5.0 (私)
只今の時刻は4時。夕方ではない、朝だ。
何故こんな時間に起きているかというと、たった今切られた通話の相手に原因があると思う。私が謹慎中の皺寄せがどうやら彼に行っているようで、やたら疲れた声をしていた。
そんなことよりも電話の内容である。ことの発端は数日遡り、零君が初めてうちに来た日の事だ。寝落ちした少年を寝室に運んだ後、念のため名前と年齢、外見の特徴から個人を特定しようとした。生憎だが、謹慎中なので後輩にお願いし、その結果がつい先程の電話にて知らされたのである。
やはり、本人の主張が正しいと言える。つまるところ、フルヤレイという中学三年生の中に日本人離れした外見の少年は居ないと言うことだ。今日で5日目、少年が何処から来たか分からないとは言え両親はきっと心配しているだろう。
そう、彼は私と同じ場所に居るべき人間ではない。どこがどう交差したか分からないが、今現在の零君はどう考えたってこの場所にいて、同じ時を過ごしているが、これは本来あるべき姿ではないのだから。
それなのにどうしてだろう。昨日自覚してからか、どんどん零君の存在が大きくなっていくことに目を背けることが出来ないでいる。蓋をするのは得意だったというのに。多分きっと、自覚する前から大きくなっていたせいで、手遅れだったのだろう。
おっと、誤解しないでいただきたい。私は決してそういう存在として零君を見ている訳ではない。…断じて違う。一人っ子だった私からすると弟とはどんなものか分からないが、ただ、家族のような愛しさを感じてしまうのだ。
たった一人きりになってしまった私には、零君の存在が痛々しいほどに眩しくて、そして溶けてしまいそうなほどに暖かいのだ。そして一度断ったはずの感情がぶわりと沸き起こってしまったのだ、それに蓋をしようなんて無理な話だ。
零君があるべき場所に帰ったとき、あの寝室を再び私が使うことになるとき。その時私はもう一度、感情を断つことが出来るのだろうか。でも、そんな事は私の都合でしかない。もし、もしである。零君が本当の意味で私と仲良くなりたいと思っているのであれば、私のしようとしている線引きは酷く残酷なものでしかない。
今私の出来ることは何だろうか。明日帰るとも分からない少年とどう過ごすべきなのだろうか。…私一人で考えたって答えなんて出てくるわけがない。人と人とのことなのだから、私が決めていい答えなんて一つもないのだから。私はもっと零君と向き合うべきなのだろう。
…起きてきたら話をしよう、そうしよう。だからもう少しだけ、眠らせてほしい。
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