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引き千切られた縄が床に落ちる。

「縄を……!?」
「王の御前だ! 捕らえろ!」

兵士達が数人がかりでジュリアを押さえようと飛び付く。

ジュリアは動じず、口を開く。

「立て……天を焦がす焔……」

精霊術の詠唱。
ジュリアを中心に、魔法陣が浮かび上がる。

いち早く察したガイアスが兵に向かって声を上げる。

「退け!」
「遅いわよ! バーンスプレッド!」

詠唱が終わると同時に、魔法陣から炎が上がる。

兵士達が熱さに耐え兼ねて床を転がる。
鎧の下の衣服に移った火はなかなか消えない。

その隙に、ジュリアは外へと走って行った。
妨害しようとした兵士は蹴り飛ばして。

暴走した兵士とはいえ、大事な民を傷付けられた。
ジュリアだって、濡れたままの薄着で外に出ればどうなるかわからない。

「出る。ウィンガル、ついて来い」
「はっ!」

ガイアスが武器を手に立ち上がり、彼の斜め後ろにウィンガルが控えた。


*****


カン・バルク出口。

閉ざされた門を精霊術で飛び越え、ジュリアはモン高原に降り立った。

彼女を追うために門が開く。

その時だった。

「うわぁあああ!!」

悲鳴が響く。

ガイアスとウィンガルは、悲鳴とジュリアを天秤にかけ、ほんの一瞬だけ判断が遅れる。

その一瞬で、ジュリアは悲鳴の方へ向かっていた。

悲鳴の主は老人だった。
今にも魔物に襲われそうで、孫らしき子どもを庇うように覆い被さる。

ジュリアは跳躍し、魔物に鋭い蹴りを一撃。
起き上がり、向かってくる魔物に、蹴りをさらに数発叩き込む。

魔物が沈黙してから、老人と子どもを見る。

「ぶじ、みたい……です、ね……」

流暢に喋るつもりが、口が上手く回らない。

老人と子どもの返事を待てずに、ジュリアはその場に倒れ込んだ。

カン・バルクまでの道中で削られた体力。
今しがた、無理に精霊術を使い、魔物を倒すのにも体力を使った。

もう、限界だった。

(こんなんじゃ、このまま逃げても死んでたわね)

自分の弱さが悔しくて、ジュリアは歯を食いしばる。

そこに、ガイアスとウィンガルが追い付く。

ガイアスは民の無事を確認してから、ジュリアに手を伸ばした。
片腕で抱き上げ、担ぐように持ち上げる。

元々なのか、道中で痩せてしまったのか、少女の身体はひどく軽かった。

「ウィンガル、彼らを」
「かしこまりました」

ウィンガルは老人と子どもに近付き、家まで送るよう告げる。

ガイアスはジュリアを抱いたまま、城へと戻った。


*****


城へと戻ったガイアスは、侍女にジュリアを預けた。

「湯浴みを」
「お任せください」

年嵩の侍女はもう一人侍女を呼び、二人でジュリアを客室の浴室へと運ぶ。

これから、彼女をどう扱うべきか。
彼女に焼かれた兵士の罰はどうするか。焼かれた時点で罰せられたというには、彼女への仕打ちは酷すぎた。

ガイアスはジュリアを見送ってから、民の陳情を聞くために謁見の間へと戻った。










 




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