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【永視点】

今日からこの町にある"八十神高校"に転入することになっている。

都会と違って景色があまり変わらないため若干道に迷ったが、時間通りに学校に着いた。やたらと早い時間に起こしてくれたシンジさんには感謝しなければ。

ともあれ職員室に行くと、出っ歯な男性教師に呼ばれた。急いで近寄ると、横には銀髪の男子生徒がいた。もう一人転入生がいるようだ。

目が合ったので会釈をしておいたが、彼のことはどこかで見たような気がする……。

「今日から貴様らの担任になる諸岡だ。いいかね! ここは貴様らのいたイカガワシイ街とは――」

話の長い先生らしい。


*****


教室に着くまでの間、もう一人の転校生である瀬多総司くんと少し話をした。

「有里さんも、昨日引っ越してきたんだよね」

「え? ……うん」

「昨日、電車で見かけたから」

「ああ……私も昨日、瀬多くんのこと見かけたよ」

「そうだったのか」

「コラーッ! いい加減にせんか! 全く最近の若いモンはすぐ出会い系だのなんだのと――」

諸岡先生は最近の若者に何か恨みでもあるのだろうか。

ともあれ、2年2組、教室。瀬多くんと共に黒板の前に立った。

「――あー、それからね。不本意ながら転校生を紹介する。ただれた都会から、へんぴな地方都市に飛ばされてきた哀れな奴らだ。いわば落ち武者だ、分かるな? 間違っても色目など使わんように! では、瀬多、有里。簡単に自己紹介しなさい」

諸岡先生に促され、黒板に名前を書いてから自己紹介をする。

「誰が落ち武者だ。――瀬多総司です。どうぞよろしく」

「……有里永です。よろしくお願いします」

「む……貴様らの名は"腐ったミカン帳"に刻んでおくからな……」

瀬多くんの有り余る勇気の結果、巻き込まれたようだ。

諸岡先生の話は続いている……。

「センセー。転校生の席、ここでいいですかー?」

緑色のジャージを着た髪の短い女子が手を上げた。

「あ? そうか。よし、じゃあ貴様らの席はあそこだ。さっさと着席しろ!」

瀬多くんはジャージの子の隣、私は後ろの席になった。

席に着く途中、ちらほらと諸岡先生――モロキンに対するボヤきが聞こえた。

「静かにしろ、貴様ら! 出席を取るから折り目正しく返事しろ!」

新しい学校生活が始まる。

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