いちゃつく
「真実の手料理が食べたい」
「はあ」
急にどうしたんだろう。っていうか物食べるんだ。
「何か食べたいものでも?」
「愛妻弁当!」
「愛妻弁当?」
思わず聞き返してしまった。なんかニコニコしてるし、からかってるなこれ。
「愛妻じゃないけど弁当なら作れるよ」
「愛妻のがいいんだけど」
「仲間にワンチャンいけそうなメスの呪霊とかいないの」
「いないよ。ほんとに揺らがないなぁ君は」
「うわっ、魂痴漢しないでよ」
突然腕を掴まれて、術式を使ってくる真人。相変わらず変形されることはないけど、魂触られてぞわぞわすることには変わりない。
真人に危害を加えるつもりがないから縛り的にはセーフなんだろうけど、微妙な気分だったので私も腕を掴んでやり返した。真人はくすぐったそうにケラケラ笑っている。
それにしても愛妻弁当ってどうやって作ればいいんだろう。ごはんの上にでんぶでハート乗っけるやつ?
「愛妻でいいじゃない。俺は真実の魂の形が結構気に入ってるんだ」
「魂レベルの話なんだ……。まあ、真人の魂も意外ときれいな形してるよね意外と」
「両想いだね♡」
語尾にハートがつきそうな声音だったけど、笑顔がめちゃくちゃ性格悪そう。さすが呪霊。
真人のことは嫌いではない。好きは好きだけど恋愛かどうか判別できない。経験ないしなぁ。まあどっちでもいいか。
っていうか、最近あんまり"実験"をしていない気がする。いつもふらっと来てはしばらくだべってまたね〜みたいな。
真人が実験してないっていうのは、人が死んでないってことだから良いことなのかもしれないけど。
ぼけーっとそんなことを考えていると、横に座っていた真人がもたれかかってくる。
「重いんですけど……」
体格差考えて。
真人は体重をかけられてぷるぷるしている私に構わずちょっかいを出し始める。
頬を引っ張られたり腹をつままれたり。私のことを何だと思ってるんだろう。悟先生みたいなことするな。
そのうち調子に乗って耳とか首をくすぐってきて声が出そうになる、っていうか出た。
「んっ……」
「あれ、気持ち良かった?」
「う、はい……あの、耳、ちょっと、だめ……っ」
「それ、"身体は正直だね"ってやつ?」
「うえぇ、無理、力入らない」
くすぐりと未だのしかかってくる真人の重みに耐え切れず床にべしゃりと潰れた。
「ぐぇっ、重!」
「俺そんなに太ってる?」
「筋肉でしょ……何女子みたいなこと言ってんの」
「真実はそういうの気にしなさそうだね」
「高専でしごかれてれば太る暇もないよ」
「ふぅん。でもここは太っちゃったんだ」
「わし掴みはやめて!」
無遠慮に胸をまあまあの力で掴まれた。痛い。
「そこは太ったんじゃなくて遺伝。っていうか離してよー、ついでにどいてほしい」
「注文が多いなぁ」
と言いつつどいてくれた。今日は優しい。
「じゃあ、明日お願いね、愛妻弁当」
「えっ、明日? なら買い出ししなきゃだし今日は帰る」
「えー!?」
「えー」
やだやだと私の体を揺さぶりだした真人。幼児退行か。
「うーん、これでも駄目か。真実の魂はどうすれば揺らぐのかな?」
「最近実験してないと思ったら被検体が私になっただけだったんだ」
「人間の改造はあらかた試したからね。そんなことよりこっちが気になるからさ」
というか私の魂はそんなに揺らいでいないのか。真人も大概な気はするけどな。
「まあそうだねー、私驚くの苦手だし。感受性も豊かじゃないし」
「だろうね。じゃなきゃ呪術師なのに呪霊と仲良くしないでしょ」
「真人じゃなければ呪霊とも仲良くしないよ」
「何それ、愛の告白?」
「いや違うけど……真人くらい面白い呪霊見たことないから」
「ふーん、まあいいや。なら、今度漏瑚以外も俺の仲間を紹介するよ。みんな面白いんだ」
「それ私殺されない?」
「大丈夫大丈夫、俺がちゃんと説明しておくから」
本当だろうか。いまいち信用ならないけど、まあ、その時はその時。
「ま、今日はもういいよ。弁当の準備もあるだろうから」
「あ、それ本気なんだ、いいけど……。じゃあ、また明日」
「うん。はい」
「はい?」
真人は顔を近づけてくる。えっ、何?
「いってらっしゃいのチューは?」
「いや、何故」
「愛妻でしょ?」
「その設定必要……?」
とかツッコんでる間にキスをされていた。