泣き虫少女と不良

一回戦に勝ったからと言って休憩してる暇はない。イナズマジャパンの連携をよくしていかないと。
食堂で久遠さんに呼ばれみなさんが集まって次の相手の事でミーティングをした。相手はカタール代表のデザートライオン、このチームは疲れ知らずの体力に、辺り負けしない足腰の強さを備えていること。そのためには基礎体力と身体能力の強化が必要でその二点を鍛えること。


「どんな練習をすればいいんだろ?」

「そんなもん徹底的に走り込むしかねえだろ。走って走って走りまくって強い足腰を身につければいいんだ!」

「そうだな!それでいこう!」

「単純だがそれが一番か」


綱海さんの案に賛成するみなさん。鬼道さんの足の回復は予想以上に早くてすでに治っていた。キズのことを聞くと「真雪のおかげだ」と改めてお礼を言われて少しむずがゆかった。

宇都宮くんは今日も早退して、みなさんはその事が気になっているみたい。


「このままではチームの士気にも関わりかねません。ここは調査すべきかと!」

「わかりましたぁ!任せてください!キャプテン、私たちで虎丸くんの事調べてみます!何かわかったら連絡しますねー!」

「あ、ああ…」

「行きましょう、先輩!真雪先輩!」


あれ。今私の名前も聞こえてきたような気がするけど…、気のせいですよね。
パシッと腕を捕まれて走ろうとする音無さんを止めて、用事があると言って断ればしゅんとした。


『あぅ、えっと、ごめんなさい』

「真雪先輩と調べたかったんですど…、仕方ないです(くっ、せっかく途中で二人っきりになってデートしたかったのに!!)」

「どうしよう、目金くん。音無さんの心が見えるわ」

「僕もです…」


木野さんたちの会話に疑問を抱いていると、気にしないでと言って三人は出て行った。
守くんたちは綱海さんのアイディアである走り込みをするためにグラウンドに向かった。

ドリンクを作り終えてから、タオルと一緒に持って行こうとしたけど重すぎて運べなかった。仕方ないから何回かに分けて持って行きましょうか。でも冬花さんと約束しているのでゆっくりしている暇はない。
やっぱり一気に持って行こうとすれば、重くて持ち上がらなく手が滑り反動で後ろに倒れた。


「力ないね」

「むりしなくていいんだよ?」


ふわっと包み込むように後ろから抱きしめられた。その瞬間ボッと顔が真っ赤になった。それを見て二人は笑っている。


「真っ赤だよ」

「意外に初なんだ」

『あ、の…、あぅ…』


なんだかイナズマジャパンのメンバーと関わってから、恥ずかしいことが連続で起こってる気がする。しかもこの二人はいっくんと並ぶほどのイケメンだとか浦部さんたちが言っていた。


『その、ありがとうございます』

「君がケガしたらイヤだからね」

「ヒロトくん、いい加減離してあげたらどう?」

「羨ましいんだ、吹雪くん」


私を挟んでの会話はやめてほしいです。
吹雪さんに言われて離れた基山さん。二人とも私が持とうとしてたドリンクを持って足を進めた。


『へ?あの、それ…』

「女の子がむりしちゃいけないよ?」

「俺たちに任せて」


そんな事言われてもそれは私の仕事だし、お二方には迷惑をかけるわけにはいけない。だから半分だけ持ってもらうことにした。

のに、私の手にはタオルが少し乗ってるだけ。


「僕たちがやりたいことなんだ」

「そうそう、気にしないで」

『…ありがとうございます』


お礼を言うと二人は嬉しそうに頬を緩めた。

運んでもらった二人に頭を下げて、守くんに一言告げてから門に行くと冬花さんがすでにいた。


『おそくなって、ごめんなさい』

「ううん、真雪ちゃんありがとう。私今まで手伝えなくてごめんね」

『ふ、冬花さんも用があったんですし仕方ないですよ』


冬花さんと私は雷門中を出て散歩をしていた。この街のことをよく知らない冬花さんに、私が案内するように久遠監督に頼まれたから。



ショッピングをしてアイスを食べて、とみなさんが練習してるときに申し訳ないと思うけど久遠監督に逆らうことが一番怖い。
冬花さんは、今回のお礼と私のためにと新しいキャスケットを買ってくれた。白い綺麗な色をしている。


『ありがとうございます!ほんとに、嬉しいです!』

「喜んでくれてよかった…。真雪ちゃんって外に出るときいつも帽子とサングラスしてるから新しいのどうかなって思ったの」

『な、なんか私だけもらうってのも悪いですし…、少し待っててください』


冬花さんの呼び止める声も聞かず、近くのアクセサリー店に入って彼女に似合いそうな物を探す。
あ、そういや冬花さんっていつも髪の毛結んでるからゴムにしようかな。リボンのついた黒いゴムを見つけてそれをレジに持っていった。


『ど、どうぞ』

「わぁ!ありがとう」


袋の中から出したアクセサリーは冬花さんに喜んでもらえたかな。黙ったままの冬花さんを見ていると顔を上げて微笑んだ。


「嬉しい…」


その顔を見たとたん私の目にはうっすら涙が浮かんだ。サングラスをかけてるから誰にもわからないけど。











帰り道。もう練習は終わってるだろうけど、できるだけ急いで帰りの道を通ってるときに守くんに声をかけられた。


「みんなどこか行くの?」

「虎丸のところ」

『宇都宮くん?』

「うん。虎丸っていつも途中で帰っちゃうだろ?そのわけが知りたくって」


なるほど、と一人頷いていればキィーっと自転車がブレーキをかける音が聞こえた。


「ひゅー、可愛いじゃん、彼女たちぃ」

「何だ?」

「こんなやつらとつるんでねえでさぁ、俺たちとかっ飛ばそうぜ、こいつでよぉ」


わ、私こういう人たち苦手…。反射で豪炎寺さんの後ろに隠れてしまった。守くんの後ろじゃなかったのは、その、威嚇の強さっていうか…。


「円堂くん、試合前に問題を起こしたりしたら…」

「わかってる。急いでるんだ、行こうぜみんな」


守くんを先頭にして冬花さんがその後に続いた。私は豪炎寺さんの腕にしがみついたままです。
無視をするという一番いい方法を選んだけど、相手は気にくわなかったのか冬花さんの手をつかんだ。


「おっと…。いいから付き合えよ」

「手を離せ」

「あ?痛い目見たくなかったら引っ込んでな」


やっぱり豪炎寺さんすごく勇ましいしたくましい。
腕に絡みついた私のそれも振り払わずに相手に言うなんてかっこよすぎる。


「痛い目?見せてもらいたいもんだ」


今の声は豪炎寺さんでも守くんでもない。でも聞き慣れた声は飛鷹さんだった。


「飛鷹さん!?」

「おまえら何している。チームの掟、忘れたのか」

「おいおいおい、あんたはもうリーダーじゃないんだぜ、飛鷹さんよぉ」

「唐須、おまえが新しいリーダーってわけか。鈴目はどうした」

「鈴目?あぁ、あいつなら目障りなんで追い出したよ、ぼっこぼこにしてね」

「くっ、テメェ…!」

「あんたの時代は終わったんだよ、飛鷹さん。…やれ」


唐須さんって人の命令で三人が飛鷹さんに飛びかかろうとしたけど、空気を蹴って旋風を起こした。す、砂埃が目に、入る前に豪炎寺さんにぎゅっと抱きしめられた。今日で二回目です、誰かと抱き合うの。


「ちっ、役にたたねえやつらだなぁ」

「やめろ!飛鷹は大事なチームメイトなんだ。殴りたいんなら俺を殴れ」


わぁ…。
数分前の自分に謝りたい。守くんがすごくかっこいい。いつの間にこんなに勇ましくなったのかな。


「おまえもだ飛鷹、どうしてもやると言うなら俺が相手になる」

「…萎えちまったぜぇ。今日のところは帰りますよ、だけどこの仮は必ず返すぜ、飛鷹さぁん」


よ、よかった。帰ってくれた。
豪炎寺さんの腕の中から抜け出して、飛鷹さんたちの様子を見るけどさっきの三人はやりたくてやったわけじゃないみたい。
チームに戻ってきてと頼まれた飛鷹さんだけど断った。三人の問題だって。


「昔のダチがとんだご迷惑を…」

「どういう事なんだよ?飛鷹」

「すいません、キャプテン。昔のことは勘弁してください」


それに守くんはしつこく聞こうとせずに一言わかったと言った。飛鷹さんは一人で歩いて行ってしまった。


「昔のことか…。虎丸の事もこれ以上首を突っ込まない方がいいのかな…」

「円堂、俺はチームメイトとして虎丸の事を知りたい」

「え、」

「苦しいことも辛いことも一緒に乗り越えていくのがチームメイト、それを教えてくれたのはおまえだろ?」

「わかった、行こう!」

「守くん、私たちも一緒に行ってもいい?」

「ああ!もちろん!!」


私たちって事は私も行くことになっているのでしょうか、冬花さん。そんな眼差しを送っていればにこりと微笑まれた。そんな顔されたら断れませんよ。