは違うんだな」


不動さんが言ったことはみんなが言う。
テレビの私はキラキラしてていろんな役をしてるけど、実物の私はうじうじしてる。


『役になれるのが、楽しいです。いつもと違う私になれて、それだけで嬉しい、です』

「ふーん。おまえが楽しいならそれでいいんじゃね?」

『ぅえ、あ、その、そんなこと言われたの初めてです…。失礼しますぅ!!』


恥ずかしくて嬉しくて、不動さんの部屋を飛び出した。人は見かけによらない。不動さんには不動さんなりの優しさがあると思う。