七海と審査
「七海さん的に、私は強いと思いますか?」
1級に推薦されてからはや数日、そして準1級に昇格してからもまだ数日である。
今日の任務の出来次第で1級昇格が決まるらしい。とはいえ悟先生は"もう確定みたいなもんだから適当にやってきな"とか言っていた。
正直実感が湧かない。1級ってそれ以下とは強さが段違いだし、七海さんに自分が並べているとは思えなかった。いくら実家のおかげで術式が2つあるからって、使いこなせなきゃ意味ないと思うし。まあ、そこそこ使えてる自覚があるとはいえ。
それに上層部には深山家のおじいちゃんがいる。悟先生は上層部嫌いらしいけどおじいちゃんとは悪くない仲って言ってたから、ぶっちゃけコネだろう。深山家では"完成度"が高いほど優遇されるっていうのもあるし、現状では私が一番だと聞いている。私はそのおじいちゃんに会ったことはないけど。
そんなこんなでピンときていないので、その辺ごまかさない七海さんにストレートに聞いちゃうのが一番早いと思った。
七海さんは片手でサングラスを押さえて考えるそぶりを見せる。
「知ってはいましたが、その様子だと自覚はないようですね」
「へ? 何の自覚ですか?」
「あなたは五条さんと同じタイプ、率直に言って天才です」
「……なんか、悟先生と同じって言われると、うーん……」
「その気持ちはわかりますが、私が今言っているのは性格のことではない」
「はあ、でも、そうですかね……?」
「そもそも、あなたが今戦っているのは1級です。雑談しながらソレを相手にできるなら、実力としては十分でしょう」
「ざ、雑談って、真面目に聞いてたのに!」
七海さんの言う通り、話し始めたのは戦闘の真っ最中。
なんか受け流されてる気がするから、八つ当たり的なアレで目の前の呪霊を有為転変で破裂させた。
「……あっ、今の取り込めばよかった」
「呪霊なんて、どうせまたいくらでも湧きますよ」
それはそうだけど、1級を降伏させるのはなかなか難しい――というか、降伏目的だと有為転変は相性が悪い。魂の形をいじっちゃうとそのうち死んじゃうから、降伏させるには普通に倒さないといけなくなる。そう考えると夏油傑が高専時代から特級だったっていうのも頷ける話だ。夏油さんすご。
「終わったなら次に行きましょう。この調子でいけば、報告書を仕上げても定時に帰れそうです」
*****
伊地知さんの送迎で次の任務場所に着くまで、真人のことを七海さんに聞いてみた。直接会ったことがあるのは七海さんと虎杖くんだけだし、虎杖くんはあまり話したくなさそうだったから、ここはやっぱり七海さん。
「そういえば、七海さんと虎杖くんが行った任務の報告で見たんですけど、"ツギハギ顔の人型呪霊"って、私と同じ術式なんですよね?」
「……ええ。それがどうかしましたか?」
「どんな呪霊だったんですか? 人型って珍しいし、同じ術式なのも気になって」
「くれぐれも探しに行ったりはしないように」
「いや、探しには行きませんけど……ツギハギ以外に特徴とかありましたか?」
「そうですね……見た目は長髪の男性でした。それから軽薄な言動が多い。私たちが会敵した当時は、発生して間もない様子でしたよ」
「へえ……じゃあ、もう結構成長してそうですね」
「おそらく。あれは無邪気に人を襲う。早急に祓う必要があります」
でも足取りは掴めていない、そして戦えそうな術師がいない、という感じだろうか。
もちろん悟先生なら相手できるだろうけど、真人たちも先生のことは知っていたし、ある程度計画性のある行動をしているからホイホイ出ていくことはないだろう。
「……深山さん、今、何考えてます?」
「え? あー、倒すならどうやるかなって。私の有為転変は効果ないだろうし。逆にその人型呪霊の術式も、私には効かないと思いますけど」
「何故?」
「えと……あんまり伝わらないかもしれないですけど、私は魂を呪力で守れるので。あれって残穢と同じだったんです、今まではぼんやりとしか見えてなかったんですけど、魂を見ようとしてなかったから見えなかった。術式を理解していくうちにわかるようになってました」
「……そうですか」
「まあでも、術式が効かないとなると余計に戦いたくはないですね。呪霊操術もまだ初心者だし、近接は向いてないし」
「近接戦闘はともかく、呪霊操術はもう十分使えていると思いますよ。正直、次の任務に行くまでもない」
「そうですかね〜……」
七海さんがそんな評価をしてくれるのは意外だった。そして真人の話からうまく逸れた。自分で聞いといてなんだけど。
しばらくして次の現場に着き、無事に呪霊を祓い終わった。上の等級の審査はもっと厳しいものだと思ってたけど、今までとあんまり変わらなかったかも。同行してくれたのが知り合いの七海さんだからだろうか。
それから高専に戻り報告書を仕上げると、七海さんはそろそろ定時だと言って帰って行った。審査の結果は明日には出るらしい。
「1級ってやっぱ忙しいのかな〜……」
自室に戻って休んでいると、急に疲れを感じた。その日は着替えも夕飯も忘れて寝てしまったのだった。