ヒロトから見た少女

初めて見たとき、その無垢な瞳に目を奪われた。


数ヶ月前に瞳子姉さんが監督、キャプテンの円堂くん率いる地上最強チームとなり、俺たちエイリア学園最強チーム「ザ・ジェネシス」と最高の戦いをした。

父さんの考えは間違っていると心の何処かでは分かっていたけど、それでも今まで愛情をくれて、生きる場所をくれた人に背を向けることなんて出来なくて。

円堂くんたちと全力でぶつかって、負けた。
父さんの野望は終わってしまったけど、俺たちや姉さん、円堂くんの思いが届き、父さんも目を醒ますことができた。

その後は警察で事情聴取をしたり、慌ただしい生活だったけど、一ヶ月後にはエイリア学園となる前の生活に戻っていた。

そんな時、響さんが俺と緑川に、日時を伝え、雷門中に来るように告げた。

何があるのかわからないけど、円堂くんがいるならと、俺たちは告げられた日に雷門中に向かった。

まさか、日本代表の選抜選手に選ばれるなんて。
今度こそ、正しい方向でサッカーをすることができる、そのためには全力でプレーをして代表に選ばれないと。

緊張と期待の中、俺も緑川も無事日本代表に選ばれた。新しい監督、見たこともない選手、少し不安もあったが円堂くんがいるこのチームは世界の頂上に立つことができると信じていた。

そして次の日、監督の娘である久遠冬花さんの紹介を終えてから、練習に移ろうとした時、芝生の斜面でおそらく転んだであろう、女の子の声が聞こえた。
木の陰に隠れていて、はっきりと姿は見えなかったはずなのに、円堂くん、それに風丸くんが真っ先にその少女の元へ走った。


「誰だ?」

「さあ?」


綱海くんが周りの人に聞くが、誰も知らないみたいで俺も首を傾げる。
風丸くんに手を引かれ、立ち上がった少女が二人のユニフォームの裾を掴みながらゆっくりこちらに歩いてきた。

その姿がはっきり自分達の視界に入ると、皆が驚いた顔をする。声を出して叫ばなかっただけすごいと思った。


『えっと、その、白露真雪です。久遠さんに言われてサポートすることになりました。よろしくお願いします』


少女、白露真雪は視線を下を向けながら自己紹介をした。周りがお互い視線を合わせて、マジ?みたいな顔をする。実際、俺も緑川と顔を合わせてそんな顔をしていたのだろう。


「サポートって監督…」

「響さんと私で決めたことだ、お前たちを強くしてもらう」

『で、でも、私、そんなことできるか…!ごめんなさいぃぃ!』


円堂くんが監督に問うと、監督ははっきりと告げた。

強くしてもらう、と

正直、この少女にそんなことが出来るとは思えない。普通の女の子、というわけではないが、サッカーとは無縁そうな女の子だ。

監督の言葉を否定しようとした白露さんは監督にギロリと睨まれて怯えていたのが少し可愛かった。


「よくわからないけど、よろしくな!真雪!」


円堂くんが白露さんに手を差し出し握手を求めると、初めて下げていた視線をあげ、微笑んでそれに答えた。

俺に向けた笑顔ではなかったけど、恥ずかしながら胸が高鳴るのを感じた。
テレビ越しで見る笑顔でもなく、素朴な感じでこの場で微笑んだ彼女はすごく可愛かった。

そして、周りを確認するようにきょろきょろ俺たちメンバーを見てから、また下を向いてしまったけど、その一瞬目が合った時、キラキラ輝いていた彼女の瞳に俺は目を奪われた。

それから監督の指示で、すぐに練習に入ることになった。


「白露真雪ちゃん、か」

「どうしたんだ?」

「…いや、何もないよ」

「まさかヒロト…」


準備運動をしている時に、思わず溢れた声を緑川に聞かれていた。
何かを感じ取った緑川は少し引き気味で俺を見てきた。失礼な奴だな。


緑川には悪いけど、本気だ


チラリと真雪ちゃんの方に視線を向けると、先程とは違い、チーム全体をあの瞳でジッと見つめていた。その表情は困り顔でも、笑顔でもないが真剣に見つめるその表情に俺の心は鷲掴みにされた。

なかなか重症かもしれない。



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ヒロトは無垢な瞳に惹かれる
ちなみにみんな意識しだすと名前呼び