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「キミさ、雪子だよね。こ、これからどっか、遊びに行かない?」

「え……だ、誰?」

突然他校の男子が現れ、ナンパが始まった。

何事かと眺めている生徒たちから"天城越え"という言葉が聞こえてくる。

「い、行かない……」

どうやら天城越えには失敗したらしい。

「……じゃあキミでいいよ、来るだろ? なあ」

「えっ」

気付くと彼は私の腕を掴んでいた。

「っおい」

瀬多くんが私と彼の間に割って入り、腕を離させると、彼は舌打ちをして走り去って行った。

「大丈夫か?」

「うん……ありがとう」

そう言うと、瀬多くんは安心したように笑っていた。心配性なんだろうか。

「あ、あの人……何の用だったんだろ……」

「何の用って……デートのお誘いでしょ、どう見たって」

「え、そうなの……?」

天城さんは見かけによらず天然のようだ。

「よう天城、また悩める男子フッたのか?」

教室で悶絶していた花村くんは復活したのか、自転車を押してやって来た。

「まったく罪作りだな……俺も去年、バッサリ斬られたもんなあ」

「別に、そんな事してないよ?」

「え、マジで?」

そして花村くんは冗談半分にデートに誘い、案の定バッサリ斬られていた。

「僅かでも期待したオレがバカだったよ……。って、あ、有里さん! 俺隣の席の花村陽介っす! これからよろしく! わかんないことあったら何でも聞いてくれよな!」

「え? あ、はい」

「うわっ、口説いてるよこの人」

「そういうんじゃねーよ! 俺はただ隣の席同士仲良くしようと――」

「あーはいはい。花村は置いといて、行こっか」

「聞けよ! つーか、お前ら、あんま転校生イジメんなよー」

「話聞くだけだってば!」

自転車で走り去る花村くんの背に里中さんが反論する。

校門前で騒いだせいか、野次馬たちが集まっていた。

「ほら、もう行こ。なんか注目されてるし」

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