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「みなさん!もうすぐ文化祭シーズンがやってきますね〜」


秋になり、学校行事に事欠かない季節。
珍しく鳴海先生が前に立って先生らしいことをしている。その為か、クラス内も荒れてなく文化祭のワードにはしゃぐ者達ばかりだ。


「はいはいみんなー!はしゃがないはしゃがない」

「あんたのその格好が一番はしゃいでると思うけど」


心読みくんに突っ込まれているが、その通りだ。

アリス学園の文化祭は初中高合同の能力別クラス対抗形式で、毎年四つの組にわかれてそれぞれ競い合う。一番来客数・売上げの多かったクラスが優勝し、トロフィーと賞金が与えられるとか。


「文化祭という場を通して、みんなで協力しあい励ましながら普段交流のない人達の一面をこの機会に知ったりする事で、みんながより一層多くの人と絆を深め合うことをのぞみます、以上っ!」


丁度いいタイミングでチャイムが鳴り、教室を去る鳴海先生。
ずっと本を読んでいたけど、ちゃんと話しは聞いてたし。


「なーなー、アリス学園の文化祭って一体どんな感じのことするのー?」


鳴海先生の交流の言葉を意識しすぎたせいか、一番関わりたくない人である私の横に座っている日向に声をかけた蜜柑。馬鹿だ。
そんな蜜柑に優しく教えるわけもなく。


「キエロブス」


罵声とともに炎で蜜柑のツインテールの片方を燃やした。御愁傷様ね。
髪を燃やされた蜜柑は不機嫌になり、コテで毛先を戻している。


「えーっ!文化祭って四日間もあるの!?」

「うん、とても大規模なものだからね」


いつもどおり、委員長が説明してくれた。
一日目は模擬店祭。二日目がパフォーマンス祭。三日目は学園主催のイベント祭。四日目が学園祭の終了を祝う後夜祭。

アリス学園の学園祭は普通とは違い、模擬店祭ではアリス生徒が作ったオリジナルグッズがあふれている。
特に潜在系と技術系は優勝候補なクラスだけに、潜在系のアトラクション系の店、技術系のオリジナルグッズ、などなど。

アリス学園の学園祭はアリスが社会に出て活躍する前の予行連休を兼ねた場としても考えられているから、学園側も生徒が思う存分アリスを発揮できるようにこの時ばかりはいろんなことに寛大らしい。


「そういえばさっきから潜在系や技術系のことばっかやけど、特力系や体質系は?」

「体質系はパフォーマンス祭で活躍するんだよね」

「フェロモンとかアクション向けのアリスの奴多いしな」

「特力は…、えっと」

「特力系なんかさして取り柄もない不人気No. 1クラスだよ」


体質系の説明をした後、特力系のことをわくわくと待ってる蜜柑に、急に聞こえてきた声。


「ま、変人落ちこぼれの寄せ集めクラスだし当然の結果だがな」

「あ、お前あん時のイヤミワカメ頭ー!とセクハラ男っ」

「先輩に向かってお前とは何だ」


蜜柑の知り合いかしら?まあ私には関係ないことだけど、なんて思っていたらその人と目が合った。
一緒に来た人と私のそばに来た。


「華鈴さん!」

『……何』

「よ、よかったらアリス祭一緒に…!」


横にいた日向に気付いた先輩達。


「ああ、忘れるとこだった。不人気どころか特力系の下には文化祭にエントリーすらしてもらえない危険能力クラスがあったんだっけ」


何か嫌味ったらしく言ってくる先輩。日向に妬みでもあるのか。


「くさいものにはフタをする。お前らみたいな奴らを表に出す事の危険さを学園側もよく分かってるってことさ」


そういえば、四組対抗とか言ってたっけ。日向のクラスは人が少ないのかしら。


「ま、お前らみたいな奴らをフツーに参加させてもらえるだけでもありがたく思うんだな。さて、華鈴さんさっきの事なんだけど…、っわー!!!」

『てかあんた誰?』

「ワカメ頭からもずくに変身だな」


嫌味を言ってくる先輩の髪に火をつけた日向。蜜柑といいこの先輩といい、今日は髪の毛に火つけたい気分なのね。
つけるだけつけて、教室を出て行ってしまった。

この先輩は私の誰発言にもかなりショックを受けたのか、その悲しみを更に日向への怒りに変えている。


「ちくしょーあいつっ!」

「あらお兄様。何してらっしゃるの?初等部で」

「スミレっ」


ああ、どっかで見たことあると思ったらパーマと顔が似てたからだ。
なんて考えていたら蜜柑に、クラス別授業向かってる時に会ってるで、と言われたけど記憶にない。

技術系のパーマの兄は蛍に用があるみたいで、先程、前の乃木くんが蜜柑の身代わりになった時の隠し撮りを乃木くんにバレて逃げていた蛍がどうやら戻って来たみたい。
蛍に気があるのか美女に弱いのか、顔を赤くしながらさっそく蛍に話しかけるが、いちいち覚えていないのか誰?と反応されて私の時と二重に撃沈したパーマ兄は教室に帰って行った。

何がしたかったのだろうか。

用意したり会議したりとにわかに活気付く文化祭前のクラス。
みんなクラスで集まっているため、私と蜜柑も特力系のクラスへ向かうことにした。


「華鈴〜、なんで特力系は不人気なんやろなあ」

『さあ?』

「ウチらのアリス、文化祭で活かせるかなあ」


歩きながら考えていると、木の根元に日向が。近くには子犬もいてどうやら子犬の相手をしていたよう。

蜜柑が動揺して落とした文化祭のチラシを拾い、


「どいつもこいつも文化祭文化祭、何が楽しいんだか」


興味のなさそうにつぶやいた。


「文化祭なんて銘打ってるだけであんなのただのアリス品評会じゃねーか、くだらねえ」


そういえば、エントリーすらさせてもらえないって言ってたっけ。
だからあんなに機嫌悪くて髪の毛燃やしてたのね。

無言になった蜜柑も同じことを考えてるのか、チラシを全部拾い上げると何も言わずに特力系のクラスに向かった。


「…お前も行けよ」

『無理』

「は?」


即答するとこちらを見る日向はその理由に気付いたみたい。

チラシを同じく拾う時に、近付いて来た子犬を撫でてやると、膝にぴょんっと乗ったので足が痛くならないように座り込むと、その上で寝てしまった。

そういえば私、特力系クラスまでの道知らないわ。
一回目もさぼっちゃったし、今回も、まあいいか。


『何で文化祭参加できないの?』

「お前、遠慮なしだな」

『気になっただけ』


蜜柑みたいに、聞いたらまずいなんて考えない。気になったものは素直に聞く。


「俺たちの存在を学園は隠したいんだろうな」

『へ〜、危険能力系って少ないの?』

「…まあな」

『ふーん』


以上、会話終了。

足も少し痺れてきたしどうしようか、と考えていると遠くから乃木くんが走ってきた。
動物フェロモンのおかげか、膝に乗っていた子犬が目を覚まして、乃木くんの近くに甘えるように擦り寄った。


「二人でいたんだ」

『まあ』

「お前、文化祭のは…」

「ぬけてきた」


乃木くんも、日向が心配だったのかな。いつも気にしてるようだし、一緒にいたら日向の気持ちなんて丸わかりなんだろうか。


「邪魔したかな?」

『何が?むしろ助かった』

「え?」


痺れかけた足をくずし揉む。完全に痺れる前に乃木くんがきてくれたおかげで助かった。
子犬の代わりに今度はいつも乃木くんが抱っこしてる兎が近寄ってきたので頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めた。


「佐倉は?」

『私ここ』

「あ、えっと、佐倉蜜柑の方」

『でしょうね。蜜柑は特力系じゃない?多分』

「そうなんだ、佐倉は行かなくていいのか?」

『…さっきから佐倉佐倉ややこしい』

「…ごめん」


乃木くんが悪いわけじゃないけど。ややこしいのは事実だ。


『華鈴でいいわ』

「う、ん。わかった」


女の子の下の名前は呼び慣れていないのか。蛍のことも今井って呼んでたし。

乃木くんが来たことで、一人じゃなくなった日向。
ここにいるのは二人の邪魔になりそうな感じがするし、どこかで時間でも潰そうかな。

立ち上がり、スカートについた小さな土を払いベアの小屋にでも行こうとしたけど、下から腕を引っ張られた。


『痛いんだけど』

「どこ行くんだ?」


立ち上がったのに逆戻り。
しかも後ろに引っ張られたせいで日向の膝上に尻餅をつく形になってしまった。絶対痛かっただろう悪いことをしたかな、と思うけど、引っ張ったのはそっちだ。


『二人の邪魔になりそうだし、別のところ行こうかなと』

「俺も流架もそんな事思ってねえよ」

「そうだよ、えっと、華鈴さえ良ければここにいて」


やはり呼び慣れてないのだろうか、少し顔が赤くなる乃木くんがなんだか可愛く思えた。


『じゃあお言葉に甘えて』


動くのめんどくさいし。
流石に膝の上に乗りっぱなしは嫌なので、おりて横に座る。
そんな私たちを見た乃木くんがくすりと笑った。


「何だ?」

「いや、前もこんな感じで二人共寝てたなって」

『前?』

「華鈴にとって初めての能力別授業の時、二人共木にもたれかかってぐっすり眠ってたから」


…ああ、あの時のことか。

ついつい眠気に負けて眠ってしまったあの日。乃木くんは居なかったけどもしかしたら、私たちが寝てる間に来ていたのかも。


『また寝る?』

「次は放っておくぞ」

『前も放置される思ったけど』

「棗は優しいからそんな事しないよ」

『優しいんだ』

「どーゆー意味だ」

『そのまま』


普段の態度なんて見てたら、優しいなんて思わないだろうけど、
一番初めに蜜柑が試験を受ける時に、後から追いかけようとした私にこっそり耳打ちして心配してくれたり、外で寝てるのを放置せずに一緒に居てくれたり、本当は優しいのなんてもう知っている。


『あ、やばい』

「何だよ」

『眠い』

「はあ?」


仕方ないじゃないの。たまにあるでしょ、急に眠気来る事。それと同じ現象が今私の中で起こってる。

日陰だけど、気温が丁度よく、瞼が下がってくる。食後の薬、今日は飲み忘れたから特力系のクラスに着いてから飲もうとしてたのを忘れていた。


「まじかよ」

『薬、飲んで、ないの、に』

「薬?」

『…すー』

「マジで寝たぞこいつ」

「は、はやいな」


首が痛くならないように、初めから棗の肩に頭を乗せて眠っている華鈴。華鈴の近くにいた兎も起こさないように離れて流架の元に戻る。


「佐倉と真逆の性格だよね」

「わけわかんねえ奴」

「棗と気が合うんじゃない?」

「誰が。…まあ、うるさいよりはマシだけどな」


二人で話していると、遠くから走ってくる足音が聞こえる。パタパタと元気よく走るのは先程特力系に向かった蜜柑だった。


「あー!華鈴やっぱここにおった!」

「うるせえ」

「佐倉静かに、起きるから」

「うっ」


華鈴が棗にもたれかかって眠っているのが気にくわないのか、外で寝てることが心配なのか、蜜柑は難しそうな顔をしてる。

静かに華鈴に近付き、地面に置いている鞄を手に取る。


「こんなとこで寝て、体調大丈夫か心配やわ」

「今日は外も暖かいし大丈夫だと思うけど」

「うーん、華鈴は人より体弱いからなぁ」

「…弱い?」


心配する蜜柑の言葉に棗が反応した。
あまり人の事を話しすぎるのも良くないと思った蜜柑は慌てて訂正する。


「あ、ちゃうちゃう、弱いってのは風邪とか引きやすいねん!気にせんといて!な!」


必死に否定する蜜柑に二人は何も言えず黙って頷くことしかできなかった。


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