5.0 (俺)
自分で言うのも何だが、女子に告白されたことは何度かある。ただ、部活や学業に専念したい俺からすれば迷惑でしかなかった。正直、女子達の言う好きだという感情が全く理解できなかった。
そう、思っていた。名前に会って、関わって、知っていくうちに心を許せるようになり。考える度に心臓がぎゅっと掴まれるような痛みが走るのだ。
気が付いたら名前のことを考えていて、名前が俺のことを考えてくれていると嬉しくて。あのふわっと緩んだような笑顔で甘やかされると、どうしようもなく胸が張り裂けそうになる。これが恋なのだろう。
だが、初恋は実らないとはよく言ったもので、俺のこの初恋もとてもじゃないが実りそうにない。この気持ちを伝えて、今のこのぬるま湯のような丁度良い関係を崩せるほど俺は大人じゃなかった。
実らないのであれば、いっそ隠し通せばいいのだ。俺が抱いた感情なんて俺以外に分かる訳がないのだから。年齢以前の問題で、俺と名前は住む世界が違うのだ。こんな初恋をするだなんて誰が思っただろうか。
それでもどこか、初めて抱くこの感情が暖かくて、ずっと傍に居たいと思ってしまう。帰りたいのに、帰りたくない。この矛盾した感情がぐるぐると渦を巻いて、もやもやとした感情を作り出す。
俺がもっと大人で、いっそ名前よりも年上で、変なことに巻き込まれることなく出会えていたのなら…俺は名前を好きになっただろうか?分からない。結局俺が今考えているような『もしも』の話はそれ以上でもそれ以下でもない。
こんな馬鹿げた、ガキでしかない考えを朝っぱらからするものではない。どっと疲れたし、気が滅入るだけだ。頭で分かっていても、昨日から妙に名前のことが頭から離れない。
駄目だ、この寝室でどれだけ考えたって名前がチラつくに決まっている。この部屋の持ち主自信のものはそう多くはないが、今まで過ごしてきたというだけあってこの空間そのものに名前を感じてしまうのだ。
何というか、相当重症じゃないか?まさか自分がこんなにも年相応の…思春期真っ只中と言わんばかりの悩みを持つとは思わなかった。どこか達観したところがあると自分で思っていたが大きな間違いだ。
…とりあえず、名前が起きてくるまでの間はリビングのあの座り心地の良いソファに世話になるとしよう。
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