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「あははは、次は、私、王様〜! 女王様〜!」
「クジひけよ!」
「よーし、でわぁ〜、とても口では言えないハズカシイ〜エピソード、語ってもらおー! じゃ〜あ〜、そうだな〜……あ、直斗くん!」
「何でもアリだな……無視していーぞ、直斗」
「……いえ、いいですよ。その代わり、僕が話したら、皆さんにも"あること"を話してもらいます」
「いーよー」
直斗の口から語られた"恥ずかしいエピソード"は、自身の生まれの話だった。
「うぁ、なんという急速冷凍……」
最終的に自分ももっと勉強しないと、とのことだったが、しかし直斗はそれ以上口を開こうとしない。
「……。……え、終わり? オチは?」
「いや、そういうのを期待されても」
「恥っずかし〜。ナオトくん、恥っずかし〜」
もはや話の内容はなんでもいいらしい……。
「帰りてえ……」
「はふぅ……眠い」
「では、次は皆さんの番ですよ。答えてもらいましょう。皆さんが本当は、事件とどう関わっているのか」
「お前な……空気読めな過ぎて逆にオモシロイよ……」
陽介はすっかり疲れた様子だが……それどころではない。
有里は事件とは何も関係がなく、ましてテレビの中の世界など知らないのだ。事件について聞かせるわけにはいかない。
まずいと思い有里を見ると、相変わらず気の抜けた表情で笑っている……かわいい……――いや違う。
今度は陽介と里中に視線で訴えかける。すると2人も気づいたらしい。
「ちょっ、その話は――」
里中が話をやめさせようとしたが、
「えっと〜、誘拐された人を〜、テレビに入って助けに行きま〜す! それで〜、うようよしてるシャドウたちを〜、ペルソナで"ペルソナァー!"って……」
一歩遅かった。
「ば、ばかおまッ……」
今度は陽介が止めようとするが、全く聞いていない。
直斗は真に受けていない様子だが……。
「ホントらもんッ! ペルソナーっ!」
「あーもー! この酔っ払いコンビは!」
「……ペルソナ……?」
有里がそう呟いた。
「私も出せるよ、ペルソナ、いっぱい……」
「え?」
「いっぱい?」
「ペ……ペル……ペルソナァー!」
……先ほどの天城の真似だろうか。
何故か手で拳銃の形を作り、こめかみにそれを当てながら叫ぶ有里。
当然ながら何も起こらない。
再び有里を見ると、うつらうつらとし始めていた。寝言……?
「……酔っ払いコンビじゃなくて、酔っ払いトリオだわ、コレ……」
ともかく、今は有里が酔っ払っていて助かったが……。
「……話す気が無いのは分かりました。大体、何にそんな酔っ払ってるんですか。コレ、お酒じゃないですよ?」
「まぁったまた〜」
天城が茶化すが、店に確認を取ったというのだから、どうやら本当らしい。
「いいじゃらいろ、どっちれも……。うふー、なんか気持ちよくらってきた……おやすみらさ〜い……」
「ちょっ、先輩! おいおい三人も潰れて、どやって帰んだよ!」
「ハァ……なんか俺、色々頭痛してきた……。こりゃ、二日酔いだな……」
「クマはまだ、じぇ〜んじぇんダイジョブらっすお! このひょうひで、朝まで飲むらろー!」
「のじょむところらー……」
「だから……お酒じゃないって言ってんでしょうが! バカ軍団ですか!?」
修学旅行最後の夜は更けていく……。