高専時代
とある平日、高専のグラウンドではいつも通り生徒同士での訓練が行われていた。
「……伊地知くん、手加減してますか?」
「手加減!? し、してないです……!」
新入生は伊地知ただ1人だったため、2年生と合同で訓練している。2年生も奇数人なので人数的にも都合が良いのだ。
伊地知は呪霊を視認できるものの、術式や呪力の才能に恵まれているわけではなく、体術もイマイチ。男女の差を持ってしても律子から1本取れたことはなかった。
「あの、すみません……七海さん、任務帰りですよね? 毎回こんなことに付き合わせてしまって……」
「? 嫌ならそもそもやりません」
「っ、ありがとうございます」
謝る伊地知を見て不思議そうに首を傾げて答える律子。伊地知はその返答に安心すると同時にやや顔を赤くして照れた。
そしてその様子を離れたところから覗き見ている2人――律子の同級生である灰原と兄の七海。
「律子は不器用だね!」
非常にわかりづらいものの律子は伊地知を好いていた。それゆえ訓練だ勉強だ任務の付き添いだなんだとよく構っているのだが、平坦な口調や変化の少ない表情のせいで伊地知にはあまり伝わっていないどころか"責任感のあるしっかり者の先輩"として尊敬の対象となっている。
「絶対両想いなのに」
「…………」
「七海、もしかして律子取られるの嫌とか?」
「そんなわけないでしょう。それに私が口を出すことじゃない。双子だからと言って何でもかんでも共有するわけでは――」
灰原は"いきなり口数増えたなあ"などと考えながら観察を続けた。
「まあ、無理をすることはありませんよ。今日はこのくらいにしましょう」
「はい……」
「どうかしましたか?」
「あの、僕はやっぱり呪術師には向いてないんじゃないかと思って……」
「そうですね、向いていないと思います」
根気よく稽古に付き合ってくれていた律子にあっさり肯定されるとは思っていなかった伊地知は驚いたものの、やはりといった感じで落ち込んだ。
「でもまだ1年生でしょう。私も入学してすぐ戦えるようになったわけじゃないですし、もし五条さんや夏油さんを見て自信をなくしているならそれは間違いですよ。あの人たちは格が違いますから比べるだけ無駄です」
「おっ、律子よくわかってんじゃーん」
「褒めてくれるのは嬉しいけど、そこまで言われると少し寂しいね」
自信をなくす伊地知を律子がフォローしているところにタイミング悪くやってくる五条と夏油。家入は少し離れたところでタバコを吹かしている。
「五条さん重いです」
「え? 聞こえない」
無遠慮に肩を組む五条を見てものすごく嫌そうな顔をする律子。五条のこの距離感のせいで1度伊地知に"勘違い"をされてから拒絶度合いが高まっている。
「こら悟、女性に乱暴はよくないよ」
「乱暴はしてねーだろって、いってぇ!! 術式は反則じゃね!?」
「いえ、乱暴されたので当然かと」
「だからしてねーっての!!」
律子は自身の術式で五条は吹っ飛ばし涼しい顔をする。それを見た夏油は特にフォローすることもなく笑っているが、伊地知は毎回オロオロしていた。