円堂から見た少女

俺のことを太陽みたいだと笑顔で伝えてくれる真雪。

俺からすれば、真雪の方がいつも支えてくれて言葉じゃ表せないくらいすごく大切な人だ。

真雪はどちらかと言えば俺とは真逆の性格なのかもしれない。小さい頃から人前に出るのが嫌いで、控えめなタイプだった。
俺は周りを気にせず突っ走るタイプで、そんな俺を人目につかずサポートしてくれていたんだと今ならわかる。

公園でサッカーをする時も、初めてのお使いの時も、真雪はそばにいた。
サッカーをする時はタオルや水筒、救急箱を持ってきたし、お使いの時もレタスとキャベツがわからない時教えてくれたり、母ちゃんに貰ったメモをなくしても真雪が覚えていて買うことができた。


いつもと変わらず小学校が終わってから5時まで河川敷でサッカーをしていると、真雪は時々練習を見にきた。練習と言っても一人でドリブルしたりリフティングしたり、練習と言えないかもしれないが。

真雪は影になるベンチに座り、一緒にサッカーはしないがずっと俺のプレーを見ていた。
見ているだけで楽しいのか?やりたくならないのか?と思って何回か声をかけたこともあるが真雪は首を横に振るだけだった。

そんな感じで人目につかないように支えてくれてる真雪の力に気付いたのは小学生の時。
いつもと変わらず練習をしていると、真雪が近くまで来た。ベンチから動くことがなかった真雪に俺は驚いたのを覚えている。


『守くん』

「どうした真雪?サッカーやるか!?」

『右肩、痛めてる』

「え?」

『あと、ボールを受け止める時、足だけに力を入れてるから太腿も。もう少しお腹に力を入れてふんばるといいと思うよ』

「真雪?」

『…え、あ…、ごめんなさい守くん!余計な口出しして』


ハッとした真雪はこの状況に追いついていない感じだった。
無意識だったのかわからないけど、いつも見てるだけの真雪が俺の近くに来てアドバイスすることに抵抗があったのだろうけど、俺はそんなことより嬉しさでいっぱいだった。


「真雪すげえ!!確かに最近右のパンチングがうまくいかないって思ってたんだ!」

『ふえぇ〜』

「あ、ごめん」


嬉しさのあまり、肩を掴んで前後になかなかの力で揺らしてしまった。真雪は目を回してしまったけど、意識を保つと俺の方を見て微笑んだ。


『今まで、守くんのサッカー見てたらなんか、感じたんです』

「感じた?」

『一番はじめに、出会った時にサッカーを見たいと思いました。きっとこうなるのが直感でわかっていたからなんでしょうね』

「どういうことだ?」


真雪の言うことがさっぱりわからない。
ただ、真雪もなぜか嬉しそうにしていた。


『私、守くんの力になれるってことです』

「力に?」

『今まで不安定だったんですけど、最近は確実になりました。私、きっと人の身体の中を感じることができるんです』

「身体の中って、ええ!?」

『あ、でも、それって…』


さっきまで嬉しそうにしていたのに、真雪の表情は一気に暗くなった。
言葉の続きをあやふやにされたけど、俺にはわかった。きっと勝手に人の身体を見て、気持ち悪いと思われてしまうかもしれない、と思ったのだろう。

そんなこと、気にしなくていいのに


「じゃあ真雪!これから俺の練習もっと見てくれよ!」

『守くん…』

「それから、たまにでいいからシュート打ってくれよー!俺もゴールキーパーの練習したい!」

『………』

「そんで、さっきみたいにアドバイスしてくれよ?自分の体なのに全然わかんないし、真雪に見てもらって俺、強くなりたい!」

『…まも、る、くん…』

「だから、笑え真雪!」


ぽろぽろ涙を流す真雪は、何も言わずに頷き、涙を流しながら微笑んだ。日が沈みかけている赤い光が真雪の涙に反射してすごく綺麗だった。


「俺いつか、じいちゃんみたいなすげーサッカープレイヤーになる」

『うん』

「大きな夢だってわかってる。でも、いつか真雪に世界の頂点を見せてやる」

『…!』

「そのためには真雪の力も必要だ、一緒にがんばろうな!」


大きな目を更に見開いてる真雪の手を取り、家に帰るため足を進めた。


『約束、ですよ』

「ああ!約束だ」


振り返らなかったけど、ぎゅっと握り返された真雪の手に温かさを感じ、俺たちは夢みたいな大きな約束をした。子供だから簡単に言えたことだろうと思っていた。



それから数年後、俺たちの夢は実現した。



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円堂とは一番深い絆なんじゃないかな