私は帝丹小学校に通っている。クラスはコナンくんたちと同じだ。哀ちゃんが私のことを気にかけてくれて、いわゆる少年探偵団のみんなと一緒に行動している。やはり哀ちゃんは元大人なだけあって、落ち着いている。側にいると楽だ。歩美ちゃんたちもとっても良い子だけど、元気すぎてずっと側にいると体力が追いつかない。かわいいけど。
私は彼らよりも年齢が上だから少し落ち着いてるのは当たり前なんだけど、どうやら私のことを引っ込み思案な性格だと勘違いしてくれたようで、学校に居るのは気楽だ。工藤邸のように監視カメラもない(はずだ)し、会話の内容も昨日の仮面ヤイバーについてだったり、給食の内容についてだったりする。気楽だ。
哀ちゃんとはお世話になっている家もお隣さんなので、行きも帰りも一緒だ。そして今日も少年探偵団たちと帰路につく。
歩美ちゃんの着ている服が可愛い。子供服ってそれなりに高いんだよね。キュートな形のワンピース。哀ちゃんの服は可愛らしいというよりシンプルだ。色は大人っぽい。自分で選んでいるんだろうな。タイトめのスカートが似合ってる。
贅沢を言えない立場だとはわかってるけど、羨ましいと思う。毎朝髪を巻きたいとか化粧したいとか言わないけど、スカートやワンピースが着たい。工藤新一くんのお下がりなだけに、質は最高に良い服だけど、どう着ても結局は男物。できるだけ男の子っぽくないような組み合わせを選んでいるけど、さすがにスカートはない。スカート、うらやましいなぁ。
そう考えていたのが見抜かれたのか、コナンくんに声をかけられた。
「名前って新一兄ちゃんのお下がりしか着てねえな」
「うん、何年も前のものらしいけど、質がいいからまだ着れるんだよね」
君のだけどね。ありがとうね。と心の中で付け足しておく。わがままは言えない。男物だけど、質は高いんだから。
「スカート、買って貰えばいいじゃない」
「へっ」
右隣にいた哀ちゃんにそんなことを言われてしまった。え?やっぱり心を読まれた?そんなスキルある?それとも私がわかりやすい?ぽかんとしていたら、呆れたような顔で続けられる。
「あなた、歩美ちゃんのワンピースと私のスカートばっかり見てたわ。着たいんでしょ?買って貰えばいいじゃない、あの男に」
「うーん」
「昴さん優しいから頼めばなんでも買ってくれるぜ」
「あなたね…」
コナンくんの言ってることはよくわかる。あの人はお財布の紐が緩そうだ。稼ぎが良いからかもしれないけど、スーパーで値段を気にせずにお買い物をしている。前にテーブルに置かれたままのぐしゃぐしゃになったレシートを見たときに驚いた。お買い物が下手だ。もちろん私がスカートを欲しがってもダメだと言われないこともわかる。買ってくれるだろう。
「言えないよ」
未だに「ただいま」すら言えない関係だ。お母さんに服買って〜と強請るのとはわけが違う。彼は他人だ。いわゆるシェアハウスのようなものだ。私が勝手に借りてるだけだけど。夕飯のリクエストすらしないのに、服を買って下さいなんて言えない。身長と胸と一緒に大人の遠慮というものも無くなって欲しかった。見た目は子供でも頭脳というより中身は大人だし、あんまり迷惑かけられないなあと思ってしまう。
私の微妙な返答にコナンくんと哀ちゃんは心配そうな表情を浮かべた。
「まさか、うまくいってねーのか?」
「なにが?」
「昴さんとの関係だよ」
「やっぱり博士の家にいらっしゃいよ」
「いや、うまくいってないというわけではなくて」
うまくいっていると言えば、うまくいっている、と思う。彼への負担は最小限に抑えられているのではないかと思う。食費や洗濯の量はどうにもならないけど、困らせるようなことはしていないはずだ。決して役に立っているというわけではないけど。
「問題ないよ」