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HRが終わり、やっと帰れるかという頃に校内放送が入った。緊急職員会議があるため、指示があるまで教室に待機ということらしい。

席を立ってしまったが、とりあえず着席し直した。

生徒たちはそれぞれ雑談を始める。

「ね……そう言えばさ、前に話したやつ、やってみた? ほら、雨の夜中に……ってやつ」

「あ、ごめん、やってない」

「ハハ、いいって、当然だし。けど、隣の組の男子、"俺の運命の相手は山野アナだー!"とか叫んでたって」

先ほどのジャージの子と前の席の赤いカーディガンの子は仲が良いようだ。

そして何故か隣の席の茶髪の男子はずっと机に突っ伏している。

教室内をぼうっと眺めていると、再び放送が入った。

『全校生徒にお知らせします。学区内で、事件が発生しました。通学路に警察官が動員されています。出来るだけ保護者の方と連絡を取り、落ち着いて、速やかに下校してください。警察官の邪魔をせず、寄り道などしないようにしてください。繰り返し、お知らせします……』

転入初日から物騒なことが起こったようだが、もう帰っていいらしい。

保護者と連絡を取れとは言うが、わざわざシンジさんを迎えに来させるわけにはいかない。

荷物を持ち、席を立つと、

「あれ、二人とも帰り一人? よかったら、一緒に帰んない? あー、あたし里中千枝ね。ヨロシク!」

ジャージの子――里中さんは快活に笑った。

瀬多くんも誘われているようだ。

「で、こっちは天城雪子ね」

「あ、初めまして……。なんか、急でごめんね……」

天城さんは里中さんとは対照的に大人しい性格らしい。

「のぁ、謝んないでよ。あたし失礼な人みたいじゃん。ちょっと話を聞きたいなーって、それだけだってば」

2人が話していると、突然顔色の悪い男子が里中さんに何かを手渡した。

よく見ると朝から突っ伏していた茶髪の男子だ。

「あ、えーと、里中……さん。これ、スゲー、面白かったです。技の繰り出しが流石の本場つーか……申し訳ない! 事故なんだ! バイト代入るまで待って! じゃ!」

逃げる茶髪の男子を里中さんが追いかけ捕まえると、ドンと鈍い音がした。

「待てコラ! 貸したDVDに何した?」

「どわっ!」

「なんで!? 信じられない! ヒビ入ってんじゃん……。あたしの"成龍伝説"がぁぁぁ……」

「俺のも割れそう……。つ、机のカドが、直に……」

急所に直撃したらしい。だが里中さんの耳には入っていないようだ。

天城さんが心配して声をかけるが、

「いいよ、雪子。花村なんか、放っといて帰ろ」

里中さんと天城さんは教室を出て行った。

花村と呼ばれた男子は未だ悶絶している。

一生理解できないものではあるが、かなり痛そうだ……。

やや青ざめている瀬多くんと顔を見合わせ、

「そっとしておこう……」

頷き、二人を追った。

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