3
*****
「キミさ、雪子だよね。こ、これからどっか、遊びに行かない?」
「え……だ、誰?」
突然他校の男子が現れ、ナンパが始まった。
何事かと眺めている生徒たちから"天城越え"という言葉が聞こえてくる。
「い、行かない……」
どうやら天城越えには失敗したらしい。
「……じゃあキミでいいよ、来るだろ? なあ」
「えっ」
気付くと彼は私の腕を掴んでいた。
「っおい」
瀬多くんが私と彼の間に割って入り、腕を離させると、彼は舌打ちをして走り去って行った。
「大丈夫か?」
「うん……ありがとう」
そう言うと、瀬多くんは安心したように笑っていた。心配性なんだろうか。
「あ、あの人……何の用だったんだろ……」
「何の用って……デートのお誘いでしょ、どう見たって」
「え、そうなの……?」
天城さんは見かけによらず天然のようだ。
「よう天城、また悩める男子フッたのか?」
教室で悶絶していた花村くんは復活したのか、自転車を押してやって来た。
「まったく罪作りだな……俺も去年、バッサリ斬られたもんなあ」
「別に、そんな事してないよ?」
「え、マジで?」
そして花村くんは冗談半分にデートに誘い、案の定バッサリ斬られていた。
「僅かでも期待したオレがバカだったよ……。って、あ、有里さん! 俺隣の席の花村陽介っす! これからよろしく! わかんないことあったら何でも聞いてくれよな!」
「え? あ、はい」
「うわっ、口説いてるよこの人」
「そういうんじゃねーよ! 俺はただ隣の席同士仲良くしようと――」
「あーはいはい。花村は置いといて、行こっか」
「聞けよ! つーか、お前ら、あんま転校生イジメんなよー」
「話聞くだけだってば!」
自転車で走り去る花村くんの背に里中さんが反論する。
校門前で騒いだせいか、野次馬たちが集まっていた。
「ほら、もう行こ。なんか注目されてるし」