新章・始
※この話以降、本誌の進行により大幅修正する可能性があります。
夏油――もとい加茂憲倫? の呪霊の術式で操られてとはいえ、私の術式で大勢の人間の呪いが発動してしまった。
あの場にいた高専生は後から駆け付けた九十九さんが送り届けると言って、私も声をかけてもらったものの、まだ虎杖くんに確認したいことがあるからそれは辞退した。
そういえば脹相さんが虎杖くんを弟だと言っていたのは驚いたけど、本当なんだろうか。なんて、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
今はその脹相さんが虎杖くんと外で話している。2人の話が終わるまで少し離れたところで休んで待っているところだった。
私の呪霊操術で取り込んだ呪霊は1度出さないと意思疎通は図れないから、今真人がどうなっているのかもわからない。術式の抽出もしてないし。でももうほとんど呪力切れで、術式を使う体力もなかった。
「……行こう。今はとにかく、呪霊を減らさないと」
虎杖くんの声が聞こえた。どうやら脹相さんとの話は終わったようだ。早く行かないと。
「虎杖くん!」
「! 真実先輩……高専に戻ったんじゃ」
「あー、断ったの、虎杖くんに聞きたいことあってさ」
「お前も共に来るか?」
私が話し出す前に脹相さんから思わぬ提案をされる。
「お前は夏油の仲間ではなかっただろう」
「それはそうですけど、でも、真人とは……」
真人の名前を出すと虎杖くんの表情が強張る。
「あのさ、虎杖くんは、私のこと殺そうと思う?」
「……は? どういう意味?」
「夏油のせいとはいえさ……術式で呪いを発動させたりしちゃったし、それに何より私は真人の味方だから」
「俺は、先輩は殺さない」
虎杖くんはすぐにそう答えた。先輩"は"ってことはやっぱり真人が出てきたら祓う気だろう。当然だけど。
「俺はここでたくさん人を殺した。けどそれを全部"宿儺のせい"だって言えねえ。やったのは俺だ。だからもう高専には戻れない。――真実先輩はどう思ってる?」
「どうって、術式のこと? "夏油にやられたから私のせいじゃない"と思ってるかって」
虎杖くんは頷いた。
「夏油の呪霊の術式で操られてるとき、思考は働いてなくて、術式が解かれてから状況を理解した。だからさ、正直仕方ないかなって思ってるよ。"あの時こうしてれば"が何も浮かばない。私が真人を取り込まなくても夏油が同じことしてた。それに私は真人を夏油に取られたくなかった、それだけだよ」
「……そっか」
「うん」
「俺より全然頭良い真実先輩が考えて何も浮かばないなら、しょうがねえ、よな」
「それで、お前は来るのか? 戦力は多いに越したことはないが」
「脹相さんのその感じ、相変わらずですね」
この状況で平然と会話に入ってくるのすごいな。虎杖くんもちょっと拍子抜けみたいなリアクションだし。
「ていうか先輩、脹相と知り合いだったん?」
「まあ、うん。時々呪霊のアジトみたいなとこ行ってたから」
「マジか……」
「虎杖くんさえ良ければだけど、一緒に行っていいかな」
「先輩は高専に戻らないの?」
「戻ってもどうせ捕まるだけだよ。呪霊とつるんでたのももうバレてるだろうし」
「まあ、それもそうか……」
「悠仁、そろそろ行こう。いつまでもここに留まるのは――」
「あーわかったって! じゃあ、真実先輩も行こうぜ」
「うん、ありがと」
こりゃしばらく真人は出せないなとは思いつつ、虎杖くん、脹相さんと共に呪霊狩りに向かった。