メンテナンス /前編
今日は月に1度の"メンテ"の日。といっても実家の研究施設で健康診断を受けるだけ。
いつも通り健康状態に問題はなく、身長も伸びてなかった。別に気にしてない。
ただ一ついつもと違ったことは、私のここ最近の悩みを解決してくれたことだった。
呪霊のストック場所。味的に食べるのキツいな〜と思って結局ウエストポーチに入れて持ち歩いていたけど、なんだか邪魔だな〜と思っていた。そんな些細なことを解決してくれたのは嬉しい。嬉しいけど――脳みそイジることなくない?
話を聞いた父に連れられ手術室に入れられて、あれよあれよという間に麻酔をかけられた。その後のことは当然覚えていない。
基本的にこの家では"完成品"である子供が"製作者"である親に逆らうことはできない。別に虐待されて育ったりはしてないし気軽に話したりはできるけど、そういうものだという暗黙の了解みたいな感じがある。私が父に逆らえないように、父だって祖父には逆らえないのだ。
事が終わってから目を覚ますと、横にいたのは研究員の1人だった。彼女は嬉しそうな顔をしたかと思えばすぐに父を呼び出して、さっさと部屋を出て行ってしまった。
「よくやったぞ真実!」
「えっ、何が?」
「ああ、まだわからんか。術式だよ術式、使ってみなさい」
未だかつてないほど父のテンションが高くて不気味だ。
「術式って言われても、変形するものないじゃん。お父さんでやるの?」
「いやそっちじゃなくて!」
ズコーッと古典的にコケる仕草をした父。人体実験なんてやってるから気難しくてヤベェ奴だと思われがちだけど、昔から結構コミカルな性格だった。でも威厳を保ちたいため人前ではこういうのはやらないらしい。それを聞かされたときは正直どうでもいいと思った。
「もう1個あるだろ! わかんない!?」
「えぇー……お父さん私に何したの? 呪霊のストック場所の相談しただけじゃなかった?」
「ああ、だから体内にストックする器官を増設しようと思ったんだがね、途中で変えちゃったんだ。ちょっとヤベッと思ったけど、成功したから安心しなさい。でもこれは奇跡だよ、もう二度とできないだろうね……」
ちょっと残念そうにしてるのが若干腹立つ。普通に増設してほしかった。っていうか奇跡ってことはさっき殺されかけたのか……。
「まあいい、動けるようになったら中庭に行きなさい。6番目のお兄ちゃんを呼んでおくから、新しい術式を試すといい。――じゃ、私はまだ仕事があるから行くよ。また来月な」
行ってしまった。
「待ってよ〜……」
無駄に呟いてみたが無駄だった。
身体の調子は問題ない。とりあえず中庭に行ってみよう。
そういえば6番目のお兄ちゃんを呼ぶって言ってたな。私の5個上――というのは年齢ではなく順番の話で、年齢的には3個上。深山の術式は継いでいるが、体術と呪具が得意な人で、家では珍しく普通に呪術師として働いている。そして――
「遅いぞ真実、8分遅刻だ」
クソ真面目だ。