すぐバレた
「真実の奴、珍しく遅ぇな」
「そういえばそうだな。まあ悟も来てないけど」
「しゃけ」
全員任務がなく、五条による座学の授業がある日。
五条が時間通りに来ないのはいつものことだが、普段きちんと出席しているはずの真実の姿がなく、同級生3人は首を傾げる。
「寝坊か?」
「ツナマヨ」
風邪かも、という狗巻の呟きを聞き、真希は席を立った。
「しょうがねぇ、見てくるわ。悟来たら言っとけ」
*****
「真実ー、起きてるかー?」
寮の部屋のドアをノックし、声をかけてみたが返事はない。
試しにドアノブをひねってみるも、当然といえば当然だが鍵がかかっていた。
「部屋にはいんのか。鍵借りられっかな……」
「おっ、真希。これ使う?」
「あ? なんだ、悟か――って、何入ってきてんだよ」
「細かいことは気にしない! 真実が来てないって、さっきパンダから聞いたよ」
女子寮だからとわざわざ真希が様子を見に来たというのに、なぜか五条がいる。しかもその手に持っているのは見覚えのある形をした鍵。女子寮の部屋のものだ。
「通報すんぞ」
「待って待って、合鍵作るの真実にちゃんと許可貰ってるから」
「ハァ、アイツはまた……」
驚きはするものの、さすがに慣れている真希は溜息で済ませた。あの真実と五条がどうこうなるとは想像できなかったからだ。
五条の持っていた鍵でドアを開ける。
「真実、いんのか?」
「おはよー真実! 朝からこの
「うるせぇな!」
真希は五条を肘でどつきながら部屋に入った。無限で防がれて舌打ちするも、そんなことより真実の様子を確認する方が先だ。
「あ? 寝てんじゃねえか」
「えっ、珍しいな、真実が寝坊なんて」
入口側に背を向けてベッドに横になっている真実を見つけ、とりあえず何事もなかったことに2人は胸を撫で下ろす。
「おい、起きろよ。授業始まって――」
「どうしたの?」
「いや、汗がすげえ。風邪引いてんじゃねえか?」
「マジ? また?」
真希の後ろかで眺めていた五条も、その言葉を聞いてベッドに近づく。
少し体を動かして仰向けにすると、確かに顔がやや赤くなっている。
「ん、んん……?」
横で話す声に気づいたのか、真実は薄く両目を開ける。
「大丈夫かよ?」
「んぁ、真希。おはよ……」
「んな場合じゃねえよ。風邪引いてんぞ、とりあえず熱測れ」
「はい体温計」
「何で悟が場所知ってんだよ」
ドン引きした顔で五条を見る真希。五条はとぼけてごまかした。
横になったままおとなしく熱を測る真実はぼけっと空中を見つめていた。
「こりゃ結構あるかもな」
そう真希がぼやいているうちに、体温計が鳴る。画面を見てみれば38.0℃と出ていた。
「風邪引いたの……? んー……よくわかんない」
「頭働いてねえな。とりあえず服着替えて寝ろ、メシと薬はこっちで用意してやる」
「うん……?」
「タオルとか勝手に探すぞ。んで、真実着替えさせるから悟は外出てろよ。……悟?」
先ほどから黙ったままの五条に真希は声をかけるが、五条はいつの間にか目隠しを外しており、裸眼で真実を見ていた。
「真実、どういうことか説明してくれる?」
「はぁ? おい、何言ってんだよ」
「実家で何された? 昨日行ったんだよね?」
珍しく焦った様子の五条に、真希は静止するのをためらった。
「実家、あー、えと……術式、が……うぅ、あ、頭痛い……」
五条の問いに真実は答えようとしたが、突然頭を押さえて体を丸めた。それを見た真希は今度こそ五条を止める。
「おい、後にしろよ」
「っ、ああ、ごめん。――僕は硝子を呼んでくる。あとは真希、任せたよ」
「早く行け」
「いたっ」
背を向けた瞬間尻を蹴られたが、そのまま五条は部屋を出て行った。
それにしてもなぜ五条は慌てていたのか、真希は少し考えたが答えが出るわけもなく。
家入が連れてこられるまで、真実の世話を焼いていた。
*****
しばらくすれば頭痛も治まったのか、真実は先ほどよりも落ち着いた様子で目を覚ましていた。
「大丈夫か?」
「うん。頭はぼーっとするけど、それだけかな。ありがと真希」
「別に。ほら食え。食って寝ろ」
真希は部屋にあったレトルトのおかゆを温めて、救急箱にあった薬と並べて出した。
真実が大人しくおかゆを食べていると、外からドアがノックされたが返事をする前に五条が入ってきた。
「硝子連れてきたよ」
「風邪引いたんだって? 診察はできるが反転術式は病気には効かないぞ」
「うん。とりあえず診てやって」
五条と家入は勝手に話を進める。
「……これ、風邪じゃないな」
相変わらずぼけっとしたままの真実を診察し終えた家入はそう断言した。
「術式による負荷だろうね。まあ、これなら反転術式でどうにかできるけど」
「あ、やっぱ? あーあ、こりゃ昇格確定だな」
「どういうことだよ?」
「まだ真実本人も把握しきれてないだろうから、詳細がわかったら、後で皆にまとめて話すよ」
話についてけない真希は五条に聞くも、そう言われては言い返せなかった。
「今日は2年は自習ね」
「いつも自習みたいなもんだろ。……わーったよ」
真希を教室に返すと、五条は困り顔の真実に向き直る。
「じゃ、学長室に行こうか」