泣き虫少女とオーストラリア戦

『おつかれさまでした』


スタジオから出るときにスタッフさんたちに声かけるとみなさんも返してくれた。


「最近調子いいねー!」

「イナズマジャパンのサポーターなんだって?」

「しっかり頑張れよ!」

『あ、ありがとうございます!』


同じ番組に出る人たちに応援されて嬉しくないわけがない。今日はFFIの開会式と初試合。車を出してもらってその中で着替えた。
どうか間に合いますように…











車をとばしてもらったおかげで試合には間に合った。苦戦しながらも会場に入り、マネージャーたちがいるベンチに向かった。


「はやかったな」

『急いで、きました…』


深く深呼吸して息を整えて試合の状況を見る。得点は0対1で必殺タクティクスは攻略できていた。せまい部屋の中で練習したかいがあったってところかな。問題はゴールキーパー、それに個人の必殺技。
前半が終わる直前に鬼道さんの足にタックルがきまった。


「白露…」

『はい』


前半終了のホイッスルが鳴って守くんが鬼道さんをベンチに連れてきてくれた。


木野さんが鬼道さんの足首を触ると苦痛で顔を歪めた。


「この試合はむりです!」

「これくらい大丈夫だ!」

「鬼道、気持ちはわかる。だけどむりはするな」

「白露」

『へ?あ、はい』


再び久遠監督に呼ばれ鬼道さんの足の様子を見る。
体温、関節、血液の流れ、腫れ具合。


『これは足関節捻挫で内反捻挫ですね。えっと、内出血をしかけているみたいですので氷嚢を…あ、市販のアイスパックは0℃で冷やすことが出来ない場合もあって効果が低いので、氷嚢か…、無ければビニール袋に氷を入れて少し水を加えて、患部を覆ってからテーピングして固定し、動きを制限しておきましょうか』


あれ?どうして沈黙…。
もしかしてでしゃばってしまいましたか?
周りをそっと見るとみなさん口を開けてポカーンとしていた。私のことを知ってる守くんやいっくん、不動さんでさえ。


「あいかわらず真雪はすごいな!何言ってるのかわからなかったぜ!」

「はい!氷嚢持ってきました!」

「包帯も持ってきました!」

『あ、ありがとうございます』


音無さんと目金さんから受け取り冷やしてからテーピングをする。これですぐに治るはず。鬼道さんにも足をあまり動かさないように注意した。
久遠監督の指示で鬼道さんと宇都宮くんが交代した。
それから綱海さんは、知らない間に外出していたらしく、久遠監督に新たな必殺技で点を取れと言われた。未完成だけどヒントはフィールドにある、とか。


ビッグウェイブスからのキックオフで始まって、すぐに宇都宮くんがボールを奪った。綱海さんは綱海さんでフィールドを見ながら走っている。

豪炎寺さんが爆熱ストームを打つが相手の必殺技、グレートバリアリーフで止められる。それを見て綱海さんは何か思いついたようで。
宇都宮さんからボールを受け取りシュートを打つ綱海さん。でもまだ未完成で止められる。
守くんが相手のシュートを止めて綱海さんにボールがわたる。


「俺に乗れねえ波はねえ!」

『っ!つ、綱海さん!回転です…!』

「!そういう事か!!」


聞こえているかわからないけど、ギリギリのところまで行き、声を出して伝える。
ボールに回転をかけて打ったシュートは相手の技を破った。同点になってみなさんが喜んでる中、鬼道さんが久遠監督に声をかけた。


「俺たちがオーストラリアと互角に戦えているのは、監督の采配のおかげです。あなたはチームをダメにするような監督じゃない。桜咲木中で何があったんですか?」

「おまえが知る必要はない」

「監督!」

「待て。俺が説明しよう」


響さんは久遠監督の過去に何があったのか語ってくれた。
桜咲木中はFF地区予選の優勝候補の一角であった。でも最強のチーム、帝国との決勝前日に部員たちは喧嘩してケガをさせてしまった。影山さんって人が仕組んだとか。
事件が公となればサッカー部がなくなってしまう、だから久遠監督は自分が問題を起こしたことにして決勝を危険。その事で指導者資格が取り消しされたが、十年たって資格停止処分がとけ、響さんが久遠監督に監督就任を要請した。久遠監督の指導力こそイナズマジャパンには必要だと思ったから。

終盤が近付き綱海さんがマンツーマンでマークされたけど、大人しくマークされてる綱海さんではなくて振りきってボールを受けとり、壁山くんにパスをする。
誰にもパスが出来ないとわかった壁山くんはドリブルで持ち込んでいく。そして宇都宮くんにパス、宇都宮くんが豪炎寺さんにパスをして新しい必殺技でゴールを決めた。

そして長いホイッスル、試合が終了した。


「よっしゃあ!勝ったぜ!あ、真雪ありがとな!」

『え、何がですか?』

「必殺技だよ!おかげで完成できた!」

『そ、そうなんですか?』

「ああ!」

『えへへ、嬉しいです』


少し顔に熱をもつのがわかるけど、ちゃんと笑えてるかな、にやけたりしてないといいですけど。だって綱海さんが私の顔から目をそらさないんです。


『あの…』

「何かさ近寄りがたいっつーか住む世界が違うって思ってたんだけど、そんな事なかったな!」

『つ、綱海さんだって日本代表じゃないですか』

「あ、そー言われてみればそーだな!なんにせよ真雪は普通の女の子って事だ!」


がしがし髪の毛を乱すようになでてくれる綱海さんの手が暖かくて、そしてくれた言葉がとても嬉しかった。

フィールドで土方さんに肩車をされていた守くんが、両手を大きく振ってこっちの方へ走ってきた。だんだん距離が縮まるけど何か用かな?


「勝ったぞ!真雪ー!!」

『ひっ!』


予想外で私の脇に手を当て持ち上げた。そしてそのままぐるぐる振り回された、から悲鳴が出かけた。


『ま、守くん。目が、回りますぅぅぅ』

「ははは!」


はははじゃないですよ!
気付いたいっくんが試合の後だというのに猛スピードで私たちのところに来て守くんに振り回されてる私を助けてくれた。


「だ、大丈夫か!?」

『ひゅぅぅう…。目が、』


ぐるぐるな視界の中フラフラしながらベンチに戻ろうとした、けどドンッと誰かにぶつかり倒れそうになったところを助けてもらった。


『あぅ、ご、めんなさい』

「君、白露真雪だよね?」

『ふぁ、ふぁい…?』

「サインとか、もらえるかな?」


ちょっと待ってもらって目が回復するのを待った。
すぐに治りぶつかった相手を見るとビッグウェイブスの美人さんでした。
ニコッと微笑んで何かを待っているようだが、それが私の返事と気付いて慌てて頷いた。

色紙のかわりに部活用の鞄へしてほしいと言われ、本当にいいのか問うとここに書いてほしいと言われなんだか嬉しかった。


「試合に負けたけど嬉しいよ」

『そ、そう言ってもらえて光栄です』

「負けたのに笑ってんじゃないぞリーフ」


突然後ろから声が聞こえたので驚いて肩が大きく揺れた。声の主はビッグウェイブスのキャプテンで悔しそうな顔をしていた。


「ニース…。だってあの白露真雪だよ?」


リーフさんがそう言えばキャプテンのニースさんは走ってどこかへ行き鞄を持ってきた。リーフさんと同じで部活用の。


「俺も、サイン…」

『え?こ、ここにですか?』

「頼む!」


お願いされたら断るわけにはいけないので、リーフさんと同じところにした。その後同じように何人かの選手に頼まれて、みなさん試合は負けたけどすっごく嬉しそうな顔をしていて幸せだった。

いっくんは人気者だな、と微笑んでポンポンっと頭をなでてくれた。