7
目を覚ましたジュリア。
知らない天井──否、知っている。
ガイアス城の客室だ。
「そっか、私倒れたんだった……」
残念そうに呟く。
扉から、ノックの音。
ジュリアはベッドから起き上がり、返事をする。
入ってきたのは、メイド服に身を包んだ侍女だった。
「お目覚めですね。よかったです」
安心したような顔。
きっと、彼女は心の底から心配してくれている。
「ありがとうございます」
ジュリアは素直に頭を下げる。
それを見てから、侍女は本題に入る。
「体調はいかがですか? 王が謁見の間にお呼びです」
「謁見の間……? ああ、あそこか」
自分が連れて来られて、ガイアスと対峙した場所だ。
熱は出ていない。行かない理由も特に無い。
「わかりました。すぐに……」
「いえ。食事を摂られて、お召し替えを。それくらいは待てる、とのことです」
それなら、とジュリアは用意された食事を摂ってから、これまた用意された衣服に着替え、謁見の間に向かった。
****
行けば、先程の子どもと老人。
見た感じ怪我はなく、元気そうだ。
「この者達が、お前に礼を言いたいとのことだ」
ガイアスが短く告げる。
「危ないところを助けていただき……王の客人だったとは!」
「おねえちゃん、ありがとう!」
客人ではない。
体が勝手に動いただけで、当時は半分朦朧としていて、助けた自覚も薄い。
だが、それをわざわざ口に出すのは憚られた。
「いえ、ご無事でよかったです」
ジュリアは小さく微笑む。
用事はそれだけだった。民の声を伝えるためだけ。
もう用はないなら、と下がろうとした時に、次の陳情が。
「王、流行り病が治まりません。医師も倒れ始め……」
最後まで聞けなかったが、概要は把握した。
*****
部屋に戻ったジュリア。
何をするでもなく、ベッドに腰掛けていたら、ノックの音。
また侍女だろうか、と返事をしたら、入ってきたのはア・ジュール王だった。
ジュリアは慌てて居住まいを正す。
「そのままでいい。今回も……」
ガイアスが言いかけて、遮るようにジュリアが声を出した。
「謝罪はいりません。また、兵の独断でしょう?」
「……ああ」
そこで、自分の数々の無礼を思い出すジュリア。
「私も極限状態だったので、失礼を……」
「それこそ謝る必要はない」
しばしの沈黙。
探るように、ジュリアが口を開く。
「病が、流行ってるんですね」
「ああ。高熱にうなされ、感染力も高い。医師や看護師が対応しているが、数が足りていない」
思っていたより深刻なようだ。
「……私、医学生なんです。成績もそれなりに良いんですけど」
ジュリアはまっすぐガイアスを見つめる。
「お役に、立てますか?」
覚悟を決めた目だった。
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